南アルプス・光岳(てかりだけ2591.1m)

 雨には降られたけれど充実の光岳
 360度の展望をイザルヶ岳で見たかった!
 コースタイムは参考になりませんが・・

 H16年5月2-3日(日-月)
  天気;2日晴れ、3日雨
  Member.2人(夫婦)

右写真【光岳山頂で】


 【コ ー ス 】(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(5/2)
易老渡登山口(880m)5:45〜面平8:00〜易老岳(2354m)12:45(テント泊)
(所要時間約7時間・・休憩含む)

二日目(5/3)
易老岳(2354m)5:05〜光小屋7:20-50〜光岳(2591.1m)8:10-50〜光小屋9:05〜イザルヶ岳9:30-45〜分岐(ロスタイム?)〜易老岳12:00-40〜面平15:00〜易老渡登山口(880m)16:25
(所要時間約11時間20分・・休憩含む)


一日目(5/2)
 日頃睡眠時間があまりとれない上に、心配事もあり、今年のGWは近場の軽いハイキングくらいかなと思っていた。しかしせっかくの長期休暇だからと夫が南アを計画。ハードな山行は辛いし未踏の山域では積雪状況も山の様子も分からない。用事も重なって渋る私だが、結局は夫に押され、バタバタと支度やら情報収集をしての決行となった。天気予報によればGWは前半が好天ということで、可能ならもっと早く出かけるべきだった。しかしそういう事情で出遅れてしまった。

左【易老渡の駐車場】

 中央道の飯田ICから易老渡(いろうど)は遠かった。それだけでも南アルプスの奥深さを実感。 夜中の1時15分に易老渡に到着。駐車場は登山口(吊り橋の側)の少し先にある。すでに10台ほど停まっていた。その倍以上は停められそうだ。トイレも一つある。

 3時間の睡眠は辛いが4時半に起床。ずっと運転してきた夫を寝かしといてあげたいが仕方がない、長丁場なので起きることにする。周囲では車のドアを開閉する音が早くからしていた。テントを片づけ、軽く朝食を済ませて出発する頃には登山者はもうあまりいなかった。

左【登山口】

 登山口の橋の側にある投函箱に登山計画書を入れ、その橋を渡る。その辺りに雪は全くなく、登山道は分かり易い。九十九折れの道を行くものの、急斜面は崩れているところもあった。トラロープがついているところもあったが注意して行く。小石が多く、約1時間ほどは気の抜けない登りだ。下山路もここを通るが疲れていたり、暗くなっていたら危ない場所だと思った。積雪期はなおさら要注意だろう。

左【ミツバツツジ】

 登山口からしばらくは新緑が素晴らしかった。お花はタチツボスミレ?、バイカオウレン、そしてミツバツツジが少しだけ咲いていたくらいだった。樹の間からは早くも目的の光岳が見えてくる。樹が邪魔で写真を撮らなかったが、このあともずっと樹に阻まれたまま。上の方に行くと今度はガスがかかり、翌日も早い天気の崩れでその残雪の山容は脳裏に焼き付いたものだけとなった。光岳は黒いところもあったが登山道の残雪状況はどんなかと気に掛かる。一方反対の左手に見えるのは兎岳、聖岳方面のようだ。いずれも光岳同様、樹の間から見えるだけ。

 途中、軽装の単独男性が登ってきた。光岳日帰りで、行けなかったら13時を目処に下山すると言っていた。私達はいちおうテント二泊+予備日の分で重い・・。日帰りいいな・・と思いつつ見送った。下山者も数名出会ったが、単独または二人連れで静かな山歩きだった。南アは比較的静かな山域だと聞くが、交通機関の不便な奥深い山なればこそなのだろう。この静かな雰囲気は私の好みだ。しかし残雪のあるこの時期、この山に、軽装の人が多いのに驚いた。

 登山道にはテープがしっかりつけられており、道を間違えることはなさそうだ。しかし雪道用につけられているところもあるので注意が必要だ。

 自然林に囲まれた面平(めんだいら1500m)は、それまでの急登で疲れた体をホッとさせてくれる。 それも束の間、また登りが続く。今回の標高差は1700Mあまり、易老岳までは1500M弱だ。雪が現れたのは2000Mくらいからだったろうか。ザックが重いのでたまにズボッとはまるがまだ締まっている方だった。

 いつもより早めに休憩しつつゆっくりと登って行ったのだが、またしてもというか、案の定というか、心配していたとおり、夫がペースダウン。またやっちゃった・・とばかりに夫の顔は申し訳なさそうに精彩を欠いている。いつもこんな調子なのに、なぜかいつも率先して私のためにプランを練り、つきあってくれる心優しい夫なのだが・・・、そういうわけで、私の方がなぜかいつもザックは重い・・。ん?もしかしたら私の方が心優しく夫につきあってあげているのかも知れない。

 足が攣りそうになって薬を塗っても、そう簡単に良くなる訳でもない。夫を気遣いつつマメに休みゆっくり登って行くのだが、振り返ると離れてしまっている。「大丈夫?」と声を掛けながら夫を待つが、毎度のことで夫には、私が怒っているように見えて「怖かった・・」とのたまう。そりゃ、ちょっとは思ったけど・・(笑)

左【ここを登りきれば易老岳山頂】

 尾根上の小ピーク(小広場2254.1m)で最後の小休止。あと1時間ほどで易老岳だから、先に行ってテン場を確保しておいてと言われ先に行く。しかしそこから注意を要する小さなアップダウンがいくつかあり、疲れている夫が気がかりで確認しつつ、大丈夫そうになってから先に行った。

 易老岳山頂には思ったより早く到着。既にテント二張りあった。お誂え向きの場所にザックをおろし、とりあえず中身を出して空ザックを背負って再び下山。少し下ったところで夫に会ったが、夫はもう少しだからとそのまま頑張る。13時着。

 当初は一泊の予定で、一日目は光小屋まで行くつもりだった。しかしせっかく登ったのだから、もう一泊して茶臼岳の方にも行ってみようという夫の提案(?)で、テントは易老岳に張ることにした。ひとまず温かいコーヒーをいれ、そのあと珍しく2時間ほどお昼寝をした。ばてていたから方法としてはこれで良かったのだろう。でも天気は下り坂・・・。その夜の天気予報では翌日までもちそうだが、夜から雨というので、翌日光岳ピストンの後、下山とする。19:30就寝。

二日目(5/3)
 雨?テントにあたる音に目ざめたのは3時。そのまま起床。外はガスがかかり、湿った樹から滴が垂れている音だった。まず展望は無理だろう・・・。

左【光岳へ出発】

 ひとまず朝食の用意。梅干しとお粥にみそ汁、ヘルシーで朝から美味しく戴ける。コーヒーを飲みながらテルモスにも飲み物の用意をし、準備を済ませた。霧雨のような感じだったので最初から合羽を着用。早朝でも雪質はサクサクとしているのでアイゼンは置いていく。ザックに必要なものだけ入れ、テントはそのままにして出発。

左【易老岳の下り】

 易老岳の下りは踏み跡もありテープも要所にあるが、ガスで遠望のきかない中、注意して歩いていった。前日の光岳が目に焼き付いているのでその姿を思い描きながら。三吉ガレがどのあたりだったか、下山した今地図を見ながら思い浮かべる。三吉ガレへの下り斜面は地肌の出ているところもあったが、全体的にまだ残雪はある。積雪はどれほどだろうか、ときたま膝の上辺りまで沈む。

左【ひたすら雪渓を登る】

 雪に押しつぶされた木々を避けながら進んで行く。アップダウンもいくつかあり、もし前日の重いザックを背負ったままここを歩いていたとしたら、けっこう大変だったことだろう。光小屋まで1時間と書いてあったのは三吉平と思われるが、昭文社のエアリアマップでは1時間40分となっている。三吉平から沢筋を登るようになるが、夏道より下部の歩きやすい平坦部分を登っているようだ。その登りは一瞬、白馬の雪渓を思い出す。展望もなく、きれいな草花もなく、ひたすらの登りで嫌になるが、涼しいのがせめてもの慰めだ。

左【木道に出た】

 ようやく尾根に登りつめると下山者に聞いたとおり、木道が見えてきた。その位置を見ても、やはり夏道と大分ルートが違っているようだ。しかし迂闊にも下山時にこの位置関係を見誤る。

 所々出ている木道に沿ってそのまま進んでいく。そのあたりはセンジヶ原、夏には高山植物が咲き乱れるのだろう。ツガザクラが多いのだろうか。ガスで見えなかったが近くまで行って小屋のあることに気がついた。

左【光小屋】

 小屋はバイオのトイレも含め3棟建ってログハウス風の立派な造りだった。中に入ってみるととてもきれいだった。ここまで来たら、ゆっくりくつろげる。泊まるならもちろんシュラフは必要。説明書きによると、夏は営業(7月中旬〜9月中旬)しているが、いろいろと制約がある。食事の提供は50才以上かつ3名以下のグループで3時までに手続きした人と、50才以下でも三伏峠以北より縦走して来た人のみとなっている。詳細は静岡県営光岳小屋参照。晴れていれば小屋から富士山も見えるそうだ。

左【光小屋の中で】

 小屋でしばらく休んだ後、光岳山頂へ。山頂までは20分ほど。しかし晴れていても展望が良い場所とは思われなかった。少し先に展望場があるのでいちおう行ってみる。ガスで見えないままに地図を出し、磁石を出して大体の方向感覚だけ掴んでみた。南アルプスの南端で、その山並みは重なって見えるのだろう。360度の一部が開放されているだけでちょっとあてが外れた。天気が良くなかったので、残念な思いも薄らいだ感じだ。光岩まで7分と書いてあったので途中まで行ってみたが、ガスが濃くて見えそうになく、かなり下るようなので途中で諦めた。山頂に戻ると易老岳でテントを張っていた若者達が来ていたのでお互いに写真を撮り合い、先に下山した。

左【イザルヶ岳山頂で】

 小屋を通過し、木道を歩いていたらイザルヶ岳への分岐があった。さっきは気付かなかったと思いつつせっかくだから山頂へと行ってみる。山頂は広い。ここで初めて残念に思った。晴れていればきっと展望が素晴らしい!光岳よりお薦めの場所ではないだろうか。ここから光岳を眺めてみたかった。周囲の山々もきっと眺められたことだろう。山頂標識はイザルヶ岳とくり抜かれていた。手が凝っている。ここで温かいコーヒーを飲みながら一瞬でも晴れてくれれば・・と空を見上げたのだった。思わず「空のバカァ〜」と夫。

 分岐に戻ったとき、光岳山頂で会った若者達がやってきた。そこから下山に向け夫が先行して間もなく踏み跡がなくなっているのに気がついた。あれ?と左右に捜したが見あたらず。見つけたと思ったのは先ほど歩いたイザルヶ岳への踏み跡。再び戻ってやっと木道に出た時の様子を夫が思いだした。登りではイザルヶ岳の分岐を通っていなかった。地図の夏道では通過しているので気付かなかっただけかと思ったが、やはり記憶通り、通ってはいなかったのだ。それに気がついて元の道に戻ったのだった。

 登りで大変だった沢の雪渓を、今度はずんずんと軽快に下って行く。一度下りきって、三吉平を登り返した頃、先行していた先ほどの若者達に追いついた。そのままついていったが途中で私達は小休止。後からのんびりと易老岳へともどった。しかし意外とアップダウンのあるこの復路にもまた夫は辟易。

左【易老岳山頂のテン場へ】

 易老岳でテントを片づけ、一休みしたあと私達は下山することにした。しかしその時になって空がぱっと明るくなり、このまま晴れるのかと足が止まった。夫の希望通り、もう一泊すべきか少し気持ちが揺らいだが、それも一瞬のことで、すぐガスに覆われた。結局そのまま下山。

 易老岳の下山は最初の方で注意を要する岩場の狭い上り下りがあるが、そこを通過すればあとはずっと下りのみ。ザックが重いとバランスを崩しやすいので気をつけて下っていった。雪が無くなってからは濡れた木の枝や、落ち葉に隠れた石などに注意しながら。下りは快調の夫に比べ、私の方が慎重でゆっくりだった。

 前日は易老岳山頂を16時頃通過して下山していった軽装の若い男性がいたが、彼は無事に下りられたのだろうかと二人でずっと気になっていた。コースタイム3時間で下りたとしても登山口に19時。ヘッデンは持っていたのだろうか?持っていたとしても暗くては危ないコースだと思うのだが、大丈夫だったのだろうか?光岳小屋のHPに“近年、地図も持たず軽装備で登られる方が増加しています。南アルプス南部の山域はハイキング気分ではなく、登山という認識をもって登っていただきたいと思います。”と書いてあったが、まさにその通りだと思った。

左【易老渡へ下山】

 普段は下りであまり休憩をとらないが、今回は登り同様に休憩をとりながら下山した。最後1時間のガレたジグザグ道を無事に下り、再び出会ったバイカオウレンやタチツボスミレにやっと気持ちが和む。登山口の橋はもう目の前。やっとホッとした。

 温泉は「かぐらの湯」600円。露天風呂他サウナなどあり。シャンプーリンス、ボディシャンプー、ドライヤーもあり。鹿料理など珍しいものが食べられるが、早めに給油したくて食事はせずに飯田方面へと向かった。近辺のスタンド閉店時間は早いので、要注意。飯田IC沿いまで行ってようやく給油。車を満腹にさせてからやっと私達も給油!(^-^)V 既に21時になっていた。

 さて帰宅して我が家でのこと。「もうバテテ大変だから、誰かと行けよ・・」と夫がいう。フンフン・・と聞き流している私。そしてその側でせっせと常備の梅干しを補充し、山道具の手入れをし、私の靴下が薄くなっているので「忘れない内にすぐ靴下を買いに山道具屋さんに行こう」と言う夫だ。そして夏は南アルプス縦走だ!と(私のお株を奪って)早くも一生懸命プランを練っている。なんやかんや言いながら、やる気満々の懲りない夫なのである(((^o^)))