奥秩父; 両神山
(りょうがみさん)
親子3人でゆっくりハイキング

 H6年5月28日(土)前夜発 ;
 Member.計3名

 【コース】(=は乗り物、〜は歩き)
白井差小屋8:40〜御手洗場(みたらしば)〜一位ガタワ(1320m)〜のぞき岩〜両神山山頂(1723.5m)11:40-12:45〜ミヨシ岩〜大峠〜白井差


 バイトからの長男の帰りを待って、日帰りでしかも前夜眠らず、主人を含め三人で、車で出かけた。初めは長男と二人、電車の予定だった。娘は修学旅行、次男も箱根へ行くとかで、「お父さん一人になっちゃうヨ」と泣きついてきたから?渋々連れて…もとい、行ってくれることになったのだ。車になったお陰で帰りのバスの時間を気にしなくてよくなったことと、少し奥まで入れるため時間的にかなり余裕ができたことがなにより助かった。これなら主人が少々ブレーキになっても心配はない。

 コースは出かける直前に、完全に変更。車だと往復は殆どが同じコースになってしまうものだが、幸いここはぐるりと回ってこれる。これで車によるデメリットは全く無くなった。

 息子を後ろに寝かせて主人運転、私が助手席で午前2時出発。関越自動車道を通って目的地、白井差(しろいざす)小屋に着いたのは3時間後の5時。先着1台の車(相模ナンバー)が止まっていて、どうやら先に登っている様子。私たちは取り敢えず仮眠することにした。

 8時には出発したかったがこの時間に起きて朝食を済ませ、息子のふざけた提案で片方ずつ色を違えたスパッツをそれぞれ身に着けて、出発したのは8時40分だった。白井差小屋の掲示板に転落や行方不明の捜索状況など書かれており、もし一人で来ていたならきっとひるんでしまったことだろう。主人や長男が一緒でどんなに心強く思ったかしれない。

 ところがそんな心配をよそに道はよく整備され、やや勾配がきついもののとても気持ちのよいものだった。沢のせせらぎと小鳥のさえずりを心地よく聞きながら、たわいのないおしゃべりをして歩く。いつもは私の手にあるビデオが今日は息子によってこちらに向けられる。間もなく見えてきた滝がなんとも涼しげに流れ落ちていた。

 なんでこんなに重くなってしまったのというくらいお荷物を身に着けてしまった主人の歩みに合わせてゆっくり登っていく途中、目についたいくつかの花。確信持てたのはもう終わりかかっていたがウツギ(ウノハナ)だった。何だろうと思いつつ持ち帰ったビデオを再現した結果、白い花の一つはクワガタソウだと分かった。ウスバサイシンかなと半信半疑だったものが、実はフタバアオイだったらしい。そしてジロボウエンゴサク?と思っていたものがヤマエンゴサクらしいと分かったが、専門家が見ても、ビデオでは確信に至るのは難しいらしい。野鳥のさえずりも大きくきれいに聞こえたが確信持って何々と言えないのがもどかしい。一年や二年で分かろうとするのが土台無理なことと心得てはいるが。

 若さに任せてさっさと先に行ってしまう長男の持つウーロン茶を求めて、二人でこつこつ追いかけて登って行く。短いながらも所々に岩場や鎖場があって、それらはしんどい思いをさせてくれるばかり。その急勾配に喘ぐこの喉に、なかなかありつけない。私はもう登れるだけでうきうきしてこの位の苦しさは当り前にしか思わないが、主人は相当辛そうだ。ところが筋肉痛で苦しむのは主人でも、勿論私でもなく、若さ満々の長男だった、とは後日談。

 休みやすみ登って山頂に着いたのは3時間後。所要時間はいつものように大目に見積もった予定のとおりだった。いくつかのグループで山頂は賑わっていたが、狭かったことと、ガスで見通しがきかなかったこともあって、少し戻った所のコブに設置されたテーブルで昼食の用意を始めた。天気がよければ山頂からは雲取、八ヶ岳等が一望できたそうだ。是非見てみたかった。そんな山頂での醍醐味には恵まれず、せっかくつきあってくれた主人や長男の為に本当に残念に思った。

 帰りの時間をそれほど気にすることもなく、ゆっくりすき焼きを楽しんで12時45分出発。下山に向かったが、車で来たときは同じ場所に戻らねばならないということで大抵は同じ下山コースを辿るものだが、ここでは幸い別の道を通りながら同じ場所に戻れるコースがあって変化を楽しむことができた。

 下りのミヨシ岩という場所に出たときにはぱっと視界が開けて思わず顔がほころんだ。三ツ峰方面が見えた訳だが地図を広げながらの一休みは気持ちの良いものだった。只、絶壁だったため、下を見ると吸い込まれるようだと息子が騒ぎながら、それでも一生懸命ビデオを撮っていた。暑くて冷たいものが欲しかったが、だんだん残りが乏しくなっていたため、少しずつで我慢した。涼やかな鳥のさえずりを耳に、一息ついたところで食べたグレープフルーツは生き返るようだった。

 滑る場所あり、道が消えてしがみつかなければ落ちてしまいそうなガレ場あり、なかなかスリル満点のコースだ。でもキヌタソウやユキザサ、チゴユリ、ギンバイソウなどが心を和ませてくれた。

 登山口に着いてわが家の車を見ると、まるでわが家に帰りついたような安堵感があった。主人や息子が一緒だったから、こんなゆったりした気分でいられる。この安心感が嬉しかった。

 さらに近くの出湯を求め、露天風呂でゆっくり体をつかることできて本当にリラックスできた。その近くの駐車場で、車中、うどんを食べた後、息子の運転で帰路につく。私たちはビールで酔った体をうしろに横たえて夜中に帰宅。車ならでは、家族とならではの過密スケジュールだった。主人と息子の二人に感謝。

     “両神に立ちて見晴らし望めずとも息子や夫と食べるは楽し”