屋久島・宮之浦岳縦走
 (みやのうらだけ1935.3m))

サクラツツジ、アセビ、リンゴツバキなどきれいでした!
晴天の山岳眺望、雨の屋久島の山々を満喫!

 H17年4月28日〜5月1日(木ー日)
  天気;快晴&大雨
  Member.2人(夫婦)

【コ ー ス】(〜は歩、休憩時間含む) 
一日目(28木)
羽田空港7:10発⇒鹿児島空港9:00着10:25発⇒屋久島空港11:00着⇒(買物・食事)⇒バス12:17発で宮之浦港へ⇒バス13:00発で白谷雲水峡へ13:40着
白谷雲水峡13:55〜(原生林コースを行く)〜白谷山荘16:10着(泊)

二日目(29金)
白谷山荘5:15〜辻峠5:45〜太鼓岩6:05-30〜辻の岩屋6:50〜荒川口分岐7:25〜大株歩道入口8:30〜ウィルソン株9:00-05〜大王杉〜夫婦杉〜縄文杉・休憩所(昼食)10:15-50〜高塚小屋11:00〜新高塚小屋12:15-45〜第一展望台13:10-15〜第二展望台12:35〜平石岩屋14:35(テント設営、水場往復)16:20〜焼野三叉路16:45〜永田岳17:30〜焼野三叉路18:20〜平石岩屋18:45(泊)

三日目(30土)
停滞

【太鼓岩より宮之浦岳山稜を望む】

四日目(5/1日)
平石岩屋5:35〜焼野三叉路6:15〜宮之浦岳山頂6:40-7:00〜栗生岳7:20〜投石岩屋8:25〜投石平8:30〜黒味岳分岐9:00〜黒味岳山頂9:30〜(小休止)〜黒味岳分岐10:05〜花乃江河(はなのえご)10:20〜小花乃江河10:45-50〜淀川小屋11:50-12:35〜淀川入口13:15


5/2モッチョム岳へ
5/3太忠岳
5/4開聞岳

 私たちにとって日本最南端の山、宮之浦岳に行くことになった。屋久島を知ったのは今から40年くらい前。小学生か中学生のころ、まだ世界遺産にもなっておらず、人が触れる距離まで近づけていた時代のことだ。その縄文杉の周りをぐるりと人が手をつないでどれだけ太いか、どれだけ長い歴史の中に生きてきたかを写真と共に書いてあったのは確か国語の教科書だったと思う。それを見て、実際に見てみたい、触ってみたいと思ったのを今も憶えている。余程印象的だったのだろう。それでも地図を見て当時の私にとってはあまりにも遠く、そのうちいつしか忘れていた。私にとっての屋久島は子供の頃からの憧れの地!やっと行くことが出来た。宮之浦岳が百名山の一つで幸いだった。

 屋久島はとにかく雨の多いことで知られている。余裕をもった日程で計画したが、最初の二日間が晴天に恵まれ、荒天も私たちにとっては運よくほぼ予定通りの山行ができた。

【一日目:4月28日(木)】
 飛行機に乗るというのに朝少し寝坊した。それでも急いで支度し、朝食を摂ってから娘に駅まで送ってもらう。最近、最寄り駅から羽田直行のバス便ができたのは有難い。羽田まで約50分。早朝だったので順調に到着。慣れない空港なので、早めに搭乗手続きを済ます。なぜか私の登山靴がチェックにひっかかった。

 鹿児島にも順調に着き、土産物屋を見て回る。試食の揚げ立てさつま揚げが美味しかったので夕食のおかずに少し買った。黒豚の角煮も常温で良さそうだったので購入。乗り継ぎのため搭乗手続きは簡単。荷物もそのまま移動してもらうだけ。5分遅れてJALの屋久島行きが出発した。後から聞いたところによると、この便に接続するJALの羽田発一便が出発を40分も遅れ、ぎりぎり間に合ったそうだ。

【屋久島空港で:乗ってきたのはYS-11でなくカナダのQ400】


 鹿児島から屋久島は約25分。小型のプロペラ機といえど、飛行機は早い。天気は良く、眼下に鹿児島湾(錦江湾)、桜島、開聞岳を眺めながら、屋久島空港にほぼ予定通り着。

 バスを一台見送り先ずは屋久島空港の観光案内所へ。コインロッカーがない代わりにここで荷物を預かってくれる。しかも無料でびっくり。ひとまず要らない荷物を預けた。空港の売店で少し割高だがEPIを購入。小さなレストランで昼食を摂りながら次のバスを待つ。

 まだ歩いてもいないのに「あぁ〜疲れた!」と言ったら「疲れたのは(重たい私を乗せてきた)飛行機の方だろう」と夫。
【白谷雲水峡】


 空港から海岸線を走るバスに乗る(¥510)。愛子岳や海を眺めながら宮之浦港まで行き、白谷雲水峡行きに乗り換え。愛子岳も登ってみたかったが今回はその余裕はない。白谷雲水峡行きバスは私たちの他に2人。連休の一日前にしたのでまだ空いていた。

 道路は狭い。その上道路工事中で、すれ違いの大変な所だ。山の斜面にはサクラツツジが咲いていてきれいだった。この先もあちらこちらで満開。終点で下車(¥530)。

 入山口で協力金¥300を支払う。下山予定の尾之間歩道のことを確認。大雨の時は通れないそうだ。
ここで登山計画書を提出。
【二代大杉】

 この日の予定は白谷山荘まで。まっすぐ行けば1時間ほどなので、受付のおばさんに薦められた原生林コースを行く。しばらく雨が降っていないということで苔が乾燥している。

 弥生杉の方から周回しようとしたが、弥生杉の先は登山道が崩れていたので、最初から戻ることになった。淡いピンク色のサクラツツジがとてもきれいだ。雨に濡れている風景の方が屋久島らしいのかもしれないが、晴天は有難い。沢の音が心地よく、水に事欠かないのも嬉しい。

 弥生杉、二代大杉、三本足杉、三本槍杉、奉行杉、二代くぐり杉、くぐり杉・・・・といろいろと名前がついているが、そのスケールの大きさにどれも驚かされるばかりだ。

【通らせていただきます】

【杉のトンネルが続く】
 原生林のプロローグ、白谷山荘までの道のりをゆっくり進む。連休前に入ったので静かな山行だ。白谷山荘は広かったが最終的には10人くらい。側には水場があり快適だ。近くまで鹿がやってきた。この日は小屋泊で7時就寝。

【二日目:4月29日(金)】

 夜中の2時過ぎに起きた人や、セットミスらしい目覚まし時計で起こされたがそれまではぐっすり眠れた。4時に起き上がり、食事や支度を済ませ5時過ぎに出発。まだ暗い。やはり暗いうちから出発している人も2,3人おり、後に続く。
【快晴、正面中央が宮之浦岳:太鼓岩より】

 いよいよもののけ姫の森へ。先ずは白谷雲水峡を選んだのは、この森をゆっくり楽しみながら歩きたかったから。辻峠に着くころにはいくらか明るくなり、ヘッデンはもう消していた。

 この日も天気は良く、見晴らしが良いという太鼓岩へ寄った。小屋で一緒だった山口の若者が一人。展望は素晴らしい。地図を見ながら山座同定。目指す宮之浦岳への稜線と、その先の尾根、そして大岩の目立つ山は後日予定している太忠岳のようだ。一雨降れば、その山並みから流れ込む谷が裾野に広がり、これから歩くトロッコ道もその安房川上流に沿っている。
【辻の岩屋】


 太鼓岩から辻峠に戻り、少し下ると大きな辻の岩屋があった。時間があるし、テントを持っているならここで泊まるのもいいですよと雲水峡の受付のおばさんが言っていたが、なるほど近くには水場もあり、テン場としてはなかなか良い場所だった。実は昨日のお天気が良かったものだから、その日のうちに太鼓岩からの展望を見ておきたかったのだが、そうすればこの岩屋にテントを張ることも選択肢の一つだった。この日も快晴だったものだから結果は山荘泊で良かった。
【トロッコ道で】


 その気持ちよい歩きが油断だった。荒川口からは日帰りの軽いザックを背負った人が急に増え、そのハイペースにつられて夫のピッチが上がり、その後のペースに響いてしまうのだった。

 さらに下ると荒川口からの道と合流、しばらく歩きやすいトロッコ道を行く。左側が谷になり、所々沢を渡るようになっている。サクラツツジがきれいに咲き、途中では鹿がお出迎え。人を恐れず、逃げることもなく可愛い顔をこちらに向けている。

【サクラツツジ】


 トロッコ道から大株歩道へ。入口でゆっくり休憩しここから巨大な屋久杉の核心部に入っていく。登りは急登でちょっと辛くなる。縄文杉まではガイドさんの説明を聞きながら歩くツアーなど観光客が多かった。そのためか登山道は整備され、木で作られた階段が多い。
【ウィルソン株】

 ウィルソン株のあるところは広く、空も明るかった。大勢人が居て順番にカメラを向けている。私たちも切り株の中に入って見上げてみた。なんて大きい杉の木だったのだろう。10畳ほどはあるという中の空洞から見上げる青空のキャンバスは木々がいっぱいに描かれていた。この切り株の中に寝転んでその木の葉越しに星空を眺めてみたら、どんな気持ちだろう?

 400年以上前に豊臣秀吉に献上するために切られたというこの切り株が今なおしっかりと残っているというのは凄い!

 大王杉、夫婦杉など眺めながら登っていくと、ひときわ賑やかな階段上のスペースに出た。縄文杉のところだった。目の前にあるがもちろん触れない。
【↓切り株の中から見上げる】


【夫婦杉】
【縄文杉】
 これが子供の頃見たいと思った縄文杉。7200年とも2200年以上とも言われる年輪と比べれば、私などたかが半世紀だが、その表皮のたくましさは相通ずるものがあるような・・・
【鹿!高塚小屋の前で】
【新高塚小屋と広いテラス】

 縄文杉の前を通過する時、そこに居た人から翌日は降水確率80パーセントという情報をもらった。もう一日もつと思ったのに・・・ショック!

 すぐ先に東屋の休憩所があったのでそこで休憩。昼食にした。ここまでのペースは順調。思わぬ雨予報にコースを見直してみる。翌日は宮之浦岳登頂の予定だが、雨では残念だ。しかしトロッコ道でのハイピッチが響いて夫は疲れた様子。今夜の宿泊予定地、新高塚小屋まで行ってからもう一度考えることにした。

 途中、登山ルートの目印はピンクのテープがつけられ、道に迷う心配はほとんどない。携帯の繋がる所はそのテープにケイタイと書かれており、試しに送信してみるとオッケーだった。
【第一展望台より宮之浦岳を望む。左は翁岳?】

 新高塚小屋には12時過ぎに到着。中はそれほど広くはないがきれいで快適そうだ。前後して歩いていた男性が泊まるという。まだこの男性一人。ガラガラだったがこの後混むだろう。木のテラスは雨が降ってもテン場には良さそうだ。

 近くには水場もあり、私たちもここで予定通り泊まることにしようとした。しかし翌日の天気の崩れを考えたらこの日の好天と時間の余裕がもったいないと思い、先に行くことにした。行ければ鹿之沢小屋か・・・

 第一展望台からの眺めは良かった。この後第二展望台を通過し、小さなアップダウンも通過。その稜線の眺めも素晴らしく、永田岳、宮之浦岳もきれいに見えていた。満開のアセビが見事だった。

 平石岩屋まで来た時、疲れもピークだった夫がテントを張ろうと言い出した。手前の水場は水がなかったので、先までとりに行かねばならない。目の前に大きく宮之浦岳と永田岳が見える。今日中に登りたいなぁ・・という気持ちがあり、せめて水場の先まで進みたかったがやむを得ずそこでビバーク。
【平石岩屋と宮之浦岳】       【宮之浦岳:焼野三叉路から】

【永田岳】


【永田岳山頂】


 私が水場まで行っている間に夫はテントを設営。水場から宮之浦岳山頂は20分ちょっと。雨が降ってしまえば稜線から外れている永田岳はおそらく断念だろう。展望の得られるうちに両方のピークに立ち寄ってこようかと思ったけど、一人で行ってもなぁ・・・と、後ろ髪を引かれる思いで戻ってきた。

 テントに戻り悶々としていた。「永田岳が見えるよ」と夫の声。夫はもう行く気はなかったが、時間と天気をみてまだ大丈夫と判断し、思い切って私だけ永田岳をピストンしてきた。夫も元気ならそのままその先の鹿之沢小屋まで行けたのだが・・・。でも山頂まで歩いてみて、もし天候が崩れたらそこを通って戻りたくは無いと思った。

 足場の悪いところや笹に覆われた登山道だったが、山頂は岩山。ピークを求めて登っていくとロープが垂れ下がっており、一瞬「えっ?ここを登るの?」もちろん登りましたとも!山頂標識は岩の裏側にあって、お天気がよければ永田の方面が眺められたのだろう。このとき宮之浦岳もいくらかガスがかかり始めていた。

 宮之浦山頂からの展望も眺めたかったが、焼野三叉路に戻った頃は山頂にガスがかかっていたので諦め、心配してそこまで迎えに来てくれていた夫とテン場に戻った。

【三日目:4月30日(土)】

 朝起きると風はあったが、まだ降っていない。しかし星も出ていないし、ガスがでているようだ。ラジオで聞く天気予報もはかばかしいものではなかった。昼前から雨で雷もあるという。予定通り朝食を済ませ、支度していると雨の音。風雨共に強くなり、結局停滞することにする。昨日晴れている間に宮之浦岳を登頂しておかなかったことが悔やまれる。

 時折外を覗くと、ガスの流れる中に周囲の山容が垣間見える。屋久島はひとたび雨が降ったら一日でやむということはなさそうだ。動けばよかったかなという思いも何回かよぎる。こんな日でも登山道を行きかう人は多い。足音を聞きながらテントの中でボーっと過ごしていた。前日の行動時間が長かったから疲れていたのだろう、シュラフの中に入っているとウトウトしている。

 雨足の弱まったときにテントの外に出ると周囲の山並みが眺められた。屋久島の奥深く、山懐に抱かれて、なんて贅沢な一日だろう。18時の予報では明日も雨。歩く準備はしておこう。

【平石より眺める愛子岳、白谷雲水峡方面】


【宮之浦岳はガスの中:平石より】

【四日目:5月1日(日)】

 4時前に起床。夜中は強風と強い雨、雷が鳴り響いていたが、雨はやんでいた。ラジオを聴いていると大雨洪水警報が解除されたという。雨雲は早く東へ移動したとの報に、この時はホッと安堵。したくして、予定より遅くなったが5時半過ぎに出発。風は強い。ガスもたちこめている。前方に時折宮之浦岳が見えるが山頂部分はやはり見えない。焼野三叉路までは昨日も歩いているし、山頂までの様子もずっと眺めていたので様子は分かっている。安心して登っていった。
【宮之浦岳山頂で】

 山頂は私たち二人だけ。展望はないが、一昨日、昨日とその姿を眺めていたから山頂に立てただけでも嬉しい。山頂で飲むホットコーヒーが美味しい。晴れていればもっと居たかった。名残惜しいが早々に下山。早くも淀川方面から登ってくる人が多い。昨日同様、雨でも予定をこなす人が多い。遠い島で、しかも限られた日程だから仕方ないのだろう。屋久島の雨が多いという気象も承知の上での山歩き。標高2000メートルに満たないこのメーンストリートはよく整備され踏みならされている。

【投石岩屋】

 下山時にまた雨が降り出した。栗生岳、翁岳、安房岳、投石岳もガスの中での歩き。投石岩屋は平石よりずっと広いスペースだった。雨が降ってしまうと湿っぽくなるのはやむをえない。そのまわりの投石平はガスっていたが、天気がよければ休憩にちょうど良さそうだ。そのあたりで荷物を持たない女性が連れの人を捜していた。いつもこうして先に行ってしまうとぼやいていた。夫婦などではありがちなことで、先を行く夫が後ろも見ずにどんどん行ってしまったことが私たちにも何回かあった。へそを曲げるとどうしてああも早く歩けるのだろう!でも山ではこれは危険なことで、絶対にしてはいけない。片方が道に迷ったり滑落したりしたら取り返しのつかないことになる。片方が食料や飲み物すら何も持たない人も見かける。体調が崩れたら仕方ないが、他人事とはいえ心配になる。これも山歩きのルールから外れていると思う。
【花之江河で】

 展望は望めなかったが途中、黒味岳にも登ってみた。天気が良かったら宮之浦岳などの眺めが最高なのだそうだ。今回眺められなくても、また次に登れるかどうか分からない一期一会の山旅だ。強風の時には登れないと聞いたので吹きさらしの山肌かと思ったが、潅木に覆われた良い山だった。

 花之江河もガスっていてその全景を眺めることは出来なかった。2600年から2800年前に出来た標高約1600m日本最南端の高層湿原だそうだが、お花の時期は過ぎていたのか足元には見られなかった。代わりに?数匹の大きな蛙と出会った。花之江河で近くにいた三人の若い女性と互いに写真を撮りあう。彼女たちはガイドさんが一緒で、登山口からバス停までの所要時間を聞いたことが縁で、この後、一緒に車に乗せてもらうことになった。
【淀川登山口に到着】


 淀川小屋に着くやバケツをひっくり返したような大雨。朝解除された大雨洪水警報はまた発令か?

 当初は淀川小屋から尾之間へと下る予定だったが、鯛之川の渡渉は無理なのでこのまま下山することにした。

 淀川小屋でゆっくり休んだあと、ガイドさんのおかげで3人の大阪のお嬢さんたちと一緒にワゴン車に乗せていただき、途中の紀元杉や屋久鹿など見ながら安房方面へ。

 花崗岩の山は表面に1,2メートルの土がのり、そこに植物が覆っているそうで、降る雨はどこも滝のように轟き落ちている。まさに屋久島!その眺めは圧巻だった。

 この雨で道路のゲートは閉じられ、ヤクスギランドへも通行止めになった。乗るはずだった紀元杉までのバスも来なかったそうで、私たちは有難いことにラッキーだった。ガイドさんにもお嬢さん方にも感謝。お礼を兼ねての交通費も受け取ってもらえず、ただただ恐縮。

 その節はお世話になりありがとうございました。
 おかげで安房で予約済みのレンタカーに乗り継ぎ、無事、その後の山行を楽しむことが出来ました。

5/2モッチョム岳へ
5/3太忠岳
5/4開聞岳