北ア・剱岳〜笠ヶ岳(No.2/3)
 北アルプス縦走:剱岳〜笠ヶ岳
 夏山の展望とお花見を楽しみに11日間の全テント泊! 
 早月尾根から剱岳へ、百名山7座を通り笠ヶ岳から槍見(中尾口)へ。

 【コ ー ス 】

  簡単なコースはNo.1に記入、コースと
  コースタイムは各日に記入

 H14年8月8-18日(木日)
  天気;各日に記入
  Member.2人(夫婦)

  【立山:前日の奥大日岳の途中より】右


ガスで展望のなかった立山、雄山は渋滞

4日目(8/11日)曇り(ガス)
剱沢キャンプ場4:05〜別山5:55〜真砂岳〜分岐7:00〜富士の折立8:05-20〜大汝山8:40〜雄山9:03-23〜一ノ越山荘10:05-30〜分岐〜浄土山11:30〜獅子岳13:40-50〜ザラ峠14:50〜五色ヶ原ヒュッテ15:25〜五色ヶ原キャンプ場15:40(テント泊)
(所要時間約11時間35分・・休憩含む)

  左【硯ヶ池で】

 今日は計画の中で一番の長丁場!ライトを点けて出発。同時に剱に向かう人も多かった。私たちは立山へと向かう。周囲は少しずつ明るくなるが、ガスで展望はさっぱりだった。別山山頂もガスで何も見えない。祠のあるところまで行って、かろうじて硯ヶ池を発見。そのまま下ろうかとも思ったが、地図とケルンに導かれて山頂へ。再び戻り、真砂岳へと向かった。そしてこの先立山連山を歩いていくが、相変わらず何も見えない。私は前日、奥大日岳の稜線から眺めた立山連山を思い浮かべながら、歩いていた。夫は昨年歩いた室堂を見渡せないのが残念なようであった。気温は10度。寒いくらいだ。数メートル先は何も見えないままに富士の折立はわざわざ登ってきた。大汝山も雄山も、今回はこの立山が唯一の3000m峰なだけに、いちおう両ピークとも踏んできた。

  左【雄山の三角点】

 しかしこの雄山は室堂から観光で気楽に来られるため、急に登山者の数が増えた。先端の山頂にある神社では500円で安全祈願のお払いをしてくれる。無料で行ける三角点のあるところは2991.6m、山頂は3003mだが有料。せっかくきたのだからお払いをして戴き、お札と御神酒を戴いてひとまず一ノ越に下ることにした。

 ところがこの下りが大変だった。折しも日曜日だったものだから、観光登山者が途切れることなく登ってくる。幾筋かある登山道を全て埋め尽くして登ってくる。家族連れも多く、小さな子供たちもいる。ガスのたちこめた中を、泣きながら登らされている幼子もいた。登山者を待っていたらなかなか下におりられない。立ち止まって待っていると、後続者が脇をすり抜けて前へ行ってしまう。下るために、登山者優先などと言っていられない状況だった。しかし下手に動くとガレ場なものだから、落石が起きてしまう。この下りは神経的に疲れた。この状況は今に始まったことではないだろうに、危険をはらんでいながらキチッと整備しないことに腹が立った。

 一ノ越では山荘でゆっくり座って休みたかったが人が多く、山荘の中は椅子など用意されていなかった。しかしカップ麺があったので体を温める為にもそこで休憩。

 そこから五色ヶ原方面へと進むと、人がグンと減った。富山大学の研究所のある所へザックを置き、飲み物だけ持って浄土山をピストン。なぜか浄土山には人が多かった。山頂のピークという雰囲気ではなかったが、別山、雄山、浄土山と、これで立山三山を制覇。

  左【イワギキョウ】

 分岐に戻りそこから龍王岳、鬼岳を捲きながら五色ヶ原へと向かっていった。この頃になると、昨夜の寝不足が私の足を重くしていた。剱岳での四輪駆動が、全身の筋肉痛を引き起こし、引きずっていたのだ。前日ゆっくり休んだ夫の元気な歩きに比べ、私の足取りは重かった。雪渓が何カ所か残っていたが、アイゼンは必要なかった(装備から外していた)。一方斜面は一面のお花畑でハクサンフウロ、ウメバチソウ、タテヤマリンドウ、クルマユリ、イワギキョウ、ミヤマダイコンソウなどが気持ちを和ませてくれた。さらにその頃になってガスが途切れ、黒部湖を挟んだ対岸に後立山などの山並みを見せてくれたのだった。これは嬉しかった。

 獅子岳の山頂でほっと一休み。少しポツポツ降ってきたが合羽の上だけ着て更に先に進む。しかし急な下りをザラ峠へと進む間に激しい雨となった。平らな場所などなかったが、どうにか凌げそうな場所で合羽の下を履き、ザックカバーをかけた。しかしザックなどもう既にびっしょり。歩きながら、気持ちは今夜小屋泊!と思った。予定では五色沼にはお風呂があるということだったので、泊まりたいと思っていた。しかし混んでいたら・・・と思うと気持ちは半分進まなかった。その上、思い荷物を少しでも軽くしたい。自前の担ぎ上げている食料を先に減らしたい。

 ザラ峠を通過し、五色ヶ原まではあと少し・・・、しかしその登りは想像以上にあった。ひたすら黙々と登っていく。夫は珍しく元気が良い。もっともこの日は夫がまたばてたら困ると思って、私の方が荷が重いのだった。そのことを忘れていた。結果的に前後して歩いていた数名をぶっちぎり、最初に五色ヶ原に到着。五色ヶ原ヒュッテは廃屋なのか、閉まっていた。その頃には運良く雨が上がっていたので、そのままキャンプ場へ。ちょうどチングルマがいっぱいだった。

  左【五色ヶ原キャンプ場】

 テント設営し、一息ついてから地図をみながら山座同定。針ノ木岳もいつか行ってみたいなぁ・・。夕暮れにかすかにかかった虹はきれいだった。テン場は一人500円。水場豊富、トイレきれい。テン場代は五色ヶ原山荘から徴収に来る。ついでにビールも背負ってくるので暑いときだったら買っていたかも。

 食事:朝 パンと飲み物
    昼 カップ麺とカップ汁粉(一ノ越山荘で購入)、他随時行動食
    夜 酢豚 (シーチキン、キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン)・山菜おこわ・みそ汁


五色ヶ原からスゴまでの稜線は手強かった!

5日目(8/12月)曇りのち一時雨
五色ヶ原キャンプ場5:30〜五色ヶ原山荘5:50-55〜鳶山6:40-55〜越中沢乗越〜越中沢岳8:55-9:25〜スゴノ頭10:48-57〜スゴ乗越11:38〜スゴ乗越小屋12:35(テント泊)
(所要時間約7時間05分・・休憩含む)

 ハードな四日間を過ぎ、これからはゆっくり北アルプス稜線歩きを楽しめると、この時は思っていくらかホッとしていた。剱岳の後は筋肉痛で二晩あまり眠れなかったが、昨夜は久々に熟睡。そしてこの日の行程は短いので少し出発を遅らせた。

 テン場から木道を登ると立派な小屋が見えた。五色ヶ原山荘だ。昨夜の宿泊者は少なかったそうだ。キャンプ場の前にここを先に通ったら、きっと素通りできなかったことだろう。

 この日もガスがたちこめている。ついてない。しかしお花はきれいだし、池あり雪渓あり(登山道には雪はない)で、お天気がよかったらさぞかしパラダイスな雰囲気だったのではないだろうか。

 最初のピーク、鳶山(とんびやま)もガスで展望無し。地図にこの先ハイマツ帯とあるので、合羽をはいた。この後大きなピークを越中沢岳、スゴノ頭と通過するが、思った以上のアップダウンだった。小さなピークも何回かあり、想像以上にハード。

  左【あれは北薬師岳か?】

 越中沢岳山頂で休んでいると単独の日本語が達者な若い外人男性が登ってきて、周囲の人に「槍ヶ岳から一週間かかってここまで来た」と話していた。ここに来るまでもずっと天候不順だったようだ。ゆっくり休んだ後、先に進むと行く手にかすかに薬師岳方向が見えてきた。手前にスゴ乗越小屋も見える。近いように見えるが、ここもまた見た目より遠かった。

 スゴノ頭で休んでいると、オコジョがちょこっと姿を見せた。一瞬だったが可愛かった。ここの下りでは岩場もあったりする。下っているとまたも雨が降ってきた。ここで合羽を着、この後止んでは暑くなって脱ぎ、といった調子でこの日も忙しかった。

 スゴ乗越(鞍部)を通過し、小屋へと登る途中にニッコウキスゲがきれいに咲いていた。今頃まで咲いているとは!そこで休憩し、しばしその風景を楽しむ。周囲の山々も見え、歩いてきた山を振り返ることが出来た。再び登り、やっとスゴ乗越小屋のテン場に到着。テン場は狭かった。小屋はそこから近い。水場もトイレも小屋にある。テン場は一人500円。

 のんびり周囲の人たちと話しながらくつろいでいると、午後2時半くらいになって雷鳴が響きだした。そして4時頃からついに雨。やがて雷雨となった。ここで明日は停滞かと思いつつラジオで天気予報を聞いていると、雨は朝夕残ると言っている。昼間は曇り、大丈夫そうだ。とりあえず予定通りの行動とする。

 食事:朝 野菜入りラーメン(キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン)
    昼 パンと飲み物、他随時行動食
    夜 小豆おこわ・海草ジャコサラダ・ソーセージ油炒め、みそ汁


山頂でやっと思わぬ展望、ヤッホー!

6日目(8/13火)曇りのち雨のち晴
スゴ乗越小屋5:05〜間山6:25〜北薬師岳8:50〜薬師岳9:50-10:40〜薬師岳山荘〜愛知大遭難碑10:53〜太郎兵衛平キャンプ場12:20(テント泊)
(所要時間約7時間15分・・休憩含む)

 夜中の雨は朝にはあがった。5時頃出発する。この日も寝不足で私のペースが上がらない。登りが辛い。体中が痛くてほとんど眠れなかったのだ。

 ようやく着いた間山は晴れていれば展望が良いそうだが、ガスで展望なし。7時頃からはまたも雨。早めに合羽を着ていると雷鳥4羽が歩いていた。よく雷鳥に遭遇する。それだけ天気に恵まれていないということになる。

  左【薬師岳:北薬師岳を下ったところから】

 岩場が多くなり、雨で濡れた石に滑らぬよう注意。気温は10度。日本海側からの風が冷たい。ガスがたちこめて視界がきかない。夫はどんどん行ってしまい視界の中から消えていた。これではどちらかが怪我したりトラブルがあったとき分からないのに(怒)。北薬師岳手前で煙草を吸って休憩しているところにやっと追いつく。風をよけて少しゆっくり休憩し、再び出発。

 北薬師岳辺りで少しガスが晴れ、薬師岳山頂が目前に見えた。目指す途中、すれ違ったジャニーズ系の男の子と少し話して、オバサン元気が出た。頑張って薬師岳到着。

  左【薬師岳山頂で】

 山頂から眺める展望は少しガスが流れているものの、周囲の風景は望めた。赤牛岳〜水晶岳(黒岳)の稜線、折立へ向かう登山道のなだらかな山並みと有峰湖など久々に見る伸びやかな風景だった。後は下るだけ。山頂で思いっきりのんびりする。

 下山途中、愛知大遭難碑に手を合わせた。碑に刻まれた言葉に情景が目に見えるようで、目頭が熱くなる。ここからは近いと思われたキャンプ場だがここもまた意外と遠く感じられた。

 太郎兵衛平テント場は広かった。水場とトイレはほんの少し離れた所にある。トイレはペーパー付きで清掃が行き届いており、とってもきれい。ここで前日雲ノ平から来た人から雲ノ平のトイレは最悪だったと聞く。ショック!テン場に着いてすぐ行ったときは清掃中で入れなかった。テン場には受付所の建物があるが、時間で開くようだ。そこではビール(500円)とジュースなど飲み物が用意されていた。テン場も一人500円。天気が予想以上によくなり、着替えて洗濯。濡れたものもしっかり乾かせて良かった。

 食事:朝 野菜入りラーメン(キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン、ソーセージ)
    昼 パンと飲み物、他随時行動食
    夜 蕎麦、野菜とソーセージ炒め、みそ汁


日本最後の秘境?の雲ノ平へ

7日目(8/14水)晴のち雨
太郎兵衛平キャンプ場4:20〜黒部五郎岳分岐5:25〜薬師沢出合?〜薬師沢小屋7:00-10〜木道〜アラスカ庭園9:35-55〜雲ノ平山荘10:40〜雲ノ平キャンプ場11:05・・テント設営後、祖母岳へ(テント泊)
(所要時間約6時間45分・・休憩含む)

 早めに出発。ずっと木道で歩きやすい。まだ薄暗い中、太郎平小屋は灯りが点っていた。側に流しっぱなしになっている水場には「飲めます」と書いてあった。剱沢では確か加熱して飲むようにというようなことが書かれてあった。水にあたると辛いのでしっかり煮沸し、ウーロン茶やポカリなどにして飲んでいたのだが、ここではそのまま飲んでみた。美味しい。

 黒部五郎岳へのダイヤモンドコースを分けて、私たちは雲ノ平へと向かった。相変わらず木道が続き誰もいない静けさの中をトントンと小気味よい。途中今回初めての朝日を見た。やはり清々しい。

 沢音のする方へぐんぐんと下り、沢に出会ったところで休憩した。トリカブトが美しく咲いていた。私たちが最初でまだ誰もいない。朝5時半、ここで山入り後初めて頭を洗った。もちろんシャンプー無しの簡単な水洗い。それでもサッパリして気持ちよかった。この時ひょっこりオコジョが顔を出したという(夫目撃)。雨の後など、沢は徒渉注意とあったが、すべてに橋がかけられてあった。しっかりしたもの、丸木で作られたもの、様々であったが。沢を通過するたびに登り返しが急で、階段など取り付けられてあった。

 この早い時間にすれ違いが多くなった。薬師沢小屋から早々に来た人だろう。周囲のカベッケヶ原と呼ばれている場所は河童が出ると言い伝えられているそうだ。間もなく私たちも薬師沢小屋に到着。下りきった場所にあり、ここに泊まったらどちらに行くにも朝一の行動は辛そうだ。ここにも水が飲めますとご丁寧に書かれてあったので戴く。美味しい。谷底で、展望といってもきれいな沢を眺めるだけだがしばらく休憩し、出発。

  左【薬師沢小屋前の吊り橋】

 目の前のしっかりした作りの吊り橋を渡る(一人ずつ)。そして今度は垂直な梯子を伝って河原へ下りる。これは高天原へ行く登山道ではないかと地図を確認するが、そこから5〜6mほどの所で高天原と雲ノ平の分岐があった。高天原の温泉に入りたいと思う気持ちを抑えて雲ノ平へ。しかしこの温泉は誘惑だった。けっこう魅力的な温泉のようだ。今でも思う、行ってみたかったなぁ・・・。

 そんな願いを断ち切って、雲ノ平へ向かったが、登りはずっと急だった。石や木は苔むしていて、ここは下りの方が気を遣うかもしれない。雲ノ平から下りてくる人は慎重に下りていた。休憩しているとき、若い女の子二人が重そうなザックにもかかわらず軽快に登っていった。しかもスピードがある(@.@)。

 私たちはゆっくりコンスタントに登っていく。ん?今日は調子がいいぞ!約2時間、予定より早く木道に到着。あとは緩やかな傾斜の木道を登っていくだけ。スゴ乗越のテン場にいた男性に教えてもらったブルーベリーの実をつまみながら歩いていった。

  左【アラスカ庭園】

 アラスカ庭園で休憩。雰囲気がとてもよい。ここにいた人からも雲ノ平のトイレの不評を聞く。そこからゆっくり散策を楽しみながら、とりあえず祖母岳を通過して進む。早めに着いたのでもう少し先に進もうかという気持ちになりながら雲ノ平山荘まで来ると、なんと立て看板にカツ丼、カレー、ケーキセット・・・など魅力的な言葉が目に飛び込んできた。「カツ丼食べたい・・」という夫を「ダメダメ・・」と引っ張って今宵の宿泊地は雲ノ平にしようか、三俣蓮華岳キャンプ場に変更しようかと迷っていた。

  左【雲ノ平キャンプ場と正面は祖父岳】

 雲ノ平キャンプ場は広かった。着いた時点でまだ11時。時間がもったいないが、三俣蓮華のテン場までとなると無理。結局そこでテントを張ることになった。周囲の人たちと話しながらやっていたため、とりあえず水晶岳(黒岳)だけでもピストンしてこようか、という目論見も時間的に不可能になったため、雲ノ平散策をすることにした。テン場の申し込みに行きながら祖母岳に登ってきたのだが、カツ丼の誘惑から逃れられなかったのは言うまでもない。しかし残念ながらカツ丼は売り切れ、二人ともカレーだった。十分な量で1000円なり。久々にボリュームのある食事にありついた。北アルプスならではである、歓喜、感涙!(オーバーか・・)。テン場は一人500円。自主申告しないと、回収には来ない。トイレの清掃しながら来ればいいのに。トイレは聞きしに勝る汚さだった。

 祖母岳山頂はアルプス庭園となっていた。なだらかでゆっくり登っても往復30分とかからない。登ったとき水晶岳にはガスがかかっていたが、天気なら展望よく気持ちがよさそうだ。この時は誰もいない中、しずかな雰囲気が楽しめた。お花もまだ沢山咲いていたが、咲き残りという印象。やはり7月の海の日辺りがきれいだと聞く。雨が降り出し、慌てて戻るがすぐに止んだ。

 食事:朝 野菜入りラーメン(キャベツ、人参、タマネギ、ピーマン、ソーセージ)
    昼 カレー(雲ノ平山荘で注文)、他随時行動食
    夜 白めし、麻婆春雨

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