北海道・利尻山
 (りしりさん1721m)
 雨で中止のつもりだったのに、宿のオバサンにお尻叩かれて登頂(^-^;

2003年8月北海道の山旅
(8日:利尻山、9日:礼文岳、11日:斜里岳、12-13日:羅臼岳、14日:雌阿寒岳ー阿寒冨士
 15日:摩周岳、16日:雄阿寒岳、17日:白雲山ー天望山、18日:八剣山
 H15年8月8日(金)
  天気;雨のち曇り
  Member.2人(夫婦)

  【利尻山:前日の鴛泊港より】右
 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

利尻北麓野営場登山口5:10〜甘露泉5:22〜ポン山分岐5:24〜五合目6:41〜第一見晴台6合目7:06〜七合目(七曲り)7:33〜第二見晴台?〜八合目8:34〜避難小屋8:48-9:05〜九合目9:35〜沓形分岐10:08〜山頂(北峰)10:33-35〜下山(再度山頂へ)〜山頂(北峰)10:55-11:05〜避難小屋11:55-12:35〜八合目12:50〜七合目(七曲り)13:21〜見晴台6合目13:39〜五合目13:56-14:04〜ポン山分岐14:57〜利尻北麓野営場登山口15:08-20〜宿(ホテルニュー利尻)16:09
(所要時間鴛泊コース登山口から登山口まで約10時間・・休憩含む)


【前日=出発日】

左【羽田で】

 出発は7日。早朝娘に川崎まで送ってもらい、バスで羽田へ。搭乗手続きを済ませ、荷物を預けてから朝食をとった。そして飛行機の搭乗。人生半世紀を過ぎて、初めて飛行機に乗る夫はまるで小さな子供のように喜々としている。

 10分ほど遅れて稚内空港に着き、トイレへ行っている間にフェリーターミナル行きのバスが発車してしまった。次の飛行機着陸時間まで待たねばならない。その間にガスの入手先などいろいろ係の人に聞いたりしていた。すると空港で没収したガスを持ってきてくれて、それを戴けた。労せず手に入ってラッキー!フェリーに乗る前にすることは昼食を摂るだけになった。時間はたっぷりあったが余裕が出来れば気が楽だ。

 空港発のバスに乗ってフェリーターミナルへ。利尻島へ持っていかない荷物はロッカーに預け、持っていくものもひとまず構内に預けてから食事に行った。海の幸を食してから散策。利尻、礼文から戻ってきたときのテン場を防波堤ドームに決めた。

 フェリーで利尻へ向かう。利尻山の姿が雄々しい。鴛泊港でその姿をカメラに写す。天気は下り坂、明日はこの姿が見られないだろう。途中の店で翌日の食料を買ってから宿へと向かった。着いた途端に雨になった。予報では翌日も雨。登るかどうかは朝判断することにして、宿は連泊する事にした。

【当日】
 夜中も激しい雨だった。4時起床。天気予報は好転していない。外の様子を見に行き、山行を一時は断念する。5時には宿の人に三合目まで送ってもらうことになっていたため、既に起きている宿のオバサンに、その旨伝えにいった。しかし「雨でも登る人は登りますよ。何でこんな日に?と思っても、せっかく来てそのまま帰るのではもったいないでしょう。すぐ来られるところではないから、せっかくここまで来て登らないんではねぇ」と言われ、「え?こんな日でも皆さん登られるんですか?」と驚いてしまった。海の中の孤島いっぱいに存在感を示している独立峰だから、さぞかし風当たりは強いだろう。無理はしない方が良いと思っていたのだが・・。結局私達も、行ける所まで行ってみようかということになった。

 予定通り5時に三合目まで送ってもらった。この時点で雨は小止み。予定ではこの北麓野営場でテントを張ってから登り、下山後ここで泊まることにしていた。しかし激しい雨のため、前日のうちに宿に連泊する事に変更し、テント山行は初日から挫折。

 歩き出しは石畳のように整備され、名水甘露泉まできれいだった。そこで喉を潤し、先に進む。その先にポン山分岐がある。登山道は歩きやすく、4合目、5合目・・・と目安があった。

左【五合目のトイレブース】

 5合目に初めてトイレブースがあった。宿で一人一つずつ使い捨てトイレを貰っていた。それを使えるトイレがちゃんと用意されていたのだ。実は私達も買って持ってきていた。夫がスポーツ用品店IBSで北海道の場合あった方が良いと薦められ、購入してきていたのだ。それを広げて眺めてはいたが、実際に使うにはかなり勇気がいるなぁと思っていた。今回の山行でこのようにプライベートスペースが用意されていたのはこの利尻岳だけだった。ブースは数カ所に用意されている。下山後避難小屋の側で使用したが、なかなか快適だ。持ち帰りのシステムで、他の人の汚物が残っていないから匂いも残っていない。芳香剤が置いてあって、きれいに使われている。洋式スタイルでイス状の所に広げるから清潔。ただ、一人で用意して使用後それをまとめるという処理作業があるから、時間がかかる。今回登山者は少なかったから問題なかったが、シーズン中は混雑するのではないだろうか。でもいい方法だと思った。10年近く前にはキジ場がそこら中に広がっていたと聞いていたが、今回不愉快に思ったところは無かった。使用済みのものは下山後、三合目に捨てる場所があるのでそこまでは持ち歩くことになる。

左【ダケカンバのトンネル】

 登山道は緩やかで歩きやすかった。しかしまた雨となり、次第に道というよりは沢のような状態になった。風もややある。歩くには涼しくて丁度良かった。両側のトンネルのような木立が防風林の役目をしていた。

 七合目辺りからハイマツ帯となった。風があってもまだ大丈夫そうだ。八合目に碑があり、展望台もあるが、残念ながらガスって見えなかった。休むと寒くなるからゆっくり歩き続ける。

 避難小屋に着いて中に入ると先行の女性一人がいた。連れの一人は山頂を目指したという。この先はガレ場がある。彼女は経験が浅く力量不足なので小屋に残ることにしたと言っていた。

 一休みしてから私達も出発。ガレ場になるのでストックを出す。間もなく夫の様子がおかしくなった。足が攣ったという。先に行くよう言われ、私が先行。場合によっては小屋に戻るから待たずに行って良いと言われ、そのまま進んでいった。途中振り返るともう夫の姿は見えなくなっていた。だんだんとお花が現れてきたので写真を撮りながら登っていった。

 9合目、ここも好展望場らしい。やや広くなってトイレもあり。そしてそこには「ここからが正念場」と書かれてあった。やっぱりネ・・・。急登となるがお花が慰めだ。次第にガレ場となって歩きにくくなってきた。ガレ場途中に沓形分岐があった。ガスでその先がどうなっているのか分からなかった。この状況で沓形方面へ進むのは不安な感じがした。上を見上げると先行の女性が下りてきた。早い。

 利尻山頂を指し示すピークに立って、山頂はすぐそこにあるらしいと分かったが、少し痩せた尾根があり、緊張。強風の様子を見計らって耐風姿勢をとり、急いで渡った。そこだけは少し怖かった。

左【山頂のお花畑】

 そして間もなく山頂。お花がとてもきれい!晴れていたらもっと見栄えがしたかもしれない。もちろん南峰には行かない。すぐ目の前にあるのだろうに、全く見えなかった。

 夫は来ないだろうと思ったので、写真だけ撮ってすぐ下山した。5分か10分下がったところで思いがけなく夫の登ってくる姿が見えた。小屋で待っているとばかり思っていたので急いで下りたものだからびっくり。急いで下りてきたのにまさか登らないよねと思いつつ、「山頂すぐそこだから行く?」と聞いてみた。頷いてそのまま登っていくのを見て(エッ!本当に登るの?・・・)と正直がっかり。また登らねばならない・・・。でもせっかくここまで来て登れなかったら残念、良かったねお父さん。夫は夫で「登らないで小屋へ行こうと思ったんだけど、もしおまえが下に落っこちてなかなか下りて来ないからって、また登ってくるのは面倒だからサ」とのたまう。そして「山頂の写真を撮ってやろうと思ってサ」と付け加える。「グスン!」そしてあ〜ぁ、また登るのかと思いつつ登っていく。だけど大きな夫の背中を見ながら登っていると、これでもホッとする安心感がある。

左【山頂で】

 再び山頂に立ち、互いにハイポーズ。辺りのお花を見ながら「登れてよかったねぇ〜」。展望はなく、寒いからすぐに下りようとしたら、一組のご夫婦が登ってきた。こんな日に登ってお互い物好きですねと笑いつつお互いに写真を撮りあい、少し話してから先に下山した。

 避難小屋で一休みし、残ったおにぎりを食べていると、さっきのご夫婦もやってきた。一緒に食べながらおしゃべり。趣味が似ていて面白かった。ここでも一足先に下山。

左【下り】

 下山する頃には雨というよりガスに包まれてしっとりしている感じだった。夫の足も調子よくなったようで一安心。登りは川のようだった登山道も、いくらか落ち着いていた。登れて良かったねと二人で話ながら歩いていった。展望もなく、立ち止まれば寒いし、共感するのはこの「登れて良かった」だけであった。

 この日は登山道ですれ違いに時間を費やすこともなく、登った人は6人という静かな山行だった。展望は駄目だったけど、雨は雨で良さがあるものだ!

 五合目で一休みし、そこから下りたところで何と三人組が登ってきた。これからですか?と聞くと、この日沓形から登ったけれど、この雨で登山道の状態がひどく、登れる状態ではなかったという。それでやむなく撤退し、せめて利尻の匂いだけでも感じたいから、少しだけでも歩きたいと、鴛泊から登り直したという。時既に2時をまわっていた。何とも感服!私達だったらそんな気力は無いだろう。

 三合目には三時過ぎに到着。所要時間10時間だった。お天気なら展望やらお花やら眺めてのんびりしただろうし、上り下りのすれ違いで時間がかかるから、こんなに早くは下りて来られなかっただろう。宿の人に言われていたので電話で下山報告をした。昨夜なかなか帰ってこない一家がいて、とても心配していたのだった。その一家が宿に着いたのは雨が降っていた8時前後ではなかったろうか。

 当初の予定通りキャンプ場泊ならそこまでだが、そこから更に歩いて宿まで戻る。濡れているからタクシーも呼ぶ気にはならなかった。朝は車で十数分だったが、歩くとなると長かった。海に向かって約50分。利尻山の標高は北峰で1719m。まさに標高差1719m近くを歩いたのだった。宿に戻ればお風呂に入れる、全身びっしょりだったが、そう思えば歩く張り合いがあった。

 今回山頂から海に囲まれた360度の展望を見られなかったのはとても残念だった。でも断念した人がいると思えば、ラッキーだったのかもしれない。また翌日は、本人が利尻に着いたけれど、台風で荷物が届かなかった人がいて、ナップザックに食料と飲み物を入れただけで登るという人もいた(荷物は早めに送りましょう)。いろいろなことがあり、いろいろな人がいた。これもまた印象に残る山行となった。