丹沢・小川谷廊下
(おがわだにろうか)
 やっと沢デビュー!素晴らしかった!

 H15年8月31日(日)
  天気;曇り
  Member.3人(斉木・石原夫婦)

  【記念すべき初入渓】右
 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

駐車場7:40〜広いゴーロ(休憩)14:30-15:35〜堰堤突き当たり(沢登り終わり)15:45〜駐車場17:05
(所要時間約9時間25分・・休憩含む)


※お断り
デジカメが途中で壊れたため、小川谷の風景写真は坂元氏が2002年7月6日に撮影したものを、了解の元に挿入したものです。沢の様子を入れたく、坂元氏より譲り受けました。当日の様子と異なる部分もありますが、ご了承下さい。写真説明の部分にも記載しました。なお、休憩時にチェックしてデジカメのスイッチを入れることが出来たため、最初と最後の部分が当日の写真になります。

 やっと沢登りに行ってきた。私達夫婦の沢登りデビューだ。それもいきなり丹沢の小川谷廊下。しかし経験豊富な斉木さんがいるから大船に乗ったような気持ち。心配は天気だったが、前夜の天気予報でいくらか状況は良くなっていたので急遽決定。斉木さんの怪我や私達の用事などで、山行の約束がずっと延び延びになっていたのだが、久しぶりの同行がまさか沢になるとは思っていなかった。沢になったのには事情がある。たいしたことではないのだが、元は先日出かけた北海道の山旅にあった。北海道では幌尻岳にも登る予定で、その為に沢足袋を用意した。台風の影響などで幌尻岳は今回断念。沢足袋は思いがけなく、これまた雨で増水の斜里岳で目出度く初使用。その沢もどき山行に我ら夫婦は揃ってマイッテしまった。どうマイッタって、これほど気持ちの良い登山はとても魅力的だった。普段より増水していたお陰で、次々に現れる徒渉と滝!これは素晴らしかった。そして、私の沢願望をずっと阻止していた夫が、せっかく沢足袋を買ったのだから、これは使わなければ!と言いだした。むっ!・・・ともかく私の今までの我慢はかくして解除となった。とにかく目出度い!目出度い沢デビュー!しかしそれにしても、私は今まで何度もチャンスがあったのに、何で夫と一緒の沢デビューなのだ!(;.;)と、夫のにこにこ顔に投げかける。結局私は従順な妻・・・(^-^;

 五時に我が家へ来てくれた斉木さんのパジェロに乗って出発。東名では雨が少しパラパラときた。丹沢方面はガスで霞み、上空は真っ黒い雲。このまま雨になるかと気にしつつ、目的地へとそのまま向かった。幸い雨にはならず雲の流れをみて決行することにした。

 駐車場には既に車2台停まっていた。スペースは狭く、上手に置けば5,6台は置けるだろうか。手前にも置けそうな場所はいくつかあった。近くにはトイレもある。

 ザックは斉木さんの指示の元、極力軽くした。私達が沢経験初めてでもあるし、実は3人ともそれぞれ足に支障箇所があった。斉木さんは左足骨折の後で、岩手山で足慣らし?をしているものの完全回復とまではいっていなかった。私は半月前に北海道で捻挫しており、やはり完治しているわけではなかった(なのに何故行くかなぁ・・・^^;)。夫は?といえば、膝痛と腕がはずれやすいという持病持ち。それこそ何故行くの?って感じ(^o^)。こういうハンデを承知の上で小川谷を誘ってくれた斉木さんは大物というか強者というか猛者というかネジが数本抜けているというか・・(沢初めてなのに怖がることもなく、最後まで歓喜している私達夫婦をボルトが一本抜けていて良かったと評価されたけど・・(^o^))

 さて、ハーネスとメット、シュリンゲ、カラビナなどを持ち、斉木さんがザイルなど登攀具一式、夫はツエルト・テルモス、私はコッヘル関係とお茶セット・救急用品などと分担。私達は沢足袋、斉木さんは沢靴を履いたが、履き替える山靴は荷物を軽くするために持っていかないことにした。

左【堰堤の階段を下りていく】

 駐車場から少し下り、かすかな踏み跡をたどって沢へと向かった。先ず堰堤を3つほど下りていく。それぞれしっかりした階段がついている。

 広い川原に出るとそこは玄倉川本流へと注ぐ合流点だった。そこで身支度を整え、遡行図をのぞく。経験のない私には読んでもピンと来なかったのだが、この先も時々その遡行図を見ながら、丁寧にいろいろと教えて貰えた。沢用語もいくつかようやく理解できた。やはり百聞は一見に如かずである。

左【小川谷風景1】
(phot by Mr.Sakamoto 2002.07.06)

 負傷者三人組がはじめからのお約束通り、のんびりと進んでいく。未知への世界に思わずワクワクしてくる。まだこれからなのに、その逸る気持ちそのままに、はじめからデジカメを出したり入れたり忙しかった。ビニール袋を重ねて中に入れ、防水配慮しているというのに、その手間が気にならない。その初期段階でトラブルが発生した。カメラを持つ夫の様子が変だ。スイッチが折れてしまったという。ONに出来なくなってしまった。タイム取りは諦めるにしても、初めての沢を写せないのはとても残念だった。これは、これからの沢登りに写真撮影などする余裕はないでしょうと、神様が取り上げたのかもしれない。美しい風景が出てくるたびに残念ではあったが、そう思うしかなかった。

 そしてそれは目の前に大岩が出てきた段階で驚きと共に、私達には写真撮影どころではないと思い知る。まず斉木さんが「あれ・・・?こんなだったっけ?」と言いつつ右側からよじ登った。後から確認した遡行図には大岩の両側通れるとあったが、足がかりは右側の方が良いようだった。流木が一本引っかかり、その側の石には金具が打ち込まれてシュリンゲがいくつか鐙(あぶみ)のようにつけられていた。しかし斉木さんとて最初は上手く行かず、とりあえず下りて、作戦会議。といったって、私達の無い知恵では大船(おおぶね)の斉木さんがあれこれ検討しているのを待つだけ。その数分の間に後ろから7人パーティがやってきた。皆しっかりした沢装備の若い男女だったので、先に行って貰うことにした。その間私達は飲み物を飲みながら待つ。水温はそれほど冷たくは無かったのだが、私は長袖にもかかわらず足下は濡れていたので、この時既に寒かった。彼等の乗り越える様子は見えなかったが、岩陰で待つ間、7人となると随分時間がかかるものだと思った。

 彼等が通過した後、再度挑戦。こんどはすんなりといった。夫が続き私が後から行った。慣れない私達の為に、プレッシャーをかけないよう配慮しつつ丁寧にザイルを出し、その都度アドバイスしてくれた(最初のうちは・・(^O^))リードしてくれるので心配は全くなかったが、私達の力で何処まで行けるかは全く見当もつかない。無理なら戻ればいい、そんな気持ちではあったが、戻るのもまた大変だと進むほどに分かってくるのではあった。

 前のパーティに追いついたとき、初心者らしき女性が難渋していた。強い流れで上手く乗り越えられないようだった。トップが言葉をかけながら忍耐強く待っている。他のメンバーも所在なさそうに待っている。何とも試練の場のようで、その女性が可哀想に思えた。その後も難所の度に、今にも泣きそうな表情に見えた。時間がかかるので、むしろ先に行っていた方が良かったような気がしたが、私とて初体験。それぞれのやり方を見ていると参考になることがいろいろあった。

 一方、次々と現れる滝の美しさに歓喜しつつ、ひとつひとつクリアして進む快感と、新たな挑戦に気持ちは高揚するばかり。丹沢にこんなに美しい所があったなんて!斉木さんがお薦めの沢だというのが納得。以前坂元さんが自信をもって話していたことなど頷けるのであった。今回はカメラの故障のため、沢の写真は一部、昨年の7月に坂元さんが撮影したものを借用(坂元さん、有り難うございます)。

左【小川谷風景2:沢登りの様子】
(phot by Mr.Sakamoto 2002.07.06)

 水量が多く、川底の石は苔などほとんど生えていない。とてもきれいだ。沢足袋を履いているだけで、安心感がもてるというのも不思議だが、私達の格好はけっしてカッコ良くはなかった。それに引き替え前の7人パーティ、後ろも偶然7人パーティで、どちらも絵になる遡行スタイルだ。カラフルなメットにそれぞれがいっぱい登攀具を身につけ、着るものや足ごしらえもしっかりとできている。へぇ・・ああいうのがあるんだ!とオバサンはしっかり観察(^-^)v その完璧なほどの装備に比べ、私達はあり合わせの防災用?ヘルメットに最低限の装具。でも斉木さんの奥さんから借りた沢用の手袋はとっても重宝。やはりよく考えられていると感心した。

 歩いた順番はしっかり憶えていないので、記録が前後するかもしれないが、思い出すままに・・。

 時々滝を乗り越えたりへつったり(へつる=水際の岸壁をへばりつくようにして横に進むこと)、高捲いたり(高捲き=滝や淵やガレ場などを避けて、側壁を登るなどして迂回すること)するが、その度にけっこう頭を使う。足の置き場、手の持っていくところなどどうすれば安全に体をもっていけるか、考えながらの前進は普通の山歩きにはあまりないことだ。けっして単調ではない。それだけにそういう所はぼんやりとはしていられない。トップのリードで登っては行くけれど、登るのは自分。確保してもらいつつ、この鈍い私でも、絶え間なく目と体を動かしながら考えていく。トップはもちろん斉木さん、続いて夫、最後に私だが、その足の運びなど注意して見ていた。

 それでも腰まで水に浸かったへつりで足を置く場所を捜しているとき、水の勢いに流されて胸まで浸かってしまった。「冷たぁ!」胸まで浸かるとさすがに冷たい。それまでにも水流が強いので、しぶきは思いっきりかかっていた。夫も別の場所で同様に首まで浸かり、やはり「冷たぁ!」と笑いながら叫ぶ。ザックがプカッと浮いたと楽しそうに言っていた。成功も失敗もそれぞれに面白い。

左【小川谷風景3:傾斜角50°の大岩】
(phot by Mr.Sakamoto 2002.07.06)

 大きな一枚の大岩があった。斜度50度ほどだそうで、ツルツルしている。まるで大きな滑り台のようだ。斉木さんは昔はここをザイル無しでよじ登ったりしたとか、ちょっとしたエピソードを懐かしそうに話していた。取り付けられたザイルがあったが、 やはりザイルを出してくれた。出して貰ったザイルで確保し、取り付けられたザイルを手繰りながらよじ登っていったが、その付け根を見て驚いた。全身をあずけるには何とも心許ない・・。思わずゾッとすると同時に笑い出してしまった。トップの出してくれるザイルの有り難さを知る。それにしてもトップは大変だ。

左【小川谷風景4:典型的なゴルジュ】
(phot by Mr.Sakamoto 2002.07.06)

 両脇が岩に囲まれたゴルジュ(岩壁に挟まれた谷の部分いっぱいに水が流れているものをいう)はザブザブと歩いていく。水の中を自然に歩いていくという事自体子供に返ったような楽しさだった。高捲きで斉木さんがザイルを片づけている間、夫が間違えて急流のゴルジュに下りそうになったり、どうにも岩をよじ登れなくて、お尻を押してもらったり・・・。私にしても、どうにも登れなくて、差し出してくれた手やザイルにすっかり頼ってしまったり・・と、手のかかる私達であった。しかし気がつけば、ちょっとした所では私達もいつしかそれなりの知恵をつけ、気がつけばリーダーは安心して?先へと行ってしまっていた。それでも「駄目だと思ったらドボンして下さい」と滝への落ち方を指導され、難所では必ず確保してくれていたのだ。治りかけた足の捻挫を又こじらせたくは無かったし寒かったから、ドボンは今回遠慮したが、暑くなって再び行く機会があったら是非体験してみよう (^-^;

左【小川谷風景5:三段の滝】
(phot by Mr.Sakamoto 2002.07.06)

 目の前に大きな三段の滝が現れ、それがこの沢の最後の核心部分だと言われた。素敵な滝に、目が奪われた。左側に岩場があり、前のパーティが登っていたので、またのんびりと滝や風景を眺めていた。ここは沢の美しさもさることながら、木々の緑が素晴らしい。新緑や紅葉の時期はさぞやと思われる。今までの大変な箇所のことはもうすっかり忘れて、また来たいと思った。

 一方脇の岩場では前のパーティが確保機を使っての直上で、時間がかかっていた。待っている間に次のパーティがやってきた。前の場所では夫が登るのを見ながらメンバーへの指導のつもりか「難しい方へ行ってるね、1m左なら階段状になって易しいのに」と、待っている私のすぐ後ろで言っていた。「そうですか・・」と少しそこで話したが、小川谷は三度目だと言っていた。そしてこの時もそれぞれに思うことを口にしていた。

 前のパーティが終え、私達の番になるとき「先に行きますか」と声をかけたが「順番ですからどうぞ」という返事だったので斉木さんが登っていった。今回ザイルワークの未熟な私達の為に、平易なやり方で、一人ずつ登るようにと指示されていた。従って8ミリの30mを用意してくれていた。上からザイルが投げられ夫が登っていった。すると待っている私に何故続いていかないのかと聞かれた。「一人ずつ登るように指示されているので」と答えたら、「では先に行かせてもらいます」と言うと同時に登っていった。えっ?普通こういう場合、私達の間に入る?と唖然。夫の後をスイスイと登り、見える所から早くもザイルを投げてきた。そして次の人が登っていった。「えっ?こんなのあり?」と思ってしまった。いつ私達のザイルが投げられるか分からないのに、これはマズイヨ・・・。そして残ったメンバーに「次は待って下さい、これでは上からザイルを投げられませんから、私が済んでからにして下さいね」と念を押した。ザイルが投げられるまでの時間が長く感じられた。間に次のパーティが入ってしまったため投げにくかったのだろう、投げられたザイルが届かず、そのトップの人に中継ぎして貰う状態で再度投げられ、ようやく登っていった。その人にお礼を言ってから先に進んだが、この時もこういうものなのかなと疑問に思ったのは、私の方がルールを知らないということなのだろうか?

 その先はトラバースだった。この時自分のセルフビレイもとるように言われ、側の木で確保。夫が二番手に進み終えてからセルフビレイ解除。最初の方の高捲きでセルフビレイをとるよう言われた時は滝の音で声がかき消され分からなかった。後からそうだ!すっかり忘れていた・・と反省。そして、滝の音の凄まじさに驚き、だからこういうことは事前の訓練やメンバーとの連絡が大事なのだと再認識した。

左【小川谷風景6】
(phot by Mr.Sakamoto 2002.07.06)

 これで大きな滝は終わりと言われ、もう終わってしまったの?と少しガッカリしていたら、その後もまた四段ほどの階段状の流れがあり、その先に小さな滝壺が見えた。水は透明感があり調和がとれて、とてもきれいだった。

左【広いゴーロに出てホッ!】

 最後のゴルジュ帯からゴーロ(大きな石や岩がゴロゴロところがっているところ)へ出ると広々としていた。後少しで堰堤に突き当たり、帰りの登山道へと迂回するというので、その広いゴーロの沢の側でゆっくり休憩。沢水でお湯を沸かし、パンやおにぎりを食べながら温かい飲み物を飲んだ。水がふんだんにあるというのは嬉しい。楽しかった事で話題はつきない。アッという間に1時間もたってしまった。

左【今回の終点、ここから登山道へ】

 そこから10分ほど行けば堰堤で今回の沢登りの終点だった。充分堪能した満足感で、登山道へと向かった。登山道は崩壊などあり、かなり荒れていた。この日もし雨が降ったら嫌なルートだったろう。危険な場所にはロープが張られていたが、踏み跡はいくつか分かれていた所もあったので要注意。

 下りになって、斉木さんの足は辛そうだった。互いにストックを出し、1時間のコースタイムの所を、間にも小休止を入れ、時間かけてゆっくり歩いていった。夫も膝痛が出て、私も完治していない捻挫がやや気になっていた。3人とも同じ左足で、負傷兵さながら。まったく何やってんだか(笑)

左【満足!】

 山を捲いているような登山道から林道に出て下っていくとゲートがあり、その側の駐車場が見えてくる。お疲れ様の握手は満足感で感謝の気持ちいっぱい!楽しい沢登りだった\(^o^)/