上越国境 ;  谷川岳西黒尾根
 (たにがわだけ にしぐろおね)
 会の教育山行。谷川の西黒尾根で雪崩講習と雪洞掘りを行った。従って当初から山頂は目指さなかったが、皮肉なことに翌日はピーカン。谷川岳山頂、白毛門から朝日岳の稜線をはじめ、まわりの山々がハッキリと非常に美しく見えた。

 H11年2月6日(土)〜7日(日)前夜発 ;
  Member.CL佐藤・SL中山・海輪・増田・鈴木・山口・五十嵐・田谷・今井・石原 計10名


【みんなで雪洞掘り】右

【コース】
一日目:2月6日(土)
天気;吹雪
土合7:30〜ロープウエイ乗り場7:50-8:10〜(西黒尾根)〜雪洞目的地点11:30(雪洞掘り12:00〜16:00、雪洞内泊)

二日目2月7日(日)
天気;快晴
(雪崩講習7:00-9:00)出発9:30〜(同ルート下山)〜鉄塔9:55-10:20〜ロープウエイ乗り場10:30〜土合駅10:50



【一日目】
 10名参加という久々に大所帯の山行だった。しかもベテランスタッフが充実、新人も含まれているというバランスのとれた構成。私も今回の講習は初参加。

 昨夜10時半、3台の車に分乗してそれぞれ出発。赤城高原SAを過ぎた辺りから雪が降りだした。関越を水上ICでおり、途中コンビニでレーション等調達した後土合駅へ向かった。着いたのは夜中の2時半頃。既にマンさん達の車は到着しており、宴会モードに入っていた。扉付きの駅舎の中に入っていくと「雪を払ってから入って」と増田さんに注意されてしまった。そうか、ここは我々の寝床になるんだっけ、と慌てて雪を払いに行く。

 1時間ほど車座になって寝酒の仲間入り。酒豪の中に混じって今回は私も杏露酒(SHIN RU CYU)を持っていった。日本酒が飲めないから私は甘いお酒。ほんの少し飲んでシュラフに入るが北国の駅構内はさすがに冷える。初めての時は驚きと好奇心でいっぱいだったが、今やこうして駅に寝ることにも慣れてしまった。

 浅い眠りで起床6時過ぎ。外は吹雪。各自身支度と朝食を済ませ、共同装備を分け合い、駅前で写真を撮ってから出発。吹雪はややおさまっていた。寝不足の割には皆元気がよい。

 土合駅からロープウェイ乗り場まで20分程歩いただけだが、そこで何故か休憩。「あれっ、ロープウェイに乗るの?」と思わず聞いてしまった。若者がいっぱいいたが、圧倒的にスノボーの子が多い。天神平スキー場の積雪は375センチ。

 トイレやら飲料補給やらめいめい済ませ、さて出発、と出たものの、すぐワカンが必要となり、全員装着。トレースは全くなく吹雪のため見通しも悪い。しかし、教育山行と銘打った参加者10名のパワーは力強かった。交替でのラッセルは楽だったし、それぞれの工夫に見習うところが沢山あった。私自身谷川岳は初めてだったが、慣れた人たちが大勢いたので不安は全く感じなかった。

 積雪は多いところで4メートル程はあっただろう。ラッセルは胸までの所もあれば腿くらいの所もあった。傾斜のあるところはそれなりに辛い。しかし10名というのは少人数に比べかなり負担が軽い。途中別パーティーもラッセルに加わったので一時13名くらいで回転したときもあった。吹雪の為休憩も敢えてとらなかったがお陰で充分体を休ませることが出来た。赤いテープはあまりつけられていなかったのでひたすら尾根をあがって行くが、要所ではベテランが注意を促してくれる。もし少人数で来ていたならば、私なら登らなかっただろう。それほどに天候は厳しかった。なのにあの安心感は何なのだろう。やはり組織ならではのものなのだろう。

 北から吹き付けてくる風で右頬ばかりが痛かった。目出帽を被っていたが下げなかったのがいけなかったようだ。髪の毛が少し帽子から出ていたというのもいけなかった。髪の毛に付いた雪が凍って頬にあたり、下山後気が付いたことだが少しその部分が茶色くなっていた。どうやら凍傷のようだ。髪の毛は全て帽子の中に入れるべしと肝に銘じる。海輪さんの頬にも氷が張り付いていて白っぽく変色しているのに気が付いたが早めの処置が功を奏して大丈夫だった。

 途中雪庇を踏み抜かないよう気をつけなければならない場所があるので注意が必要。そこを通過すると雪洞掘りをする場所に到着。標高がどのくらいだったか迂闊にも確認していない。

 そこは4〜5メートルほどの積雪はあっただろう。ひと休みして雪洞掘りにとりかかること約4時間。スノーソーとスコップを使って、みんなで二つの雪洞を作った。片方は10人全員入る宴会用としたのでかなり広い。中で男の人が充分立てる高さで通路の奥行き約3メートル、広間?は約2メートル×4メートル(約2坪以上)程の空間があった。寝るときはそれぞれに5人ずつ。それだけのものを作るのは大変だったがとても面白かった。外は相変わらず吹雪いていたが、出入口にツエルトを張ったので中は温かい。

 10人全員入っての宴会は楽しいものだった。それぞれ持ち寄ったアルコールを分け合い、盛り沢山の寄せ鍋に舌鼓を打つ。タラ、ホタテ、ハマグリ、牛肉、野菜いろいろで、なんと大鍋4回作って食べた。ランタンのほのかな灯りの中、暖をとるEPIを囲んで他愛のない会話が続いた。大勢で来るっていうのは楽しい。

 宴が終わってそれぞれに別れ、しばらくおしゃべりした後、就寝は9時頃になった。

【二日目】
 翌朝5時過ぎ、増田さんに起こされる。シュラフを片づけて朝食のしたくが整った頃、隣の雪洞から集まってきた。また10人の賑やかな食事が始まる。昨夜の残りの鍋にうどん9玉入れる。食べきれるかなぁという声が出るが見事全部平らげる。そしてお茶を飲んだ後それぞれ荷物をまとめ、身支度を整えて雪崩講習。

 まず雪洞を出て驚いた。出入口の白銀の上には無数のオシッコの跡。吹雪いていたからって、なにもこんな側でやらなくても・・・と大笑い。

 昨日私達と共にラッセルした別パーティは私達の所より少し先に雪洞を作っていたが、6時半頃軽装で出発した。おそらく山頂を目指したのだろう。全部で5人のパーティだったようだ。

 天気は快晴。気持ちがいいほどに晴れ渡っていた。私達はワカンをつけ、ピッケルを持って、先ず雪洞の脇から上に上がる。雪壁というのだろうか垂直に近い所をみんな上手に登っていく。見よう見まねで私も何とか登る。前方に谷川山頂、反対側に白毛門の稜線を眺め、皆一様に登りたい風であった。その気持ちを抑え、景観を満喫しながら田谷さん講師で雪崩講習を始める。昨日の出発時点から身に付けているビーコンを使って雪崩を想定した捜索の仕方を実地に学ぶ。どれほどの信頼性があるのか分からないが、いろいろと実験をしながらやってみると非常に興味深い。人間の知恵で、自然の大きな力(雪崩)にどれほどあらがえるものか、途方もない挑戦なのかもしれないが、必要な事に違いない。

左 【雪崩講習】
 バックは白毛門 

 2時間ほどじっくりやって、ひと息ついてから同ルートを下山。素晴らしい天気の中、展望を楽しみながらザクザクと下りていく。昨日とはうって変わって気持ちの良い歩きだ。このまま下りてしまうのがもったいないが、もうみんな温泉とビールがちらついている。

 汗ばむ陽気に鉄塔の所で休憩。服を脱いだりお茶を飲んだり、そこから見える土合駅方面を眺めたりしながら次々に冗談が飛び交う。

 こんなに急なところを登ってきたっけといいながら今度は順番に尻制動で下りていく。アッという間にロープウェイの乗り場に到着。途中登山者数人と出逢い、尻制動はまずかったかなと思ったがもう遅い。乗り場近くではあちらこちらで、私達同様雪崩講習をしているようだった。ビーコンやゾンデを手にして動き回っている人、説明に耳を傾けている人、メモをとっている人、と様々だった。

 ワカンを外し土合駅に向かったが、昨日とは違いぽかぽか陽気で道路の雪はかなり解けていた。土合駅で荷物をおろし、それぞれの車に分乗して温泉へ。温泉は湯テルメ。一人500円(2時間)、露天風呂あり、シャンプー等あり、休憩室もありでくつろげる。