奥多摩;  高水三山
(たかみずさんざん)

歩き慣れた高水なのに、植物観賞が新鮮に蘇る


 H9.6/24(火)当日発 ; Member.計2名

軍畑8:00〜高源寺〜高水山〜岩茸石山11:00-12:00〜
惣岳山〜沢井(澤乃井酒造)2:45


 6時45分、立川の青梅線に乗り込むと同行者が新聞を読んでいらした。「おはようございます」と声をかける。にっこり微笑まれて、今日の好天を喜びつつ挨拶を交わし、数日前にもご一緒したかのように、なめらかに会話はすすんだ。

 軍畑で下車し、ゆっくり出発。このコースはバスにも乗らずそのまま歩いていけるのがよい。

 しばらくは舗装道だが、その間話しながらも左右にムラサキシキブやマタタビ…が咲き、間近にはセキレイが飛んでいる。

 空は梅雨にも関わらず晴れ渡っている。

 登山道に入り、杉の樹林を通って行くが、暑い陽射しを遮るには丁度良い。数日前の台風の通過で、葉や実、花びらがいっぱい落ちている。そんな思いがけない拾得物を手にして同行者の目は少年のように輝いている。私はといえばゆっくり草花を見ながら歩くことが少なくなった中で、新鮮な喜びを感じていた。おぼろげながら○○かな?と不確かな思いしか抱くことが出来なかった草花の名も、その都度確認でき、みるみる甦ってくるのだ。

 常福院までくれば高水山頂まではあとひと息。竹林とイロハカエデの樹を仰ぎながら、登っていった。山頂は展望がないし、鉄塔が建っていていつもながら趣がない。イヌブナの樹は又大きくなっていた。

 少し休んで再び歩き出す。視界が悪いがこの日は暑い陽射しを避けるのにはかえって都合が良かった。他愛のない話をしながら、尾根伝いをのんびり歩く。何も変わっていないような気がする。下草を楽しみ、樹木の花や葉で名前を探ったり、風や光で揺れ動く葉の陰影に感激したりと山の良さを心ゆくまで味わえた。その空気のおいしかったこと。何度も来ている高水なのに、なんて新鮮な感触なのだろう。

 岩茸石山の山頂で、棒の折を眺めながら早めの昼食。遠景はモヤっていたが陽射しが柔らかくて丁度良かった。視界の中のリョウブにナツツバキの木が混じっているのを同行者が発見。蕾をもっていたが、咲いているところを見たいものだ。

 山頂を後に下ると常緑樹の馬酔木の木に混じって今度は落葉樹のネジキが現れた。これも似たもの同士で花が似ていた。

 三山の最後、惣岳山でグレープフルーツをご馳走になり、一個ぺろりと戴いてしまった。山で食べる果物は持って行くには重たいが、最高だ。

 樹林帯の中を歩いていくと低木のコアジサイが、群生している。花が終わったばかりなのか日陰のせいなのか、小さな青っぽい可愛らしい花なのに花の部分が白い。それさえ目新しく映る。

 一輪だけ咲いていたイチヤクソウ、咄嗟には名前が出てこなかったけれど、先生のヒントで思い出した時はまさにヤッター!すっくと立って、丁度見頃の咲き加減。愛らしく美しい。

 沢井駅のそばの澤乃井園で分け合ったビールを飲みながら、今日の山歩きを締めくくった。

”風うまし息深く吸う風うまし梅雨の晴れ間の奥多摩の風”
”幾たびの高水草木は新しく吾に映れる君が名言えば”
”山頂で喉の乾きを癒す我が手に移り香のグレープフルーツ”
”渓谷を眺めつ語る三年の空白は今静かに流る”
”ルーペ目に天を仰いでかざす葉に星が輝くミクロの世界”