富士周辺; 御正体山
(みしょうたいさん)
残雪の山を楽しむ。

 H6年4月4日(月)当日発 ;
 Member.計4名

 【コース】(=は乗り物、〜は歩き)
立川駅5:54=高尾6:15発=大月駅6:54発=都留市駅7:10着=(タクシー)=細野三輪神社(630m)7:30〜仏ヶ沢(750m)〜峰宮跡(1570m)〜御正体山山頂(1681.6m)11:20-12:05〜前ノ岳(1471m)12:55〜中ノ岳(1411m)13:20-25〜奥ノ岳(1360m)13:55-14:00〜石割山分岐(1320m)14:15〜山伏峠(1150m)〜山中湖高原ホテル(休業中)14:45-55〜平野(990m)15:40着15:50発=富士吉田駅16:44発=大月駅17:34発=高尾駅18:10

 富士の側にすっくと佇んで、最近登っている中央線沿いの山々からいつも目立っている山だった。つい、三ツ峠の方に目が行きがちだが、その一歩退いたような、それでいてその存在を忘れさせない、どことなく魅力を感じる山だ。名前も神秘的でいい。

 たまたま前日その山の林道にツーリングででかけた主人から雪が深いと知らされ、アイゼンは必携と、早速皆に連絡する。果たして山道はどれほどだろうかと思いつつ11時半就寝。前回のように寝坊で遅刻しないようにとそれが頭から離れなかった為寝付きが悪く、眠りも浅かった。いつもより早い出発だったが幸い無事起床できて、4時半過ぎに家を出る。体調は良い。この日に合わせてこの二三日はなるべく外出しないようにしていたのが効を奏したようだ。

 中央本線上で次々乗り合わせ、今日のコースを打ち合わせたり、今月のプランを相談する。広がる青空に今日の登山への期待も広がっていく。

 都留市駅に降り立つと予約したタクシーが既に待機していた。小用を済ませて乗り込み細野の三輪神社へと向かってもらった。どれが御正体山と見定める間もなく真っ白い富士山に気をとられているうちに、目的地に着いてしまった。案内書に従って神社の階段を上がり鳥居を潜って行ったが道は切れている。しかし辺り一帯カタクリ、イチリンソウ(キンポウゲ科)でいっぱいだった。花が咲いていなかったが、せめてここでこのような大群落が見られて良かった。なぜならこの先、山でわずかにイワウチワの群落(もち論花はまだない)が見られたものの、春の草花はほとんど見られなかったから。

 再び元に戻って登り直す。道幅の広い林道がしばらく続く。歩けば初めて聞くヤマセミの声。ホオジロ、ミソサザイ、ウグイスも鳴いている。でも私にはホオジロとミソサザイの区別がまだできない。仏ケ沢らしき所を通りすぎるとアカマツの林が続く。ウリハダカエデが時折混じって、沢伝いに登って行くとキツツキの木を叩く音が響いてくる。足元に初めてのフモトシバ。

 斜度がどんどんきつくなって雪も徐々に現われてくる。歩きにくさが増してくるに従い樹林はアカマツからカラマツへ、そしてブナ林へと変わっていった。アブラチャン、ダンコウバイの小さな黄緑の花に目を細めながらこの木は何だろう、あの木は何だろうと、まだ芽の固い木々を詮索する。しかし登りが急な上に予想以上の雪で、それぞれ悪戦苦闘。これではこのコースを選んだ私は完全に皆に恨まれるナと覚悟した。そんな気持ちとは裏腹に耳には涼やかな野鳥のさえずりが聞こえてくる。ヒガラ、コガラ、シジューカラ、ウソ、カケスと。息を整えながら、そして耳をそばだてながら登っていく。それでも時には聞き分ける気持ちが薄れるほど雪中の足運びに気をとられることもあった。

 何度か小休憩して必死に登り、取り敢えず急登の一区切りつく峰宮跡で食事にしようと思っていた。ところが表示もなく、白く輝く富士山に気をとられているうちに頂上に到着してしまった。プランに余裕を持たせてあったせいもあったがこの山の少し遅れた春のおかげで花が殆ど見られなかったこと、思わぬ雪の量に予定をはるかに超えて時間をくうだろうという予感が私たちの気を抜かせなかったことが、予定を早回る時間に着いた理由だろう。更に昼食時間を40分に短縮して1時間の貯金までできた。山頂は木々に囲まれて展望は望まれなかった。風もなくぽかぽかした陽だまりの中、上着を羽織ることもなくのんびり食事。

 下りは古木のぶな林の中を気持ちよく歩く。ここでは思いがけなくヒメシャラにも出会った。あまりの清々しさに写真を写すがここで油断をして時間を浪費してはいけないと思い直して一路下山につく。此処でもヒガラ、コガラ、そしてゴジュウカラのさえずりが耳を楽しませてくれる。三つの山を乗り越えながら右手西方面、富士山の手前に杓子山、鹿留山、石割山と順々に眺めていく。その間先生が楽しみにしていたハリモミにも巡り会った。予定の時間より早かったものの石割山コースは断念。平地での早いペースのお陰でプラン上にも載せなかった早い時間で帰宅することができたのは驚きだった。ワインとブヨに刺された左目の脇の真っ赤なこぶがお土産。今回24000歩。

     “足下に求め歩みし山なれど見る山並みに心うつろふ”

     “残雪や上げる一歩に啼く鳥の弾みを受くる御正体山”