南アルプス南部縦走
蝙蝠岳〜塩見岳〜荒川岳〜赤石岳〜聖岳〜茶臼岳(No.2/2)

 展望とお花見を楽しみに9日間の全テント泊! 
 蝙蝠尾根から塩見岳へ、百名山4座を通り
 茶臼岳から畑薙ダムへ下山。

 H16年8月6-14日(金-土)
  天気;各日に記入
  Member.2人(夫婦)

右写真【最後の難所?畑薙大吊橋】


 No.1のつづき

5日目(8/10火)人が少なくお花の多い、静かなコース

天気:晴のち山頂部曇り
コースタイム:三伏峠小屋(さんぷくとうげごや)4:35〜烏帽子岳(えぼしだけ2726m)5:40-50〜小河内岳(こごうちだけ2801.6m)7:55-8:05〜大日影山〜板屋岳(いたやだけ2646m)11:25-45〜高山裏避難小屋(たかやまうらひなんごや)12:30(テント泊)
(所要時間約7時間55分・・休憩含む)

 三時起床。空には星。天気が連日午前しかもたないので出発時間を少し早める。水場の分岐から烏帽子岳へと向かう。分岐周辺はマツムシソウ、コゴメグサ、ウメバチソウなどいっぱい咲いて、登山道はロープが張られていた。いろいろな花が昨日の雨に濡れて生き生きしている。樹林帯はとてもきれいで気持ちいい。途中から三伏山、三伏峠小屋を振り返る。小屋が意外にも高い場所に建っていると思った。

  烏帽子岳山頂からも展望は良かった。丁度朝日があがって眩しい。この日はややガスがかかっていて、富士山はかすかに見えるだけだった。中央アルプスも連なりが見え、昨日登った塩見岳は逆光で黒い。これから行くコースの小河内岳、小河内岳避難小屋もよく見える。この日は高山裏避難小屋までだが、全コースを通じて静かな雰囲気だ。空気も爽やか(朝10°、途中15°〜18°)。お花も多い。歩みはのろいが心和む。この日もブルーベリーの実を収穫しながらのんびりと歩いていった(夜のデザートにした)。

 小河内岳は山頂が広々として気持ち良い。ここで静岡の高校生8名と引率の先生2名が先行、やはり早い。私達もあとからのんびり歩いていくが、途中で初日に蝙蝠尾根で出会った人と再び遭遇。お互いにびっくりしながらも、何となく嬉しく話が盛り上がった。「高山裏までなら楽勝ですね」と言われ、私達も高をくくっていたが、甘くはなかった。なんと長く感じられたことだろう。

 少しガスが出て、先の山頂部が見えにくくなってきた。お天気がまた怪しいと思いつつ、開けたところで小休止。昆虫の研究をしている人と出会い、この先が板屋岳と教えてもらった。どうやら(距離が)長いと思っていた 大日影山はいつの間にか通過していたらしい。そこからまた歩き始めるが、登山道は歩きやすい所ばかりではなく、手足を使い四駆で進む。  

左【タカネビランジ】

 板屋岳山頂といっても登山道の途中といった感じだったが、そこで昼食。高山裏避難小屋までは1時間とある。一度登り返しがありつらい。小屋に近づいた所で初めて見る花、タカネビランジがあった。とても嬉しかった。小屋まで来るとあたりはきれいなお花畑になっていた。トリカブト、タカネコウリンカ、サラシナショウマ?イブキトラノオ?マツムシソウ、ミヤマシシウド、ウメバチソウ、ヤマオダマキ、タカネナデシコ、などなど。先ほどの高校の先生が植物図鑑を持参でいろいろと調べていたので、私もいろいろと教えてもらった。シロバナノヘビイチゴ美味しいですよと言われて食べてみたりした。そういえばブルーベリーも食べたし、ビタミンcはバッチリ?!

 高山裏避難小屋からは荒川岳が見え、ガレ場のルートも見えていた。そこはかなり大変だったと通ってきた人がしきりに話していた。この時も時々ガスがかかり、山頂部は見えたり見えなかったりだった。早めにここに着いた人も「登頂したいと思ったが、そのガスの状況を見て早々にテントを張った」と言っていた。山の楽しみは人によっていろいろだが、私達も今回は山頂の展望を何よりの楽しみにしていた。

 テン場は一人600円。水場までは4,5分。戻るときは水を持っているので休みながらも7,8分。標示には往復10分と書いてある。沢の水は冷たく美味しかった。翌日荒川岳に行く途中にも水場あり。

  食事:朝 味噌ラーメン
    昼 ぱん、チーズ、他随時行動食
    夜 五目御飯、海草サラダ、焼き鳥


6日目(8/11水)今回一番きつかった山、荒川三山

天気:快晴
コースタイム:高山裏避難小屋(たかやまうらひなんごや)4:25〜前岳(まえだけ3068m)8:45〜分岐8:50-55〜中岳(なかだけ3083.2m)9:05〜荒川岳東岳=悪沢岳(あらかわだけひがしだけ=わるさわだけ3141m)10:30-55〜中岳(なかだけ3083.2m)12:10-20〜分岐12:40-50〜荒川小屋13:55(テント泊)
(所要時間約9時間30分・・休憩含む)

 3時起床、空には星。早めに出発4時25分。ヘッデンつけても危険な道ではなかった。30分ほどで水場あり、冷たくて美味しかった。ここでヘッデンを外す。しばらくは捲き道でお花が多い。登りになると、昨日小屋から眺めたガレ場の道が見えてくる。振り返ると高山裏避難小屋も見える。昨日歩いたコースの彼方に目をやると、雲海の上に中央アルプス、北アルプスが一望できた。感激。

 同ルートを歩く高校生や若者に途中抜かれた。彼等は早い。それに引き替え私達が元気だったのは2本目まで。ガレ場の登りは聞いてイメージしていたよりはるかに歩きやすかったが、急登で後々かなりこたえた。登り切ったところで休憩し、進もうとしたら数名の下山者が来た。ヤセ尾根ですれ違いが出来ないからしばらく待っていた。かなり年輩の男性だったが、先頭は私達を一瞥しただけで黙って通過。後ろの人が会釈していたけれど、こういう人もいるのだと思うしかない。彼等が通過してから進んだ。

  右は切り断ち、左は急斜面のヤセ尾根が続く。緊張する場所だった。前岳の大崩落を見てから分岐へ。分岐に荷物を置き、サブザックの軽荷で荒川岳を目指す。中岳へ登り、この時になって、なんじゃ〜、この疲労感は・・・。荷が軽いにもかかわらず、ちっとも楽ではない。思いっきり下って東岳に登り返すがどうにも辛く、途中で小休止。そしてまたゆっくり登り始めるがきつく感じたこと。しかしこのルートはお花が多かった。虫も多かったがサブザックで来たため虫除けスプレーはザックの方に残したままだった(まったくぅ・・)。  

 左【荒川岳(悪沢岳)山頂で】

 山頂は登っても登ってもその先にあるという感じだった。ガスが時々出たが、登っているときはバッチリ見えた。塩見岳と赤石岳は山頂がガスっていた。その時には中央も北も隠れてしまったが十分に堪能。

 同ルートの戻りもきつかった。唯一東岳の下りをのんびり写真など写しながら楽しんだ。中岳登りは辛抱・・・。中岳避難小屋でご褒美の飲み物調達。

  分岐へ戻り、また重い荷物だ。しかたない。ペースは上がらないがそれでもコースタイムで下る。途中はとてもお花が多い。写真を撮ったり、水場では顔を洗ってひと息ついたりした。

 荒川小屋は立派だった。小屋泊にしたくなる。既に築八年建っているとのこと。水洗トイレまである(pm3:00以降使用。水をモーターでくみ上げているため)。他の時間は普通のトイレだそうだ。水場はテン場から近く水量も多い。テン場一人600円。このテン場で初めて携帯が繋がった。山頂では繋がらなかったのに。

  食事:朝 雑炊
    昼 パン、はちみつ、他随時行動食
    夜 ジフィーズ(ポテト)、海草サラダ、チーカマ


7日目(8/12木)赤石岳も最高の展望。この日は小屋泊まりの予定だったけれど・・

天気:快晴
コースタイム:荒川小屋(あらかわごや)4:30〜小赤石岳の肩(3030m)〜小赤石岳(3081m)7:10〜赤石岳(あかいしだけ3120.1m)7:50-8:30〜百間洞山の家(ひゃっけんぼらやまのいえ)10:55-11:25〜中盛丸山(なかもりまるやま2807m)13:30〜テン場14:00(テント泊)
(所要時間約9時間30分・・休憩含む)

 満天の星の下、4時半に出発。ここで二軒小屋方面へと下る高校生達とはお別れ。

  初めは登りだが、まもなくずっと捲き道を行く。荒川岳のお花の豊富さに比べ、赤石岳への登山道は少なかった。マツムシソウは多かった。大聖寺平は順調に進む。夜明けの富士山がくっきりと見え、中央アルプス、北アルプスも雲海の上にきれいに見えていた。登りも気持ちよく快適。一旦登り切った所(小赤石岳の肩)で小休止。山座同定を楽しむ。

 小赤石岳はそのまま通過して山頂へと向かったが、分岐では荷を置いて空身ピストンの人が何人かいた。ここから椹島へ下りる人が多いようだ。

 山頂の展望は最高だった。共に山頂にいる人と山座同定をするのは楽しい。展望360°。塩見岳の時もその後もずっと素晴らしかったが、それ以上の展望だ(北アは後立山まできれいにみえた)。 この時点でこの日は百間洞山の家で小屋泊の予定だった。ゆっくり下りても午前中には着いてしまう。のんびりと山頂の展望を楽しむには申し分なかった。しかし私が気になっていたのは翌日の行程だった。ちょっと長く、アップダウンも多い。百間洞山の家での食事を楽しみにしていた夫だが、相談して泊まるのを断念。もう少し先まで行くことに決定。

左【赤石岳:百間平より】

 ということで名残惜しい山頂を後にした。一気に百間平、百間洞山の家へと下る。上から見ると近いように思えたが、下りはかなり下る。途中雷鳥に遭遇。百間洞山の家はきれいだった。しかし小屋の脇の沢水は大腸菌が多いという結果がでているそうだ。上の水場を確認したが小屋の人ははっきり把握していないようだった。また、そこまで歩けるかどうか分からないので、小屋にある水道から各2リットルずつ補給して持ち上げることにした。実は沢の水を少し飲んでしまったが、まぁ、海水浴やプールへ行けば、みな飲み込んでしまっているのだろうから似たようなものだ。 

 パンを軽く食べ出発。途中からの2リットル増はつらい。大沢山を通過する予定も却下して近道の方を行く。中盛丸山の登りは意外に長く感じた。下りはガレて歩きにくい。ハイマツに掴まりながら下っていった。そこで間もなく14時、タイムリミットだ。テン場に良さそうなところを見つけビバーク。兎岳避難小屋までは行けなかったが、予定の行動より進めて良かった。

 食事:朝 クラッカー、オレンジゼリー
    昼 パン・蜂蜜、他随時行動食
    夜 ラーメン


8日目(8/13金)今回最後の百名山!聖岳へ

天気:快晴
コースタイム:テン場4:15〜小兎岳(こうさぎだけ2738m)4:50〜兎岳(うさぎだけ2818m)5:45-6:05〜前聖岳(まえひじりだけ3013m)9:00-05〜奥聖岳(おくひじりだけ2978.3m)9:35-?〜前聖岳(まえひじりだけ3013m)10:25-35〜小聖岳(2662m)11:30-50〜聖平小屋12:55(テント泊)
(所要時間約8時間40分・・休憩含む)

 テン場は快適だった。3時起床、この日も満天の星。風もなく穏やか。4時15分には出発。だんだん手順が良くなっていく。小兎岳、兎岳の登りはけっこう大変。小兎岳を下って水場の有るところを通過したとき、一人の男性がテント撤収して出発する所だった。そこではテント3張りあったらしいが、テン場には良いところだった。水場がすぐ下ということで、ここの水もちょっと怪しいかもしれない。

左【雷鳥:前聖岳と奥聖岳の間で】

 兎岳山頂からの展望も素晴らしい。この日も富士山、北ア(含む後立山)、中央など一望。高気圧が日本を覆って、この日も天気は良いようだ。兎岳、名前が可愛い。山頂にまたタカネビランジの花、朝日を受けて輝いていた。山頂展望を楽しみながら夫がデジカメのバッテリー交換。兎岳を下ると5分ほどで避難小屋があった。荒廃しているということだが確認せずに通過。捲き道、ヤセ尾根、ガレた所など慎重に行き、思ったより早めに聖岳山頂着。展望はもちろん良好だ。奥聖まで足をのばす。荒川岳の時のようなきつい登り返しはなく、ハイキング気分で歩ける。片道25分のコースタイムだが、途中雷鳥がのんびりと散歩していた。今回の山行では何回か見ている。奥聖岳で腰をおろし、正面の富士山や歩いてきた道のりを眺めながら、今回の3000m峰は全て完了と、夫と握手。しばらく展望を楽しんでから本峰(前聖岳)に戻った。

左【聖岳:小聖岳より】

 前聖岳からは聖平小屋まで下るだけ。しかし小屋までは意外にも長く感じた。ガレた下りで滑りやすく、こんな時ストックが欲しいと思ったが、慎重に下ればいいっか!聖平小屋から空身で登ってくる人が多かった。気温は朝10°だったがこの時は25°にもなっていた。今まで20°もいかなかったので暑く感じる。小聖岳で昼食後、下山。大勢の人が沢山いると感じたらそこは易老渡への分岐だった。大きな荷物をデポしている人も多い。木陰で昼寝したり休んでいる人もいた。薊畑の分岐とも呼ばれているようだが途中アザミより、トリカブト、ミヤマアキノキリンソウ、マルバダケブキなど満開だった。

 明日登る上河内岳がだんだん大きくなって小屋分岐。この時、また明日この山を登るのか・・とうんざりする思いを持った。もちろん一日の山行を終え、疲れとホッとする思いから出る感情だった。それにしても一晩寝ればまた元気が出る、人間の体はたいしたものだ。そこから小屋までは10分。木道だがそれほど遠くは思われなかった。

左【お洗濯もして:聖平のテン場で】

 聖平小屋も大きかった。テン場一人500円。ここと茶臼小屋、横窪沢小屋は静岡市観光協会の管理下で東海フォレストより100円安かった。テン場も広々としている。水は沢から引かれ、水道になっている。水洗いだが汗かいた衣類の洗濯をしたり、頭も洗って少しはさっぱりした。午後になってもお天気がよく、久々に夏らしい強い日射しで気温も上昇。同じようなルートを歩いてきた35歳のSさんと一緒に話したりして、のどかなアウトドアライフタイムだった。彼は北岳から光岳までの縦走で、翌日は先に出発していたため、この時でお別れだった。一方私達は翌日仁田岳まで行ってから茶臼小屋にもう一泊の予定だったが、天気の崩れが予報されていたため、茶臼岳までにして出来るだけ下へ下りることにした。

 食事:朝 チキンラーメン
    昼 パン、他随時行動食
    夜 レトルト丼物、キムチスープ


9日目(8/14土)天気は翌日から崩れそうということで・・

天気:快晴
コースタイム:聖平小屋4:35〜上河内岳(かみこうちだけ2803.0m)7:20-30〜茶臼小屋分岐9:05-?〜茶臼岳(ちゃうすだけ2604m)9:30-?〜分岐10:30〜茶臼小屋10:40〜横窪沢小屋12:10-20〜横窪峠12:30〜ウソッコ沢小屋13:30-14:20〜ヤレヤレ峠15:15〜畑薙大吊り橋15:40〜=東海フォレスト専用駐車場16:?
(所要時間約11時間?分・・休憩含む)

 3時起床。やはり満天の星。支度して出発4時半。小屋から木道の分岐まで戻り、昨日の下山路とは逆に上河内岳に進む。ヘッデンをつけたままの登りはさして危険ではなく、間もなく白み始めて不要となった。この日も富士山は日の出と共に黒く浮き上がり、美しい姿を見せてくれている。上河内岳の登りはさほど急でなく、朝の元気なうちは楽な道のりだった。

  一度登りつめたところで休憩。登っている人、登ってくる人がけっこういる。ここまで来れば光岳まで行くという人も多い。振り返れば塩見岳こそ見えないが、荒川岳、赤石岳、聖岳、そして兎岳など、この数日歩いた重鎮が並んでいる。更に分岐まで登り、ザックを置いて、山頂まで10分くらいの上河内岳まで登ると、その展望はいっそう感慨深い。この日北アの山並みこそ霞んではいたが、富士山をはじめやはり360°の眺望。今回は本当にツイている。昨年の北海道、一昨年の北アルプスと比べたら雲泥の差だ。それ故今回は随分余計なものまで持ってきてしまった。北アではストーブ代わりに使っていたEPIが、今回は2個で済み、ツエルトも使うことはなかった。停滞もなくしたがって食料もかなり余った。嬉しい誤算だった。

左【上河内岳:茶臼岳に向かう途中の草原より】

 先を見ると茶臼岳、光岳も見渡せ、フィナーレは近い。山頂展望を存分に楽しんで分岐に戻る。ガレ場で歩きにくいが空身が何より嬉しい。荒川岳では空身ながら空身でないような疲れがあったのを思い出す。分岐へ戻り、再びザックを担いで、今度はその先に見える茶臼だ。下って、途中奇岩竹内門から上河内岳を振り返り、ワンショット!鞍部の平坦な広場は歩いていて気持ちいい。振り返れば上河内岳がいつまでも見えていた。気温は朝8°だったが既に25°くらいになって暑い。途中の木陰で休んだあと、手前の山を捲いて茶臼小屋分岐へ。

 分岐にザックを置いて、空身で茶臼岳山頂へ。珍しく夫のペースが早く、私も必死についていく。ところが驚いたことにすぐ後ろから、重い縦走装備の若者が全く同じペースでついてくる。山頂に到着して彼と話すと、私達が二日間かけて歩いた荒川小屋から聖平小屋間を一日で歩いてきたというからスゴイ。その時外人さん三人(男性一人、女性二人)がそうだったと聞いていたが、同じペースで一緒に歩いて来たのだと言っていた。羨ましい体力だ。

左【茶臼岳でフィナーレ:バックに歩いた山並みの一部・・】

 私達はここから仁田岳まで行き、そこでも360°の展望を楽しもうと思っていた。しかしもうこれまで充分満喫してきたので茶臼岳を最後の山頂とし、側にいた人達と話しながらゆっくり山頂展望の見納めとした。いよいよ最後と分岐に戻りながらも景色を楽しみ、再びザックを背負って下山開始。天気は今日一日はもちそうだが、そろそろ下り坂というので、とりあえず茶臼小屋でなく横窪沢まで下り、体力と相談して余力があれば下のウソッコ小屋まで下りておこうと思っていた。マツムシソウ、トリカブト、ウメバチソウ、リンドウ、ハクサンフウロなど沢山咲いていたが、どれもずっと見てきた花たちでもあり、下山に神経を遣っていたのでゆっくり眺めながらということもなく、茶臼小屋を通過したあともどんどん下っていった。

 一度休憩したあとそのまま横窪沢小屋へ。とってもきれいな小屋だった。水道の有るのが嬉しく、顔を洗ったり体を拭いたりしてサッパリした。管理人の人が優しい人で、外では暑いから遠慮無く中へ入りなさいと声をかけてくれた。前着の男性がそこでストップするようで羨ましく思った。でも側で小さな男の子とにこやかに寛いでいた若い男性が、雨は明日60%のようだと言っていたし、時間もまだ早かったのでやはり次の小屋まで下りることにした。この若い男性と再び下で会い、車に乗せてもらうことになるのだが、この時は当日の宿泊者と思っていたので、そんなことは思いもしなかった。

 一息ついてから居心地の良さそうな横窪沢小屋をあとにした。あと1時間半の辛抱だと思って下っていった。少し行くと横窪峠だが、鉄梯子や橋を渡り、意外にもアップダウンのあるコースだった。きれいな滝壺にカメラを向け、架かっている橋を渡るとテン場になりそうなスペースがひとつあった。そこを通過すると左に古い小屋があった。ウソッコ小屋だった。テン場は草ぼうぼうだ。フシグロセンノウがきれいに咲いていたのが印象的だった。7張り可というテン場はどうやらあまり使われていないようだ。小屋は少々傷んではいたが、中は利用されているようでまだしっかりしていた。一時はそこで宿泊しようと荷をおろした。滝壺まで水を取りに行き、靴を脱いで涼んだりしたがそこに泊まるのはあまり気が進まなかった。トイレの状況がひどく、しかもそれが水場の側であったことが一つの原因でもあったが、あと1時間半ほどで下山出来ることを思えば、無理にそこに泊まる理由もなかった。登山口まで下りても駐車場までまた二時間近く歩かねばならないのを夫は嫌がっていたが、下り坂の天気のことを思えば駐車場でテントを張った方が安心だと私は思っていた。ただ時間的に歩く時間が長く、ザックの負荷がもつかどうか不安でもあったが・・。しかし気乗りしない私を見て、夫が「下山して展望台の所でテントを張ろうか」と言いだし、即下山に決定。ホッ!

 荷物を片づけたり靴を履いたり支度していると、そこへ若いご夫婦が下山してきた。地元の人でいろいろと詳しく、民宿のことなども教えてもらって、下山する楽しみが出来た。私達が先に下山したもののすぐに追いついてきて、その時ゲートの所から車で駐車場まで送ってくれることになった。彼等は早く、しかも登山口には自転車を置いているということで時間的にギャップがあったが、快く申し出てくれたのだった。

 彼等の姿はすぐに見えなくなった。早く歩けない私達にとって、この時のヤレヤレ峠までのアップダウン、畑薙大吊橋までのコースは思った以上に大変だった。長い吊り橋を渡り終えてやっとホッとしたが、もし明日雨になってここを歩くとなると・・・と思ったらゾッとした。登山口に近いというのに、雨が降ったらけっこう気を遣う所だった。朝の内ならもっと元気が良いかもしれないが。

 林道をトコトコ歩いていると、車が通り目の前で停車した。横窪沢小屋で出会った若い男性と小さな男の子の乗った車だった。「乗っていきませんか」と停まってくれたのだが「どうしてここに?」と不思議に思う私達だった。近道の沢を下りてきたそうだが横窪沢の管理人の息子さんで、荷物など届けたりするためゲート内に車で入れるのだという。ラッキーだった。先ほどのご夫婦の所まで送って戴き、民宿まで教えてもらった。ご夫婦に教えて戴いた民宿はいっぱいだったため結局そちらに投宿することになった。ご夫婦には駐車場まで送って戴き有り難かった。お礼をしたかったが萬札と小銭しかなく渡すに渡せず。謝礼とはいえ金銭では失礼かなと思っても下山では渡せる物も無く、心苦しい思いをした。ご好意に甘えさせて戴き改めてお礼申し上げます。また何処かでお会い出来たら嬉しいです。

 追記:民宿で久しぶりにゆっくり休み、朝起きた時はどんよりとした空だったが、5時頃から雨が降り出した。つくづく昨日のうちに下山して良かったと思った。

 食事:朝 雑炊
    昼 パン、蜂蜜、他随時行動食
    夜 (下山後民宿みゆきへ)

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