奥秩父 ;  西沢渓谷
(にしざわけいこく)

氷瀑を期待して……


 H9.3.9(日)前夜発 ; Member.計2名

西沢渓谷駐車場9:20〜西沢山荘〜二俣〜
七ツ釜五段の滝11:30-12:25〜
軌道跡〜西沢渓谷駐車場14:30


 この時期でしか見られない氷瀑が見たくて、主人と西沢渓谷に出掛けてみた。

 前日の午後4時に家を出発。調布から中央高速道に入り、勝沼インターへ。途中、温泉に寄り、西沢渓谷の村営駐車場に着いたのは8時をまわっていた。予想に反して、広い駐車場なのに車が2台くらいしか止まっていなかった。

 夜中、ミニバイクの轟音に起こされ、翌朝は早く起きれなかった。何も食べないで出掛けるつもりでいたが、簡単にあるものをつまみ、予定よりかなり遅く9時過ぎに歩き始めた。何人かはそれでも歩いている。甲武信に行くのか渓谷に行くのかその時は分からなかったが、甲武信の小屋が閉鎖されていることを思えば、軽装でこの時間にそちらへ向かうことはあり得ない。案の定皆、渓谷に向かっていく。30〜40分ほど歩き、三重の滝というところで居合わせた人のアドバイスにより、早めにアイゼンを装着。主人は6爪、私は軽アイゼンをつけた。

 アイゼンをつけた安心感は絶大。お天気は良かったが遊歩道はアイスバーンで固くおおわれていた。何人かの人は藁を靴に巻いていた。昔は皆こうして凍った路面を歩いていたのだろうか。今は便利なものが出来たものだと思う。

 途中滝が凍りついて氷壁になっていた。それなりに見事だったが、期待していたものとはちょっと違う。五段の滝はさぞやと胸を高鳴らせ、少しづつ緩やかな傾斜を登って行った。もうすぐ七ツ釜五段の滝と思われる頃には前後に歩いていた人たちが、ほとんど後ろの方になってしまった。若い男性一人だけが前を歩いている。

 ようやく目的の七ツ釜五段の滝へ着いた時、がっかりしてしまった。一昨年の五月に来たときと同じ、満々と水を湛え、涼やかに流れているではないか。どこも凍ってはいない。失望の色を隠せない私達…。

 とにかく食事にしようと滝の上流に向かった。すると通行止めの表示。前の男性同様乗り越えて行った。この先不安なところがあるとは思えず、とにかく行けるところまで行ってみようと暗黙の内に足は自然と進んでいた。私達が滝の上流の河原で食事をしようと登山道を外れおりていくと、先客に十人位のグループがあった。先行していた男性は、そのまま先へ行ったようだった。

 風が冷たくて少し寒かったが、ホットココアで体を温めながら、クロワッサンにレタスやキュウリ、ハム、チーズをはさみ、川の水音を聴きながら食べた。まだ緑が隠れている今の、この風景も好きだなあと思いながら堪能。

 1時間近く休んで先へすすんだ。昔はトロッコでも通っていたのだろう、名残の軌道跡まであと少し登れば一応ピークだ。バス停までは約5キロとある。足跡の様子ではさっきの団体さんは通っていないようだ。おそらく同じ道を下山したのだろう。

 あとは主に下りだと高をくくっていたら、雪が山の斜面に沿って何カ所も流れ落ちていて、遊歩道をさえぎっていた。通行止めとはこういうことかと思いつつ、注意して通過していった。

 もう大丈夫だろうとアイゼンをいったん外したが、主人が転びはしなかったが、ツルッツルと滑るので再び装着。やはり、安心感が違う。が、いくつか鉄の橋があり、下がメッシュのような作りなので、そこを歩くときだけは歩きにくかった。

 もう大丈夫と思いやっとアイゼンを外した時は気分も軽く、落ちた話に笑いが飛んだ。

 駐車場近くの西沢小屋に着き、ひと休みして外に出ると救急車にパトカーがいた。車に乗って帰る途中、更に救急車やパトカーとすれ違った。渓谷で怪我人でも出たのだろうか。心配しながら私達は笛吹の湯に浸かって帰路についた。

”アイゼンに頼りて歩む渓谷にやわらかき陽の未だ届かず”
”氷瀑を見んと訪れし谷なれど平成の世に険しさはなく”
”危険区に足踏み入れて静かなり谷底見つつ互いを見やる”
”少しずつ雪脱ぎ捨てて甲武信岳また登る日のあればと眺む”