尾瀬・尾瀬ヶ原〜燧ヶ岳
(おぜがはら〜ひうちがたけ2356.0m)
 水芭蕉を見たくなって、久しぶり(6年ぶり)に尾瀬へ。 沢山の花々との出会い!!

 H14年6月1-2日(土日)
  天気;両日雨のち晴れ
  Member.2人(夫婦)

  【燧ヶ岳:尾瀬ヶ原より】右

 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(6/1)
尾瀬御池(みいけ)登山口7:10〜(燧裏林道)〜渋沢温泉小屋分岐9:17〜平滑ノ滝分岐9:37〜三条ノ滝9:43-9:50〜分岐10:00〜平滑ノ滝(ひらなめのたき)10:30-40〜温泉小屋10:53〜下田代十字路11:25〜テン場(下田代キャンプ場)11:30〜テント設営、昼食〜尾瀬ヶ原散策(13:00〜15:35)
(所要時間約4時間20分+散策2時間35分・・休憩含む)

二日目(6/2)
テン場8:00〜燧ヶ岳登山口8:17〜燧ヶ岳柴安嵒(しばやすくら2356m)11:18-45〜燧ヶ岳俎嵒(まないたぐら2346m)12:10-21〜熊沢田代13:18-26〜尾瀬御池登下山口15:00
(所要時間約7時間00分・・休憩含む)


【一日目(6/1)】
 久しぶりに尾瀬に行った。こちらからは行きにくい尾瀬御池の方から行き、尾瀬ヶ原散策と燧ヶ岳に登ることにした。私は燧ヶ岳にこれで3回目だが、尾瀬ヶ原や尾瀬沼、至仏山を含めると5回目になる。周辺の山を含めると、こちら方面には何回か足を運んでいる。それでも御池からは行ったことがなく、裏燧をいつか歩いてみたいと思っていた。娘と三人で行った時も夫だけ燧ヶ岳には登らなかったので、夫は今回初めてになる。

 今回は小屋泊まりにしようかと予約の電話をいれたが、直前ではやはり満杯。結局テント装備で行くことになった。当然混むと予想されたので、一日目は裏林道を通って尾瀬ヶ原に直行とし、もし天気が快晴ならば燧ヶ岳直登と決めた。

 前夜7時頃自宅出発、到着は深夜12時チョット過ぎ。天気予報では一日目より二日目の方が良いはずだった。一応6時に目覚ましセット。途中雨音に起こされた。一日目は予定通り裏林道としよう。 それならば朝急ぐ必要はない。

 再び6時の目覚ましで起きると空は明るかった。しかし食事と支度をしているうちにまたもや雨が降ってきた。御池の駐車場はかなり広く、車でいっぱいだったがまだ入る余裕はあった(一回1000円)。殆どの人は軽装で、沼山峠行きのマイクロバスに乗っていた。

 合羽を着て7時過ぎに出発。燧ヶ岳分岐を通過して燧裏林道へと進む。最初に出会った花はなんとサンカヨウ。そしてコミヤマカタバミ、ミヤマスミレを皮切りに、今回は思いがけなく沢山の種類の花と出会うことができた。今年は残雪の花、早春の花を見損なっていたので、この尾瀬で一挙に楽しませて貰い、ラッキーだった。

左【水芭蕉】

 早い時点で残雪が現れた。雪質はしまっているが気温が高いため表面はシャーベット状でやや滑りやすい。雪の無いところもありアイゼンは使うほどではなかったが注意して歩いていった。こちらのコースは予想通り、尾瀬とは思えないほど人は少ない。雨はあがったばかりでその雰囲気が田代にはマッチしてとてもよかった。夏の花の最盛期とは異なりまだ地味な田代ではあったが・・・。そして願い通り水芭蕉が現れ、ショウジョウバカマも満開だった。こちらの水芭蕉は巨大化しておらず、可愛い姿のままだった。そうそう、これが見たかった!一生懸命写真を写すが、いかんせん、荷物が重く思うようにしゃがめない。

 樹木ではオオカメノキ(ムシカリ)、ムラサキヤシオツツジ、タムシバ、石楠花、ミネザクラなどを愛でながら、足下の小さな草花に目をやる。三条ノ滝方向へ下る標高1500m以下では雪はほとんどなかった。ミヤマエンレイソウ、シロバナノエンレイソウが多かった。マイヅルソウ、ユキザサなどは蕾をつけていた。

左【三条ノ滝】

 三条ノ滝へは分岐で荷物を置き、飲み物だけ持っていった。ゴォーッという音が響いてきて、間もなく見事な滝が見えてくる。展望台より先にも行けるので勿論行ってみた(5月中頃まで積雪期には鎖など外されてしまっている)。この辺りにくると尾瀬ヶ原からやってくる人の数が増えてきた。以前私もそちらから来たことがあったが、空荷であったにも関わらず、大変だったという印象だった。今回は大荷物を背負っているが、時間に急かされているわけでもないので、花を愛でながらのんびり行けばいい。

 今年は見ていなかったニリンソウにも出会って、なんだか得した気分だなぁと写真を写していたら、側を通った女性から「あぁ、ニリンソウね」と珍しくも無いような言い方をされてしまった。これが「あら!ニリンソウだわ」なんて嬉しそうに言ってくれたらもうニッコリだったのだけれど・・・

左【温泉小屋周辺のリュウキンカ】 

 温泉小屋に着くとここも人でいっぱいだった。入浴500円とある。意外に安い。そして氷の一文字、これは誘惑だった。値段は見なかったが、せっかく担ぎ上げてきたビールがある(昨夜飲まなかったため)。黙って通過。

 その温泉小屋の周囲はリュウキンカが見事だった。一面黄色である。そしてタテヤマリンドウ、キクザキイチゲ、ヒメイチゲ、チングルマなども咲いている。前方には至仏山も視界に入ってきた。雪は残っているが、例年よりは少ないように思えた。一方燧ヶ岳の方は雪が少ないように見えたがこれは北面、南面の違いなのだろうと、翌日の下山路が気になるところだった。朝と思えばすっかり天気は持ち直し、合羽も途中で脱いでいた。燧ヶ岳の山頂もすっきりと見え、この日登頂していれば今頃は山頂でよい眺めだったろうかと話しつつ下田代へ。

左【テン場】

 小屋が一番多く、人が密集している下田代十字路到着は12時前だった。早速キャンプ場へ行くと想像以上に広かった。10人は寝られそうなテントが既に3張り、周囲にはすでに小さなテントが20張りほどあったがそれでもまだまだ充分余裕がある。山ノ鼻のキャンプ場より広い。トイレが完備しているのは予想していたが、水道付きの大きな炊事場まであるとは思わなかった。なかなか快適なテン場である。

左【水芭蕉と至仏山】

 テント設営しながらビールで乾杯。美味しかった〜!そして、昼食を済ませた後燧小屋にテン場代(一人800円)を支払い、尾瀬ヶ原を散策。原はまだ目覚めたばかりで水芭蕉やリュウキンカ、ショウジョウバカマ、タテヤマリンドウの他にザゼンソウもまだいくつか咲いていた。そしてミツガシワ・ヒメシャクナゲ、モウセンゴケも咲き始めていた。この原がお花で埋まる頃、母を連れてきてあげようと話しながら一巡りした。燧ヶ岳と至仏山の両座に挟まれ、静かなそよ風が吹きわたる原は、半袖で歩いていても心地よい気候。気温は20度を越えていた。

左【ミツガシワ】

 テン場に戻って一息ついた後、早々に夕食のしたく。これがよかった。食べ終えてコーヒーでも飲もうかと思っていたところへ雨が降ってきた。急いで中へ入り、そこでコーヒータイム。外はそれから降ったり止んだりを繰り返した。6時頃には寝てしまったが、外では相変わらず降り続いていた。予報は外れたか・・・。

左【ツバメオモト】

【二日目(6/2)】
 4時に起床。外は雨。様子を伺いながら食事をすますが止む気配はない。このまま降り続くなら、同ルートを戻るか、尾瀬沼から沼山峠へ出てもよい。燧ヶ岳にしても、最終的には8時頃ここを出ればよいだろう。たたんだシュラフを出して、二度寝を決め込んだ。雨音や周りの声を聞きながらそれでも一眠りし、7時頃目を覚ました。雨はあがり明るく晴れている。燧ヶ岳に決定。

 周囲の人と話しながら、テントを片づけて準備し、燧小屋に札を返してから出発。それぞれ尾瀬沼に行く人が多いようだったが、その中に4歳と、11ヶ月の2人の男の子を連れていたご夫婦がいた。私たちの若い頃を棚に上げて、よくやるなぁと感心する。積雪期の西穂高にも連れていったというのだから驚いてしまった。上には上がいる。

左【残雪】

 登山口には積雪期に遭難が多い旨の注意書きがあった。心して進む。早くも残雪が現れた。同時にイワナシ、ツバメオモトも登場。しかしこれは最初の方だけで、そこからはほとんどお花は見られず、ずっと残雪の上を歩くのみ。ここでは登り、下りとも、やはり人は少なかった。早くも下ってくる人は、雨のうちから登ったようだ。

 振り向いても展望の利かない樹林帯の中を登り、前方に俎嵒が見えてくると、そろそろ森林限界。ひと登りすると尾瀬ヶ原が一望でき、冷たい風が気持ちよく感じる。周囲の展望も良い。至仏山の右には平が岳・越後三山方面、左には武尊山・秩父の山並み・・・。皆まだ斑に雪を被っている。

左【燧ヶ岳柴安嵒山頂:バックは平が岳】

 この辺りではもう足下に雪はなかった。そのまま山頂へ。東北で一番高い燧ヶ岳柴安嵒(嵒の字は、山が上にきて、品が下になるが、パソコンに入っていないため、この字を使用)だが、三角点はなぜか10m低い隣の俎嵒にある。ひとまずここで休憩。先客は一人、静かな山上からの眺めを満喫。尾瀬ヶ原も尾瀬沼も一望の下。尾瀬沼の延長線上にはひと月ほど前に登った皇海山や太郎山など、日光の山並みが見える。この山頂に立つのも3回目だが、感慨もひとしお!ここは何回登っても良いと思う。

左【柴安嵒直下の雪渓:俎嵒から】

 座っていると寒くなったので一枚上に着て、隣の俎嵒へ。ところが・・ところがである。何と信じられない光景が目に入ってきた。柴安嵒からの下山路は雪がびっしりついている。そして、見下ろすのも怖いほどに垂直に近い。しかし、さっきここを登ってきた人がいた。下りれないことはないだろう。しかし、さすがに躊躇した。今回ピッケルは持ってきていない。ストックだ。ここでは全く役立たない。とにかくここをクリアしなければ戻るしかなくなる。意を決して下ることにする。ザックが大きいし、前向きで下りるのは危険と思い、後ろ向きで下りることにした。先に夫が下りる。そして私が続く。一歩一歩つま先で踏み込みながら下りていった。雪がまだ締まっていて幸いだった。しかしかなり緊張した。ひとまず鞍部におりて振り返るが、下から見上げるとそれほど急にも思えない。俎嵒への登りは全く雪は無かった。俎嵒山頂から改めてその斜面を見ると、一人下ってくる人がいる。やはりかなり慎重だ。ここは登る方がはるかに気が楽かもしれない。夏道ならば15分ほどで歩けるところを慎重な分だけ余計にかかっている。

 俎嵒山頂で最後の尾瀬沼、尾瀬ヶ原の展望を楽しんだあと、正面に会津駒ヶ岳を眺めながら御池へのルートをすすんだ。思いがけなく山頂にいた男性4人が先行していった。彼等は早かった。

左【雪渓を行く】

 このコースは田代や一部を除いて残雪がたっぷりあった。雪質は締まっていたが表面は柔らかかった。今回は軽登山靴で靴底も減っていたため、滑りやすかったが、団子になるだろうからと、アイゼン(今回6爪)は最後まで使わなかった。ストックはかなり効果的。雪渓を下ったり、トラバースしたりと、気は抜けなかった。ようやく雪のない登山道に辿り着いても泥だらけで、ずっと足下ばかり気をつけて歩いていた。

左【熊沢田代】

 広くて大きな熊沢田代はのびやかでとても気持ちの良い風景だ。雪は既に解け、すーっと木道が続いている。その両脇の池がいかにも涼しげ。前に先行した人たちはもう姿が見えず、歩いているのは私たちだけ。素晴らしい風景も周囲の展望も誰に邪魔されることなく、この静けさの中で満喫。いいなぁ〜・・・。ここがお花でいっぱいに埋め尽くされるころはきっと人で溢れるのだろうなと思いつつ、今がいい、としみじみ思った。

 ここからはもうそれほど大変な道ではないだろうと思ったのは甘かった。相変わらずマークを辿りながらの雪道が続き、雪が無ければ雪解け水の中を行くか、泥んこ道だった。踏み抜くのを避けて捲けば、雪で倒された笹の上で滑りやすかったりした。木道が雪解け水の下に沈んでいるところもあった。

 広沢田代の辺りまで来て、ようやく水芭蕉やショウジョウバカマがあらわれてきた。木道を歩いていたときつるりと滑って尻餅。そこは木道がちょうど坂になっていて、雪解け水がジャージャー流れているところだった。見事にびっしょりになってしまった。しかしさすが山用のズボンと下着、歩いているうちにほとんど乾いてしまった。

左【サンカヨウ】

 登山口に近づいた頃、ムラサキヤシオツツジが出てくると同時に足下にはコミヤマカタバミやスミレの仲間も現れてきた。そして嬉しいことに、最初に出会って撮り損ねていたサンカヨウが、最後を締めくくってくれた。目の前はもう御池の登下山口だった。それにしても一日目が朝から快晴でなくて良かったかも。こちらから登っていたらきっと大変だった・・・

【エピローグ】
 車に戻って荷物を片づけた後、靴だけ履き替えて御池を出発。檜枝岐の駒ノ湯(一人500円)で汗を流し、近くのお蕎麦屋さんで檜枝岐名物の裁ちそばを食べた。おいしかったので土産にも買い求め、その後は急いで帰路についた。なぜって?それはこの日、東北道浦和料金所の近くでワールドカップの試合があるため。東京へ向かう道路渋滞を避けたいからだった。イングランド対スウェーデンの白熱した放送を聞きながら(私は子守歌にして)夫は眠気も寄せ付けず、ひた走るのだった。料金所手前の左側、埼玉スタジアム上空は明るかった。試合は後半戦の中盤、料金所で「間に合った〜」と一人つぶやく夫だった。かくして東北道も首都高速も渋滞は免れ、9時過ぎには自宅に到着。(試合は結局1対1の同点だった=予選リーグ)