八ヶ岳 ;硫黄岳〜横岳〜赤岳〜阿弥陀岳
(いおうだけ〜よこだけ〜あかだけ〜あみだだけ)

長男と歩いた初めての八ヶ岳


 H7年8月27-28日(日-月)当日発 ;
 Member.計2名(長男と)

【27日】 自宅5:10発〜(車)〜相模湖インター6:40〜
     (車)〜諏訪南インター7:50〜(車)〜
     美濃戸口8:30-50〜美濃戸山荘9:50〜
     赤岳鉱泉11:25-12:20〜硫黄岳14:00〜
     横岳15:00〜赤岳天望荘16:15(泊=素泊まり)

【28日】 赤岳天望荘5:50〜赤岳頂上小屋6:20(小休止)〜
     赤岳6:40-50〜中岳山頂7:20〜中岳ノコル7:30〜
     阿弥陀岳7:50-55〜中岳ノコル8:15-20〜行者小屋8:55-9:20
     美濃戸山荘10:30〜美濃戸口11:15-12:10〜(車)〜
     太陽館(入浴)12:50発〜(車)〜小淵沢インター1:15〜
     (車)〜上野原インター〜(車)〜自宅5:15


 長男との登山は約1年3カ月ぶりだ。彼女とのデートをお預けにして、母親とつき合ってくれることに、申し訳ないと思いつつ感謝。

 電車で行く予定だったが車に変更。前夜遅いご帰還の長男を寝かせて、行きは私の運転で早朝出発した。

 色々な山頂から八ヶ岳を眺めたことは数々あるが、こうして足を向けるのは初めてで、何とも不思議な気がする。

 地図の記載通り美濃戸口に駐車し、歩き出すと、他車の往来が多い。結局美濃戸山荘まで車で行けるということが分かった時、この失った1時間のなんと空しかったこと。ただし、道はあまり良くないので車高の低い車は気を付けた方がよい。駐車料金はどちらも一日五百円。この道を歩いて良かったのは秋に先がけてたった一輪咲いていたマツムシソウに出会えたことだろうか。

 ペースの早い長男にやや遅れて赤岳鉱泉に到着すると、色とりどりのテントが張ってあった。ここは水がふんだんにある。当初ここで幕営しようとしたが、翌日の行程がきつくなるので、せめて硫黄岳山荘まで行く予定とした。ここはお風呂に入れるので、魅力があったが、二日間の日程ではやむを得ない(入浴は宿泊者のみだそうなので、要注意)。ここから見上げると、今回の歩くコースが一望できる。贅沢な景観を楽しみながら昼食を済ませ、硫黄岳に出発。

 天気に恵まれたため、樹林を抜けると素晴らしい眺めだった。硫黄岳のケルンが目にはいると山頂はもうすぐ。下りの人に「寝てても着くよ」と言われたが、ウサギよりカメサン・・・と歩きにくいガレ場をゆっくり登っていった。やがて眼下に諏訪湖が現れ、茅野市、諏訪市が広がる。遠くの山容は、白くぼやけていた。山頂は風が強くなっていたため、地図も出さず、それらを確認しなかったのは残念だった。

 火口をのぞいて下れば10分程で、宿泊予定の硫黄岳山荘だ。予定より早く着いたので、もう一つ先の小屋まで足をのばすことにした。この辺りから思い掛けなく高山植物の女王、コマクサに対面。会いたかったコマクサ、予想もしていなかった場所で・・・。たまたま主人がすすめてくれた八ヶ岳で、こうして会えたのだから、重ね重ね主人に感謝しなければ。でもまるで、それだけ移植したかのようにまわりには他に何も咲いていなかった。何もよせつけないような場所にコマクサだけは、強風の中でも、しっかりと根をおろしている、強い花。

 そしてトウヤクリンドウもきれいに咲きそろっていた。

 横岳は岩場だった。息子は驚いていたが、北アルプスと比べたら驚くにはあたらない。でもここがテレビのアップで映った時は、とても大変そうだったから、さすがに私も身構えていたっけ。

 風にあおられながら大同心・小同心を通過して、赤岳山頂直下の天望荘に着いた頃は、息子が腰や足の痛みを訴えてきた。すぐ目の前の山頂まで足を延ばしたい気もしたが、そこで宿泊することにした。小屋の周りにもコマクサがたくさん咲いていた。

 小屋は素泊まりで自炊。今夜はカレー。レトルトではない。今回の荷物は食料・水が、かなりのウエイトを占めているから、どんどん軽くなっていくはずだ。ご飯が少し固かったが(高度3000メートル近いのだから仕方がない)、とてもおいしかった。この時自炊はあと一人、25歳のおとなしそうな男性がいただけ。個室は人気があったが、私たちは大部屋にし、一緒なのはこの彼だけだった。夜中目が覚めた時、風がとても強く、ガスも出ていたらしく星は全く見えなかった。

 翌朝4時半頃起床。強風で小屋はしっかり戸締まりされていた。自炊室へ行く時は開けて貰い、移動する間は風にあおられる始末。朝の献立はスパゲティと、それでは足りない息子はプラス、パン。

 天候が悪かったが、やがて晴れるというので、予定より少し遅れて出発。しかし山頂を目指す間、思った以上の強い風に何回も立ち往生。途中からその風をうまく利用して無事登頂。山頂小屋で少し休み何回か展望を試みたが、無駄とあきらめて出発。そばの山頂三角点に立った時、強風の中写真を撮りながら、周りを見回していると、動きまわっているガスの合間から途切れ途切れに富士山、南アルプス、眼下の平野・諏訪湖が見えてきた。北アルプスはぼやけていて、槍が岳を確認できず残念だった。

 岩場、鎖場、ガレ場を通過して下山。ガスの中、赤岳鉱泉で目に焼き付けた山容を頭におきながら歩いた。中岳で慰霊碑に黙礼し、中岳のコルへとすすむ。そこで荷物を置いて空身で阿弥陀岳に登るが、相変わらず山頂も見晴らしはだめだった。早々に下り、再び荷物を背負って行者小屋へと向かった。その頃になってようやくガスが切れてきた。木漏れ日の樹林を軽快に下りて行くが、息子はかなり足にきていたらしい。私に心配させまいと気遣って笑いながら「ちょっと痛い」と言っていたが、かすかに片足ひいていた。若いからペースは私よりはるかに速いが、やはり登山が慣れていないからなのだろう。

 35分ほどで行者小屋に着き、休憩。ここもキャンプ指定地で、水はふんだんにある。休憩の間、9時過ぎにはガスがきれいにきれて、昨日赤岳鉱泉で見たときのような青空と、歩いた軌跡がはっきりと現れた。山頂からは見事な展望をのぞめたことだろう。悔しい気もしたが、後2時間半で車の所に着く。ゆっくりお風呂につかって早く帰ろうと思い直して、今度は緩やかな下山路をかなり早いペースで歩いていった。

 美濃戸口で昼食をのんびりと済ませ、近くの太陽館で入浴し、さっぱりして、今度は息子の運転で帰路に着いた。

“西日射すガレ場に強き風受けて輝きそよぐコマクサの花”
“山の風涼しと歩めばマツムシソウ・トウヤクリンドウ秋はすぐそこ”
“山好きの吾につき合い登る息子(こ)は大学四年、背中眺めつ”