南アルプス南部縦走
 蝙蝠岳〜塩見岳〜荒川岳〜赤石岳〜聖岳〜茶臼岳(No.1/2) 

 展望とお花見を楽しみに9日間の全テント泊! 蝙蝠尾根から塩見岳へ、百名山4座を通り
 茶臼岳から畑薙ダムへ下山。

 H16年8月6-14日(金-土)
  天気;各日に記入
  Member.2人(夫婦)

右写真【蝙蝠尾根最初の展望台に
     立って荒川三山を望む】


  【コ ー ス 】(コースタイムは各日に記入)

1日目(8/6金)
東海フォレスト専用駐車場=(バス)=椹島(1120m)〜二軒小屋(1390m)

2日目(8/7土)
二軒小屋(1390m)〜蝙蝠岳登山口〜徳右衛門岳(とくえもんだけ2598.5m)

3日目(8/8日)
徳右衛門岳(とくえもんだけ2598.5m)〜蝙蝠岳(こうもりだけ2864.7m)〜2845P

4日目(8/9月)
2845P〜分岐〜塩見岳東峰(しおみだけとうほう3052m)〜塩見岳西峰(しおみだけせいほう3046.9m)〜塩見小屋〜本谷山(2657.9m)〜三伏山(さんぷくやま)〜三伏峠小屋(さんぷくとうげごや)

5日目(8/10火)
三伏峠小屋(さんぷくとうげごや)〜烏帽子岳(えぼしだけ2726m)〜小河内岳(こごうちだけ2801.6m)〜大日影山〜板屋岳(いたやだけ2646m)〜高山裏避難小屋(たかやまうらひなんごや)

6日目(8/11水)
高山裏避難小屋(たかやまうらひなんごや)〜前岳(まえだけ3068m)〜分岐〜中岳(なかだけ3083.2m)〜荒川岳東岳=悪沢岳(あらかわだけひがしだけ=わるさわだけ3141m)〜中岳(なかだけ3083.2m)〜分岐〜荒川小屋

7日目(8/12木)
荒川小屋(あらかわごや)〜小赤石岳の肩(3030m)〜小赤石岳(3081m)〜赤石岳(あかいしだけ3120.1m)〜百間洞山の家(ひゃっけんぼらやまのいえ)〜中盛丸山(なかもりまるやま2807m)〜テン場

8日目(8/13金)
テン場〜小兎岳(こうさぎだけ2738m)〜兎岳(うさぎだけ2818m)〜前聖岳(まえひじりだけ3013m)〜奥聖岳(おくひじりだけ2978.3m)〜前聖岳(まえひじりだけ3013m)〜小聖岳(2662m)〜聖平小屋

9日目(8/14土)
聖平小屋〜上河内岳(かみこうちだけ2803.0m)〜分岐〜茶臼岳(ちゃうすだけ2604m)〜分岐〜茶臼小屋〜横窪沢小屋〜横窪峠〜ウソッコ沢小屋〜ヤレヤレ峠〜畑薙大吊り橋〜=東海フォレスト専用駐車場


はじめに

  あまり歩いていない領域に南アルプスがあった。交通の便の悪い所なのでなかなか行く機会がなかったのだ。しかし今年の残雪期に光岳を歩いていたし、白峰三山も以前歩いているので、この夏はまだ未踏の部分を歩くことにした。しかも行きたかった蝙蝠岳を入れて。蝙蝠岳は出来れば雪の時期に見てみたかった。しかし私達にそれは無謀な計画でしかない。今回歩けたことは嬉しい。

いろいろと下調べしてまず夫が素案を作成。ロング縦走の時はだいたいこのパターンだ。何故かと言えば私が初めに作ると必ずクレームがつく。「こんなに歩けない」とか、「ゆっくり歩きたい」とか、「山の上で日の出を見たい」とか、「ここの小屋でトンカツが食べたい」とか・・。言いだしたらきかない。たしかに歩けないものは歩けない。だからひとまずおとなしく従うことにしている(^-^;

 今回は概ね天気は良かったが、最初の頃雷雨やガスでいくらか変更があった。南アルプスの気象を肌で知る上でも、また無理のないコースタイムで行く上でも、これは良い体験だった。

 歩く目安として、今回はいくつか決めていたことがあった。
1.一日の行程は午後1時か2時までに終える(安定した気象条件下で歩く)。
2.天気の良いときに歩く。天気が悪いときは速やかにビバーク。(好展望を得たいから)
3.朝は3時起床で早めの行動。
4.山上の散歩を心ゆくまで楽しむ。

 だいたい以上のことを基本に、無理のない山歩きが今回の目標だった。3日目に早めのビバークがあり、最終日は一泊の予定が天候の崩れの予報で急遽下山となって少々時間的に長い歩きとなったが、ほぼ目的にかなった山行が出来た。これは幸いにして全日程を通じて天気に恵まれ、怪我などのトラブルもなく無事に歩けたからだった。非常食は使わずに済んだし、予備食は1日分を使い、行動食も充分残った。日程としては最終的に予定どおりの8泊9日となり食料はぴったりのはずだが、一日は小屋泊の予定だったのをコース変更でテント泊にしたため、その分予備食を1日分使った。天候の崩れによる停滞が長引けばエスケープルートがいくらでもとれたので気は楽であった。荷物の重さに押しつぶされそうになり辛い思いもしたが、歩き終えればいつものように楽しい思いだけが甦る。荷物に関しては結果として不要な物がいくつかあった。ガスは2個で充分だったし、ツエルトは不要だった。しかしこれらは前年の北海道、一昨年の北アルプスの悪天候を想定すれば致し方のないことであり、テント泊としては不測の事態に備えてやむを得ない部分があるのではないかと思う。だが南アルプスの小屋は私のイメージをはるかにこえて行き届いていた(塩見小屋のように要予約という所もあるが、これは立地条件上登山者が集中しないよう、収容に制限が必要なのも仕方ないのだろう)。混雑期でなければ小屋を最大限生かした山行というのもいいのではないかと思えた。体力的にかなりきつかった縦走装備で、とにかく今回も夫と共に二人三脚無事に楽しく山行を終えることが出来た。これが最後のテント泊ロング縦走になるだろう。これからはのんびりと身軽に歩きたいねと夫婦で話している(^-^;

【今回の装備=初日各27-28キロ、二日目以降は徐々に減少】
夫=二人用テント(ゴアテックス)、ラジオ(短波つき)、携帯(docomo)、ガスヘッド、ガスカートリッジ250×3個、シュラフ、シュラフカバー、銀マット、エアーマット、ヘッドランプ(LED)、予備電池単四6本(LED用)、雨具、ザックカバー、帽子、軍手2双、着替え(短パン1・Tシャツ1・長袖1・下着1・靴下1セット)、ナイフ、ライター、煙草5個、トイレットペーパー、私物袋(大耐水袋)、シュリンゲ2本、カラビナ2個、地図(エアリア)2枚、計画書コピー、救急用品、テレカ、ウエストバック、携帯ナップザック、食料(3日分+行動食+予備食3日分+非常食1日分)、水分(常時各2リットル〜3リットル)、バンダナ、タオル3、サンダル、洗濯ばさみ4-5、歯ブラシ、財布、ビニールテープ(黄色、迷ったときなど用)、針金(ステンレス、15センチくらいに切ったもの数本)、気温計(キーホルダー)、携帯ライト(LED、キーホルダー)、ポリ袋大中小各種数枚(新しいもの) 、予備の靴ひも、非常発煙筒1本、眼鏡、サングラス、デジカメ、細ヒモ一巻等

妻=ガスヘッド、ガスカートリッジ250×3個、チタンコッヘル2、メンコ2、箸、スプーン類、無線機、携帯(docomo)、デジカメ、医療品、シュラフ、シュラフカバー、銀マット、エアーマット、ヘッドランプ(LED)、予備電池単三4本(無線機用)・単四6本(LED用)、雨具、ザックカバー、帽子、軍手2双、着替え(半ズボン1、Tシャツ3・長袖1・下着2組・靴下2組)、ナイフ、ライター、マッチ、トイレットペーパー、私物袋(大耐水袋)、シュリンゲ3本、カラビナ3個、地形図(2万5千図)3枚、地図エアリア1枚、コンパス、筆記用具、救急用品、濡れティッシュ(ボディ用含む)、テレカ、保険証、ウエストバック、食料(5日分+行動食+飲み物セット+行動食兼非常食+野菜等)、水(常時各2リットル〜3リットル)、バンダナ、ガーゼタオル2本、サンダル、洗濯ばさみ5、輪ゴム、歯ブラシ、財布、ホイッスル、熊鈴(未使用)、携帯ライト(LED、キーホルダー)、ポリ袋大中小各種数枚(新しいもの) 、予備の靴ひも、ツエルト、日焼け止め、リップクリーム、細ヒモ一巻等

 メニューは各日の記録の末尾に記載。食材は主食フリーズドライの山菜おこわ、ワンクイック白めし(白米)、蕎麦(乾麺・・洗うときのネット袋必要、ザルの代わり)、インスタントラーメン味噌味としょうゆ味+チキンラーメン(無印良品で)、サラスパ、副食はレトルトミートソース、レトルトカレー、レトルト丼もの、他フリーズドライのもの(軽くて便利)。海藻サラダ、海草ジャコ入りサラダ、袋入りシーチキンなど。調味料は砂糖、塩、油、しょうゆ、めんつゆ(粉末小袋入り)、だしの素、ワサビ、おかか(小袋入り)。飲み物はインスタントみそ汁、コーンスープ(粉末)、キムチスープ(ドライ)、お茶セット(コーヒー、粉末ココア、粉末緑茶、粉末ほうじ茶、自家製梅酒500cc、ポカリスエット粉末10袋)。他に焼き海苔、お茶づけ海苔、ドライフーズのわけぎ(小袋で分かれている)、小分になっている蜂蜜。他に嗜好品としてオレンジゼリーの素(粉末)とチーズケーキの素。チーズケーキ用他に牛乳2パック(常温保存可能品250cc)。野菜はタマネギ2個、人参半分、ピーマン2個、ナス1個・・・耐熱バッグに入れて8日間保存でき、全て食べられた)。etc

行動食はサンドイッチ(初日用)、パン、チーズ、クラッカー、チーズナッツ付きおかき、柿ピー、かりんとう、c&cレモン飴、都昆布、梅干し、こんにゃくゼリー(家にあった残り物少し)、ドライプラム、アーモンドチョコ、チーカマ、カルパス(サラミ)。etc

予備食はフリーズドライの山菜おこわなどそれだけで食べられるもの。

非常食はそのままで食べられるチーズサンドクラッカーやチキンラーメン。他行動食をあてる。


1日目(8/6金)えっ!?二軒小屋ロッジに泊まらないといけないの?

天気:晴のち雷雨
コースタイム:東海フォレスト専用駐車場=(バス)=椹島(1120m)11:15〜二軒小屋(1390m)13:55(テント泊)
(所要時間約2時間40分・・休憩含む)

 3時半起床、自宅を5時10分に出た。道路は順調。早めに東海フォレストの専用駐車場に着いた。二番目の11時半発のに乗る予定だったが、丁度9時10分始発のバスが出るところだった。二台目のマイクロバスも10分後に出るという。ならば早めに出発しようとバス停へ。二軒小屋まで乗る予定だったが、ここでトラブル発生。二軒小屋ロッジに一泊二食で泊まらないと駄目だと言われ、しかもロッジは予約制だという。インターネットで調べたのだが、迂闊にもそのところを上の小屋に泊まれば良いと思いこんでいた(二軒小屋ロッジに要宿泊という意味には受け取れなかった)。とにかく椹島までなら乗れるということで乗車。満杯だった1台目に比べ、2台目は空いていた(4人だけ)。椹島で下車、そこで状況が良くなるわけでもないので昼食を済ませ、仕方ないからとにかく歩き出す。ここでストックを車の中に忘れたことにも気がついたがもう遅い(ストックが欲しいときもあったが、岩場などではない方が良いときもあったので、忘れて良かったのだと思う)。

  予定外の歩きだったが時間が早かったから良しとしよう。明日からのウォーミングアップだと思えばいいよと言いつつ、 林道は30°を越え暑かった。汗が噴き出る。歩くつもりではなかったからコースタイムは未チェックだったけれど、エアリアでは3時間半だ。椹島小屋の人は2時間だなんて言っていたけれど、あんまりだ。4時間は覚悟する。

  トカゲやコオロギの横切る林道の左は沢。右はコアジサイ、キツリフネ、サワウツギ(タニウツギ?)などいろいろと咲いている。しかし暑さと重たいザックでゆっくり眺めるゆとりはない。しかし所々で冷たい沢水が得られるのは嬉しかった。

 左【二軒小屋ロッジのテン場で】

 車屋沢橋を過ぎ、あと30分くらいで二軒小屋かな・・と思っていた頃、工事中で入っている車がやってきて停まってくれた。逆方向に向かっていたし、あと30分くらいなら歩けると思ったが、暇だからいいよと気のいい返事。そうなるともう少し早くに遭遇していたら良かったのに・・とついつい胸のうちに本音が出る(それまでにも数台通ったけどみんな素通りだった)。その四駆の車に乗れば二軒小屋は5分ほどだった。二軒小屋ロッジは立派な建物でテン場も快適。水場(水道)もトイレも側にあり。この日のテントは私達だけでロッジも空いているようだった。テン場は一人600円。ビールは350ml350円(自販機だったので冷たくて美味しかった)。登山計画書はここで提出。

 車で送って戴いて有り難かったと思ったのはさらにその後だった。テン場の申し込みを済ませテントを設営すると雨が降ってきた。歩いていたらテン場につくまでに降られて大変だっただろう。ラッキーだった。それにしても初日にロッジなんて泊まってしまったら、翌日登る気がしなくなるだろうな・・。それに食事の用意もしてきてしまったし、少しでも荷物を軽くしなければ。ということで、食事は重い物から片づけていくことにした。18時就寝。その夜はものすごい雷雨。テントの中でフラッシュを浴びているようだった。

  食事:昼 冷やし中華、他随時行動食
    夜 レトルトカレー


2日目(8/7土)行きたかった蝙蝠尾根を行くが・・・

天気:晴のち雷雨
コースタイム:二軒小屋(1390m)5:10〜蝙蝠岳登山口5:40-45〜徳右衛門岳(とくえもんだけ2598.5m)13:00(テント泊)
(所要時間約5時間50分・・休憩含む)

 昨夜は雷雨で浅い眠りだったが3時に起床 。星が出ていた。食事と支度をすませ、予定通り5時過ぎに出発。千枚岳方面へと歩き出す。二軒小屋トンネルを出て、千枚岳は左へ。蝙蝠岳方面は直進し橋を渡る。そのまま直進したくなるが右の東俣へ沿って進む(下る)。間もなく蝙蝠岳登山口になる。側で何気なく夫の写した写真にクサボタンがあった。

 登山口からは急登だ。高度は稼げるが重い荷でやはりつらい。登山道は思ったよりしっかりと整備され、ツガやシラビソの落葉でふかふかと気持ちよい。もう少し早い時期ならばイワカガミなどきれいに咲いていたようだ。人工物が出てきて、これが登山口から見えた中部電力の管理棟かと鉄の階段を登ったあと、休憩時に地図を見ると、まだこんな所?と愕然とする。

左【静かな登山道】

 ある程度登り切るとシャクナゲやツツジ、ダケカンバの木も目立つ。気持ちの良い登山道だ。しかし樹林帯で展望はほとんどない。その上やたらと長い尾根だ。ここは登るより、下りに使う人の方が多いそうだ。それだけに思った通り、誰一人出会うこともなく静かで、歩いていて気分がよい。

  白いコバノイチヤクソウ、セリバシオガマ、ミヤマアキノキリンソウなど眺めながらずっと緩やかな登りをいく。トリカブトの蕾も見つけたが、これはこのあと沢山開花してとてもきれいだった。毒草なので要注意。予定は早々に水場が近くにある徳右衛門岳だが、出来れば蝙蝠岳まで行きたいと思っていた。しかしとんでもない亀ペース。普段は1時間に一本だが今回は50分から40分で一本だ。夫に「先に行ってていいよ」と言われたが又お迎えに戻らねばならないのもイヤだし・・といっしょにノロノロとついていく。

 時間的にもやはり徳右衛門岳が今夜のテン場だと諦めた12時頃、単独男性の下山者と初めて会った。これから二軒小屋まで下るという。そのまま下山するのだとこの時は思っていたが、後日またこの人と会い、びっくりするのだった。水場はもう少し先で、書いてあるから分かると言っていた。しかし登りで見落としているというネット情報もあった。まさにその通りで、下山者に分かり易く、登りでは分かりにくいので要注意。

 水場に着く少し前、12時半頃から雷が響き、雨となった。合羽を着てザックカバーを着け、とりあえず水場の分岐を確認したあと先に山頂へ、13時着。山頂を少し下ったところにテント設営。小さいテントならかろうじてもう一張り出来るくらいのスペースしかない(そこへあとから17時頃下山者がきて設営していた)。テン場の側にはカニコウモリの花。

  落ち着いてから山頂で写真を撮り、水場へ行った。分岐から5分という情報だったが、ちょっと分かりにくく、もう少しかかったように思う。分岐を下りて、小径が二手に分かれるが、左へ行き、ガレ場の手前で下に更に下る。赤テープがついているので見落とさないように。水量は情報によると少ないとあったが、雨続きだから今回は多い方かもしれない。周辺はトリカブトやミヤマアキノキリンソウ、シシウドなどでとてもきれいだった。分岐まで登り10分、さらに山頂まで10分。服は汗と雨でびっしょりだったので乾いたものに着替え食後18時過ぎに就寝。

 食事:朝 雑炊、みそ汁、梅干し
    昼 パン、他随時行動食
    夜 スパゲティ(茄子入りミートソース味)


3日目(8/8日)最初の展望台で富士山をはじめ360°の素晴らしさ!

天気:晴のち曇り(ガス)のち雨
コースタイム:徳右衛門岳(とくえもんだけ2598.5m)5:20〜2721P7:15-45〜蝙蝠岳(こうもりだけ2864.7m)8:40-9:05〜2845P11:15(テント泊)
(所要時間約5時間55分・・休憩含む)

 3時起床。この日も月と星が出ていた。ヨシッ!支度して5時出発の予定だったが少し遅れる。山の場合朝の時間は貴重だ。予定通り出たい。飲み水各2リットル、予備水各1リットルとしてあとは捨てようと思ったが、この日のテン場がどうなるか分からなかったので夫があと1.5リットル余分にもつ。昨日から昨夜の雨でテントや衣類など重くなった。昨夜は乾いたものに着替えたがまたどうせ汗をかくので、冷たいけれどまた昨日着ていたものに着替え、ズボンは合羽にした。登山道の灌木が雨水を沢山含んでいたので合羽で良かった。

  しばらくは樹林帯を行く。やがて左手の尾根を巻くような感じでお花畑を楽しむ。シオガマギク、トリカブト、リンドウ、ウメバチソウ、ミヤマホツツジ、ハクサンフウロ、ミヤマシシウド、トウヤクリンドウ、マツムシソウ、タカネヒゴタイ、ウサギギク、etc沢山咲いていてとってもきれいだった。

 また登りになって登り切ったとき、先着の夫が「富士山きれいだよ」と指をさした。振り返ると「オーッ!見事!」端然と富士山があった。そして周囲360°の展望、荒川三山が間近に迫る。素晴らしい。その2721P、行程としては3日目だが、初めて展望を得られる場所だった。そこでこの好展望、最高だ。

 誰もいないのを幸いにここで合羽をズボンに替えた。天気が良いのでかえって乾くだろう。気温は20°(出発時も20°)で、爽やか。濡れたズボンのヒンヤリ感もそれほど気にならない。

 左【目指す蝙蝠岳、左に塩見岳が見えてくる】

 目指す蝙蝠岳が目の前にあり、その左奥に塩見岳がある。展望を心ゆくまで堪能しながら蝙蝠岳へと進んだ。途中で振り返ったとき、先ほど休憩したピークに単独男性が立っていた。ザックの感じからみて、今朝早朝に二軒小屋から出てきたのだろうか、早いねなどと夫と話していた。

 蝙蝠岳山頂の手前で雷鳥に遭遇。トウヤクリンドウやイワオウギ、タカネツメクサ?、タカネヒゴタイ、ウサギギク、などきれいに咲いている。そして蝙蝠岳を下山してくる親子に会った。テン場や水場の情報交換などして別れ、私達も山頂へ。蝙蝠岳は眺めたかった山でもあり、来たかったピークでもあった。今回他の山々の中で一番関心があった山だったかもしれない。それは大分以前に白く美しいその山容の写真を見て以来、なかなか登れそうにない領域だっただけに、心を離れないでいたのだった。

 山頂は広かった。ここでも周囲の展望、目前の塩見岳を充分堪能。素晴らしい。私達は塩見岳に近いところで休憩していた。あとから来た男性は山頂標識の側で休んでおり、数メートル離れていたのだが、私達が出発の支度をしているとこちらにやってきた。そのまま塩見岳に行くのだろうと思い、先行してもらおうと待っていたらザックを背負ってこない。若い男性で、「ここから下りますから」とわざわざ挨拶に来てくれたのだった。なぜ?と驚いていると、昨夜は徳右衛門岳手前でテントを張り、力不足を感じたので軽荷で蝙蝠岳ピストンに切りかえて、そのまま二軒小屋に下るという。軽荷だから今朝二軒小屋から登ってきたスゴイ人と思われたらいけないのでわざわざ言いに来てくれたそうだ。なんと律儀なと本当にびっくりした。力不足は私達なんだけれどナ。時間だけは何とかあるから登っているようなものなんだけれど・・・

 そのまま私達は塩見岳方面へ。この日は気分良く、1時間に一本の休憩。荷物が一段と重く感じられ、亀足ではあったが良いペースだった。ヒメコゴメグサ(コバノコゴメグサ)、ウスユキソウ、ヨツバシオガマ、タカネヨモギ?なども眺めながら登っていった。チングルマは既に花が終わっていてまさにチングルマになっていた。三伏峠から二時に出てきたという空荷の年輩グループとすれ違い驚いた。ピストンでその日のうちにまた三伏峠に戻るという。私達がアルプスらしい山上散歩を楽しんでいると、やはり空荷の若いグループとすれ違った。熊の平からだという。熊の平からだってエアリアによれば、十数時間かかる。なのにコンビニにでも行くような感じで合羽や行動食はおろか、水すら持たないで歩いている人もいる。ふぅ・・む・・・なぜ?。空身なら確かに早く歩けるけれど、このあと天気は崩れているからきっとみな濡れたことだろう。

 私達が2845Pで休んでいたらガスが出てきた。今まできれいに見えていた展望を徐々に覆い尽くし、目の前の塩見岳も見えなくなってしまった。まだ午前11時だが嫌な予感。今日も又早めに夕立になりそうだ。このまま先へ進んで展望の望めない塩見岳に立ってもつまらないし、雨の中歩きたくもない。周囲を見回し、テン場になりそうな所を物色し、早めに設営。塩見小屋はテント禁止だし、雪投沢のテン場も少し距離があってかなり下る。などと不確定要素を考慮してそこに早々と設営したのは正解だった。昨日濡れたものをある程度乾かせたし、雨が少しずつ降り出して15時前にはとうとう本降りになった。水を多めに持っていたのも良かったが、この雨水も無駄にせず収集して利用した。そして雷が鳴らなくて良かった。17時頃、熊の平にガスの合間をぬってヘリが2回ほど発着していたが、遭難があったそうだとあとから耳にした。

 食事:朝 スパゲティ(辛子明太子)、コーンスープ
    昼 パン・ハム・チーズ・キュウリ、他随時行動食
    夜 五目寿司、松茸のお吸い物、チーズケーキ


4日目(8/9月)四日目にして塩見岳へ!素晴らしい展望!

天気:晴のち雨
コースタイム:2845P4:30〜分岐5:10-15〜塩見岳東峰(しおみだけとうほう3052m)6:05-20〜塩見岳西峰(しおみだけせいほう3046.9m)6:30〜塩見小屋7:40-8:00〜本谷山(2657.9m)10:25-11:15〜三伏山(さんぷくやま)12:20-25〜三伏峠小屋(さんぷくとうげごや)12:45(テント泊)
(所要時間約5時間55分・・休憩含む)

 予報によるとこの日も夕立の可能性があるということで早めに出発することにした。3時に起きたときは月と満天の星。4時過ぎには準備を終え、明るくなるのを待って4時半に出発した。富士山がくっきりと見え展望も良い。雲海がとても美しい。明るくなるのを待ったのは、北股岳の登りが岩場やヤセ尾根で、危険を感じたからだった。歩いてみて緊張する場所もあったが、案ずるより産むが易しで無事分岐へ。途中チシマギキョウ(イワギキョウ?)が美しく心休まったが、カメラを出すゆとりは初めのうちはまだなかった。分岐には、塩見小屋幕営禁止と書かれている。そしてそこに一張り張れそうなスペースがあった。水場は雪投沢まで下りないと得られないが。

  そして私達は本命の塩見岳へ。前に大きくあり、遠かった山頂は目前だ。登るのが楽しみだが荷物が重くてつらい。途中立ち止まって振り返り、富士山や周囲の大展望を楽しみながらのんびり登っていく。早くも山頂には人がいて、賑やかな声が響いてくる。

 左【塩見岳東峰より蝙蝠岳と富士山】

 ようやく立った東峰。360°の大展望だ。満喫。バランスのとれた富士山に山頂の誰もが歓喜している。そして、ここから眺める蝙蝠岳の美しいこと!昨日無理に登らないで良かった。急がずのんびりと登った甲斐があった。狭い山頂でしばらく展望を楽しんだ後西峰へ。丁度だれもいなかった。富士山、東峰と共にカメラに収まる。
 

左【塩見岳を塩見小屋方面へ下る】

 下りは岩場でけっこう気を遣う。人が多いときは落石に要注意だ。塩見小屋がはるか下に見え、次々に登ってくる。ほとんどが身軽なザック、あるいは空荷だ。西側で陽があたらないから助かるが、昼から午後にかけてここを通る人は暑くて大変だろう。この時は16°から18°くらいで爽やかだった。高山植物が多いのが嬉しい。ここではミヤマダイコンソウがまだ咲いていた。

 塩見小屋でペットボトル2本調達。飲み水は充分もっていたが、別の味覚が欲しくなる。ここで南アルプス北部の展望を改めて眺めた。今まで間ノ岳に隠れていた北岳がここでは後ろに重なるように姿を見せていた。突然けたたましい鳥の鳴き声、ホシガラスだという。塩見小屋は予約制だそうだが登山者にとってはちょっと不便だと思う。その点テントは便利だけど・・・。トイレは有料で、便袋というのをくれるらしい。どのようなものかはしらない。

 本谷山へのルートは樹林帯で涼しかった。気持の良い登山道だ。お花も多い。ゴゼンタチバナもまだ咲いていた。しかし登りが長く感じられた。本谷山山頂に着くと塩見岳が見えた。お湯を沸かしてホットココアなど飲みながら昼食。あとは三伏峠に向かうだけだ。のんびりして、何人かの人と話した。その間にガスが出て塩見岳も隠れてしまった。またしても・・・と毎度同じパターンに分かり易い山だと腰をあげた。南アルプスは天気が良くてもこうして崩れる、これが名物なのだと言う人がいた。なるほど!と納得!

 捲き道のつもりが三伏山を通って三伏峠小屋へ。どこが分岐が気付かなかった。途中ブルーベリーの木が多く、実は少なかったが少しだけゲット。美味しかった。マツムシソウの花もたくさんきれいに咲いていた。三伏山から10分ほどで三伏峠小屋へ。二軒小屋から三伏峠まで一日で歩いてしまう人もいるが、私達は天気と仲良くのんびりと歩いたので、二軒小屋からはなんと三日かかった。それにしてもここまで二日は欲しいコースなのに、一日で歩いてしまうとは恐れ入る。テン場一人600円。テント設営後水場へ。10分ほど下りるが道は整備され、ポンプアップされている。テン場へ戻り、14時過ぎにはまたしても雨。

 食事:朝 雑炊、みそ汁、梅干し
    昼 パン・ハム・チーズ・キュウリ、他随時行動食
    夜 そば、チーカマ

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