北ア・剱岳〜笠ヶ岳(No.3/3)
 北アルプス縦走:剱岳〜笠ヶ岳
 夏山の展望とお花見を楽しみに11日間の全テント泊! 
 早月尾根から剱岳へ、百名山7座を通り笠ヶ岳から槍見(中尾口)へ。

 【コ ー ス 】

  簡単なコースはNo.1に記入、コースと
  コースタイムは各日に記入

 H14年8月8-18日(木日)
  天気;各日に記入
  Member.2人(夫婦)

  【三俣山荘と鷲羽岳:9日目早朝】右


百名山二座、最悪の天候

8日目(8/15木)雨
雲ノ平キャンプ場5:30〜祖父岳6:35〜岩苔乗越7:18〜水晶小屋8:10-30〜水晶岳9:00-05〜水晶小屋9:30-40〜鷲羽岳11:25-40〜三俣蓮華岳キャンプ場12:25(テント泊)
(所要時間約6時間55分・・休憩含む)

 夜中に時々雨音。明け方は時々雨。予報では朝晩雨で、日中曇りだったため予定を遅らせて出発。しかし、結局一日雨、風、ガスで、大変な一日だった。剱岳、立山など展望は望めなかったが、今回の山行中、この日が一番最悪だった。それでも予報を信じて?薬師岳再びではないけれど、山頂の晴と展望を期待して行ったのだが、ダメだった。

 祖父岳までの登りが長く感じられた。学生パーティが登っていき、私たちが後へ続き、その後を一人の若い女性が登ってきた。祖父岳山頂で一同に会し、同類のよしみか互いに笑顔が出る。山頂は広いらしくケルンが沢山積まれていた。学生達は先に進み、私たちは単独の女性と水晶まで一緒に進むことにした。彼女は一人で赤牛岳から読売新道を経て黒部湖の方へ向かうという。ここは天気でもかなり厳しい登山道だと聞いていた。長丁場、一人で大丈夫かと気になるが、健気にも明るい笑顔を見せていた。テント装備なのでザックもかなり重そうだ。停滞しようか迷った末行動したので出発が遅れたと言っていた。もっと早めに出る予定だったそうだ。

  左【可憐なウサギギク】

 山頂を少し下り、風が弱まったところがあったので、そこで少し立ち休み。この後はゆっくり休めるような場所がなかったのでここで少しでも休憩できてよかった。歩いていても視界がきかず、足下の花たちが私たちを慰めてくれているようだった。黄色いウサギギクのなんと可愛かったこと。強くて可愛い、一緒に歩いている女の子のようだ。

 悪天候にも関わらず、剱岳のような緊張するコースでもなかったせいか、岩苔乗越辺りから登山者が増えてきた。寒くて体力消耗しているのが分かる。

 やっと辿り着いた水晶小屋は避難小屋のような狭さだった。靴は脱いで入るようになっており、濡れたまま入らないでと受付の若い女の子が全く愛想がない。それでも中も外も混み合っていた。ツアーらしき年輩者の団体がおり、若い男性ガイドがザックを預ける手はずをしたり、登るや否やの確認やら、下山後の休憩の手順を説明したりしているのが聞こえてくる。この悪天候でも誰一人登らないと言う人はいなかった。私たちは気分も萎えて、小屋についたら検討しようと思っていたがここでそんな相談をする余地すらない。トイレで合羽の下に一枚長袖を着て、ザックを小屋の脇に置き、ナップザックにレーションと温かい飲み物だけ持って、山頂をピストンする事にした。一緒にここまで来た単独の女性は一息ついてから登るというので先に行くことにした。

  左【水晶岳で】

 空身でのピストンは楽だった。山頂は狭い。展望も望めず、記念写真を撮っただけだがおかげで早い時間に小屋に戻ることが出来た。下る途中、一緒だった女性が重装備のまま登ってきた。これから無事黒部に辿り着けるのか心配だったが、「行けるかなぁ〜」とつぶやきつつ楽しんでいるように見える彼女の表情は明るかった。そこで別れ、私たちは小屋へと戻った。

 小屋の外で相変わらず濡れたままテルモスを出し、温かいコーンスープと、温かい蜂蜜入りレモンジュースを飲み、クラッカーなど少し食べてから鷲羽岳へと向かった。天気が良ければと思っても自然相手にどうすることもできない、こうして歩けるだけましというものか。ワリモ岳など通過しながらアップダウンを繰り返す。相変わらず思ったより登山者多し。冷たい風が吹く中、イワギキョウやイワツメクサは愛らしく静かに揺れていた。

 鷲羽岳山頂ももちろん展望無し。風を避けて東側斜面で少し休憩。ここでも温かいココアを飲む。体が温まってホッとする。

 山頂から三俣山荘への下りはジグザクにただひたすら下りるだけだった。さぁ〜っとガスが晴れ、眼下に小屋が見えてきた。後もう少し。

 天気が良く順調であれば、あと2時間頑張って黒部五郎キャンプ場へ行ってしまおうかと思っていた。しかし小屋へ着くとそんな気はさらさら無く、前を行く夫の足は迷うことなくそのまま三俣山荘二階の食堂へと向かっていった。雲ノ平山荘と同じ系列らしいから今度こそカツ丼か!?

 ビンゴ!これが山小屋か?というほどの豊富なメニュー(^-^)v。迷わず念願?のカツ丼を注文。ひもじい行動食をこんな風に補えるなんて、さすが北アルプス。軟弱な我らには有り難い。いつもなら食べきれず少し夫に分けてあげる私だが、十分な量にも関わらず今回はあげなかった。ようやく満足の私たちだったが、サイフォンのコーヒーもいいなぁ・・・ケーキセットにするとチョット安くなるぞ!エェーイ注文しちゃえ〜、ということでそれぞれケーキセットも注文。ケーキも種類が多く、大きくて美味しかった。近くの人はビーフシチューなど頼んでいた。なんとリッチ。のぞき見ると下界でも叶わないくらいの盛りつけ。美味しいと舌鼓を打っていたっけ。ちなみにお値段はカツ丼1000円、カレー1000円、焼きそば700円、ケーキセット900円(ケーキだけ500円、コーヒーだけ600円)、ビーフシチュー2000円。他にも麺類などいろいろあった。確か生ビールもあった。

こうしてすっかり三俣山荘の虜になってしまった我らは黒部五郎キャンプ場への選択はあえなく却下。この天気で停滞するならここだ!と腰を落ち着けてしまった。あとは小屋泊にするかテント泊にするか、だったが、偶然同じルートを前後しながら歩いていた若いカップルが今回は小屋泊にしており、聞くところによるとかなりの混みようだという。受付で聞くとこれからまだ来るので分からないが布団1枚に3人まではならないと思いますが・・・と曖昧な返事だったので、もう迷わずテン場の方へ行くことにした。一人500円。ここには衛星電話が設置されているので、夫がテン場を確保している間に私は子供達に無事の連絡を入れた。トイレは小屋内を使う。乾燥室などあってとっても居心地良さそうだ。でもやっぱりかなりの混雑だった。

テン場に行くと広くてどこにいるか見つけられず右往左往してしまった。ようやく見つけるとテントはもう設営されていた。一人でちょっと大変だったようだ。テント内でガスをつけ暖房代わり。着ているものも何とか乾いてきた。夫の靴は中まで濡れていたようだが野菜を包んできた新聞紙を入れて置いた。いくらか違ったようだ。

 天気予報では翌日の天気は思わしくない。ここで停滞だ、ゆっくり寝ようと食事を済ませた後疲れた体を休めた。

 食事:朝 野菜入りラーメン(キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン、ソーセージ)
    昼 カツ丼(三俣山荘で注文)、他随時行動食
    夜 海藻サラダ、ソーセージ、山菜おこわ


快晴の中、黒部五郎岳を空荷でピストン!

9日目(8/16金)晴一時雨
三俣蓮華岳キャンプ場7:05〜黒部乗越8:15〜黒部五郎キャンプ場(テント設営)9:15-55〜黒部五郎岳11:55-12:15〜黒部五郎キャンプ場13:45(テント泊)
(所要時間約6時間00分・・休憩含む、テント設営時間除く)

  左【槍ヶ岳:三俣キャンプ場より】

 昨夜の天気予報では昼頃まで雨で、時々雷雨ということだった。その上台風が来ているという情報だったが小屋のテレビで見るとまだ大丈夫そうだ。停滞かあるいは雨が止んだ午後、黒部五郎キャンプ場へ移動しようと決め、朝はゆっくりしようと決めていた。ところが4時頃、足音に気付いて起きると雨音がしない。星こそ出ていないが雨は止んでいる。嬉しいことに槍ヶ岳が正面に見える。昨日登った鷲羽岳もすっきりと見えていた。

5時頃まで様子をみるが、明るくなるので起床。支度を始める。7時出発。黒部五郎岳捲き道コースを行った。一部雪渓を横切るが、比較的緩やかなコースだった。しかし三俣蓮華岳への分岐を過ぎ、小屋へ下るコースになると、かなりの急坂。又ここを登るのかと思うとうんざりするほどだ。正面に黒部五郎岳を眺めながら歩けるのは嬉しかった。今まで歩いた山々も見渡せる。思わず顔がほころぶ。

黒部五郎小舎は立派な建物だった。テン場を申し込み(一人500円)、ここで目についたリンゴ1個(300円)を購入。

  左【ムシトリスミレ】

テント設営後、黒部五郎岳ピストンの予定だが、腰が張るという夫は休養していると言う。仕方なく一人で行った。登りはコースタイムの短いカールコースと呼ばれている北側のコースから。こちらの方が30分ほど山頂に早く着く。合羽、レーション、飲み物、他必需品だけ持っていったので身が軽い。その時間(午前10時過ぎ)に登る人も下る人も少なかった。このまま歩いていて山頂にはいつ着くのだろうと思うくらい緩やかなコースを行き、やがて広々としたカールに出る。ここは残雪期には避けたいコース。沢などもあり、途中ムシトリスミレが咲いていた。そして黒部五郎岳山頂を眺めながら直下を横切り山頂に連なる尾根へと登っていく。山頂には常に数人の登山者が見えた。今なら展望は良さそうだ。頑張って尾根に辿り着いた頃北ノ俣岳からのコースを歩いて来る人の姿が見えた。黒部五郎岳の肩では食事をとっている人が多かった。山にはいくつもの残雪の縦筋が見えるが登山道に雪は残っていなかった。しかし、どこからとってきたのか飲み水に雪を詰めている人がいた。その辺りに来て、山頂にガスがかかってきた。しばらく待ってみたが、山頂からの展望はきかず残念。

  左【黒部五郎岳山頂で】

 下山はリョウセン(稜線)コース。岩場あり、お花畑ありでなかなか良い。こちらを通る人は少なく、私を含め4人くらいだったが、眼下にカールコースを歩く人の姿が多く見られた。テン場に直接下山。途中、夫の姿が目に入り、手を振ってくれていた。テン場では天気が良かったためいろいろと干してくれていた。一息つくと雨。そして降ったりやんだり。

 食事:朝 野菜入りラーメン(キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン、ソーセージ)
    昼 夫;カレー(黒部五郎小舎で注文800円)、妻;随時行動食+リンゴ
    夜 蕎麦、野菜炒め(キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン)、サラミ


三俣蓮華岳で出発点の剱から終結の笠ヶ岳まで一望!

10日目(8/17土)晴のち曇りのち雨
黒部五郎キャンプ場4:25〜黒部乗越5:57〜三俣蓮華岳6:35-7:00〜分岐7:37〜双六岳8:00-10〜分岐8:40〜双六小屋8:55-9:35〜弓折岳11:10〜秩父平13:00-17〜笠新道分岐14:30-40〜笠ヶ岳キャンプ場15:40(テント泊)
(所要時間約10時間15分・・休憩含む)

 この日の予定は双六までだった。コースタイムは約4時間半。出発はゆっくりでも良かった。しかし、天気と体調次第では二日分の行程をこなそうと、早朝出発することにした。

  左【早朝の黒部五郎岳】

ヘッデンをつけて暗い道を行くが、前日一度通った道なので様子は分かっている。空には星。案の定天気は良かった。振り返ると昨日歩いた黒部五郎岳がきれいに見えた。そして、歩き始めの剱岳から最終目的の笠ヶ岳、そして中間に歩いた山が一望でき、最高だった。今回の山行の集大成のような眺めであった。

  左【笠ヶ岳(中央):三俣蓮華岳山頂より】

三俣蓮華岳まではゆっくり歩き、山頂で余すところ無くその展望を楽しむ。常念山脈と、槍・穂高の山並みもくっきりと見えていた。いままでの苦労?などすっかり吹き飛んだ。これがあるから山歩きがやめられない。充分堪能。そのうち三俣からも黒部からもぞくぞくと山頂を目指す人の姿が見えたので、私たちは先を急ぐことにした。

ここから双六岳へ寄り、同じく展望を楽しむ。少しずつガスが出てきた。広い山頂は双六南峰にもルートがのびており、間違いやすいので要注意。

  左【県警ヘリ、若鮎:双六小屋で】

そして一路双六小屋へ。予定より早く着き、これならばと笠ヶ岳まで行くことに決定。双六小屋は立派で、双六喫茶なるものまである。ここで時間的には早かったが食事を済ませてしまうことにした(おでん600円、夫;ラーメン700円、妻;カレー700円)。この時偶然岐阜県のヘリコプターが着陸。ものすごい風だった。県警の捜索隊の人が2,3人降りていた。こんなに間近に見るのは初めてかもしれない。

双六小屋で充分休み、笠ヶ岳へ。この時かなりの人が槍へと西鎌尾根へ進んでいた。槍は行ったことがあるが西鎌尾根がまだ歩いたことがない。時間的には笠ヶ岳より少し余分にかかるようだ。肩の小屋のテン場は狭いそうだから、殺生まで下るとなるともうチョットかかることになる。殺生小屋から眺めた槍が随分大きく見えたのを思い出す。

  左【吉田さんと遭遇】

双六小屋から歩き始めて、ここから直接下山するのも結構大変なのを知る。鏡平の分岐までもアップダウンがある。1時間くらい歩くと広々とした場所に出たので休むことにした。歩く場所は幾筋か出来ていた。適当に座って西鎌尾根から槍ヶ岳、穂高の稜線に見入っていた。圧巻である。すると目の前を歩いていく一人の男性。思わず「吉田さん?」と声をかけた。やはり吉田さんだった。そういえば双六小屋で似たような人がいるなと思ったけれど、「エッ!?つい先日も黒部湖から剱、立山と歩いたばかりだったのでは?」と、続けて似たような山域を歩くことに「まさかね・・・」という思いがあったのだった。聞けば前夜のテン場も黒部五郎キャンプ場で、一緒だった。しかも割合近い場所だったようだ。この時は全く気付かなかった。そしてこの先も笠ヶ岳でコースは全く同じ、奇遇にびっくりしてしまった。少し話し、私たちはゆっくり行くので、と先に行ってもらった。

鏡平小屋が見えると間もなく分岐になり、数名が休んでいた。私たちはそのまま弓折岳へ。この時鏡平に下りる人が私たちの後をついてきてしまい、弓折岳まで登ってしまった。おかげで途中枯れかかった黒百合と出会うことが出来たが。弓折岳で吉田さんが休んでいた。ここも私たちは通過し、挨拶してそのまま先に行った。

それにしても暑い。気温が上がって随分暑くなった。風が時々吹いてくるのが嬉しかった。だんだんと昨日ゆっくり休んだ夫と、歩いた私の差が現れ、私はバテ気味になってきた。途中の平らな岩で休んでいると、吉田さんが今度は通過していった。やがて幸いなことにガスってきた。ガスっていれば展望を望むが、この時ばかりは涼しい方が有り難かった。

秩父平で沢音が聞こえ、夫が冷たい水をくんできた。それで作ったポカリは美味しかった。そこから抜戸岳へ向けての登りは結構あり、アップダウンがかなりあった。今年の6月初めの残雪期に登った笠ヶ岳は笠新道を往復したが、悪天候で結局抜戸岳までしか行くことが出来なかった。その抜戸岳が弓折岳から行くとまた違った遠さを感じた。

ようやく笠新道の分岐が見えてきたとき、これが抜戸岳かと左側を見上げた。6月の時、この稜線をはさんだ向こう側まで来ていたのだった。懐かしいと思える場所は見えなかった。分岐で休憩。

  左【笠ヶ岳とテン場】

分岐から笠ヶ岳はなだらかでほとんど稜線を捲いていた。この頃はガスで遠望がきかず、長く思えた登山道だったが終わってみればほぼコースタイムで歩き、3時半過ぎに無事テン場に到着。計画では二日分を一日に短縮したこの日の歩きはさすがにくたびれはてた。

先に到着していた吉田さんの近くにテントを設営、水場まで下り水を補給。ここの水場は大きなプラスティックのタンクにポンプアップしており、そのタンクの上から柄杓で水入れに移す。一人ずつしか出来ないので時間がかかる。でもきれいな水だった。そこからテン場まで戻るのがチョットの距離なのに、くたびれている体には辛かった。その頃になって雨が降ってきた。

ひとまず体を休めたくてテント内で横になるが、二人とも足がパンパンで、火照ってとても横になれたものではなかった。はじめて、互いにマッサージしあい、ようやく落ち着いて夕食の支度を始めた。外では雨の降りが強くなっていた。

ここで安心して携帯のスィッチをONにする。無線も持ってきていたが、非常時のために携帯は使わずにいたのだ。今回は念のため、夫も初めて携帯を用意してきていた(いつもは私のを一つだけ)。使う際は片方ずつ使うことにし、先に夫の方を使うことにしていた。今までは携帯が常時入りにくい状態であったため、バッテリーの浪費を防ぐためほとんどOFFにしていた。しかしここまで来れば、携帯も圏外ではなくなり、明日には下山見込みなのでもうOKだろう。自宅にいる子供と連絡をとり、明日下山、一日温泉泊の連絡を入れる。

 食事:朝 ミニうどん・オレンジゼリー
    昼 (双六小屋で注文)おでん600円、夫;ラーメン700円、妻;カレー700円
    夜 小豆おこわ、サラミ、海苔、梅干し、コーンスープ


最後の笠ヶ岳を登って、無事下山♪♪♪

11日目(8/18日)晴
笠ヶ岳キャンプ場5:45〜笠ヶ岳山荘5:55-6:10〜笠ヶ岳6:25-32〜雷鳥岩8:20〜水場〜穴滝11:25〜槍見(中尾温泉口)12:50
(所要時間約7時間05分・・休憩含む)

  左【朝日に浮き上がる槍:笠ヶ岳テン場から】

 テン場でテントを片づけながらご来光を仰いだ。計画通りのシチュエーション。本当は山頂からご来光を仰ぐ予定だったが、昨日二日分まとめて歩いたため、この日の朝はゆっくり出発することにしたのだ。ちょうど槍ヶ岳辺りから朝日が昇ってきた。とてもきれいだった。ガスがかからず良かった。

そして山頂へ。途中通過する小屋は、新しくてきれい。ちょうど吉田さんもいたのでそこでも話したり、トイレに行ったりと、のんびりした。荷の軽い人や若い人、元気な人にはどんどん先に行ってもらい、私たちはゆっくりと登っていった。山頂までは目と鼻の先。そして最後の登りだ。

  左【歩いてきた稜線と槍・穂高連峰:笠ヶ岳より】

山頂からはかすかに剱が見えた。山座同定をするには南部の地図が無く不確かではあったが、それらしき方向に見えるのは乗鞍岳や中央アルプスのようだ。これだけしっかり見えるということは中央アルプスも天気が良いのだろう。ここから中尾温泉口へと下る。ここの下りは長いからここで怪我をしないよう、ゆっくり行こうと夫に声をかける。

2700mあたりまで下って笠ヶ岳山頂を見上げると、こちらから見る山頂は笠ヶ岳らしくなかった。しかし笠新道の方向を改めて見て、その急坂に思わずほぅーっと溜息が出る。あの急坂、6月に登ったときも下ったときも、大変だったナ。

このあとは尾根の陰に隠れた登山道を行くため、展望は悪く、また足下に注意して歩くようなところで、ただひたすら下山に向けて歩いていった。下りだから地図のコースタイムより稼げるだろうと思っていたが、けっして歩きやすい道ではない。けっこうシビアなコースタイムだった。

これが雷鳥岩かなと思いつつ通過し、そろそろ休もうかと思った頃、先行の夫が「吉田さ〜ん」と呼び掛けている。見ると沢で、吉田さんが休んでいた。ここが地図にある水場なのだろう。他に男女一組がいるだけ。思わず夫が「もう2時間ぐらい休んでいるんじゃないの」、私も「もう温泉に入っているのかと思ったわ」とそれぞれ声をかけた。沢水は冷たくて美味しかった。ここでまたおしゃべりして、先にその三人が下りていった後、レーションを口にして、私たちも下山していった。

ここまで来ればあと一息だと思ったものの、やはり長かった。そして石や徒渉があり、ちっとも気が抜けなかった。下山したときの温泉と、何を食べようかという思いだけがこの時の楽しみであった。こちらから登ってきた人には一人だけ出会った。それだけマイナーなコースになっているようだ。

穴滝のきれいな小さな滝と水辺を写してなおも下山。さすがに夫の足下も疲れが見えてきた。何故か滑りやすく、尻餅数回。私も1,2回滑った。じれったいほどにペースも遅くなった。でもあと一息だ。と、また吉田さんが休憩しているところに追いついた。しかし休んで間がなかったのでそのまま先にノロノロと下山。先行の男女一組も途中休んでいて、先に行き、下山口には皆合流して互いに写真を撮りあった。「終わったー」ホッとした瞬間であった。本当に超長い下りであった、超々長い山行であった!お疲れ様。夫と喜びの握手。何度か「ここまで来たねぇ」と言い合った同じ言葉を思い出す。そして道々話したっけ、「お父さんのお陰で来れたんですよ。あなたも私がいたから来れたのよネ!」。いつもながらの二人三脚の山行!だった。

この後新穂高温泉まで歩く予定だったが、ちょうどバスが来るので13:03発に乗って行った。吉田さんとはここでお別れ。吉田さんは温泉に入ってから帰路につき、私たちは一泊していくことにしていた。

翌日の高速バス、さわやか信州号(6000円×2人)を予約し、その日は温泉に浸かって、美味しいものを食べて極楽。翌日は平湯経由で上高地に出て明神池まで散策し、高速バスに乗車。さわやか信州号は14:00発と16:00発の2便しかない路線で、14:00発を希望したのだが満席で乗れず、次の16:00発になった。ところが関東周辺は台風13号の影響で中央道は通行止め、JR中央線もストップということだった。上越道など迂回しての帰京の予定になっていたが、ぎりぎりになって中央道が通れることになり、無事にほぼ予定通りに新宿に着いた。先発の14時発だったら迂回していたのかもしれない。JRも大変だったから、今回は高速バスで正解だった。

 ところで思わぬハプニング!私は歯痛に苦しめられることになった。黒部五郎キャンプ場にいた頃からちょっとヘンだと思っていたのだが、旅館では夜中になって本格的に痛み出した。それからは帰宅するまで常備薬の痛み止めを飲み続けることになってしまった。帰宅して歯科に行くと、虫歯ではなく、疲れによる歯の内部の炎症という。今回のハードな山行!体は正直である。

 食事:朝 チキンラーメン、サラミ、チーズ

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