H5年7月9日(金)当日発 ;
Member.単独
【コース】(=は乗り物、〜は歩き) 立川5:25=塩山6:54-7:30発=乾徳山登山口、徳和(830m)8:10〜登山口8:40〜
銀晶水(1200m)9:07〜錦晶水(1530m)10:05-10〜国師ヶ原高原ヒュッテ(1570m)10:30〜扇平11:13〜乾徳山山頂(2016m)12:20-45〜水ノタル(行きすぎて40分ロス)〜国師ヶ原高原ヒュッテ(1570m)14:40-50〜錦晶水(1530m)15:00〜駒止15:15〜林道15:27〜徳和(830m)16:00=馬込16:14=(バス)=塩山駅16:40-50=高尾駅18:10-17=立川駅18:40発
風薫る五月に登りたいと思っていた山だった。時間がかかるということでこのプランはなかなか実現しなかったため、一人でもいつか行きたいと頭の片隅に残していた。梅雨でなかなか思うに任せず、この日ようやく行く事が出来たが、終始ガスにおおわれたままだったのは残念だった。
乾徳山行きの一番のバスに間に合わせるため家を4時25分出発。いつもより1時間以上早かった。既に辺りは明るく、駅に向かってもそう苦にならない。ガラガラの電車を一両貸切で、ゆっくり昨夜の寝不足を補う。中央線もワンボックス貸切。ウトウトしながらそれでも塩山に着くまでに軽く朝食のパンを食べ、主人が買ってきてくれた高度計付きの時計の使い方を読み、長い車中一人でも飽きずに過ごして行った。なんと贅沢な時間なんだろう。
乾徳山登山口バス停で降りたのは私一人。運転手さんに「(天気が)生憎でしたね、気をつけて」と声をかけられたときは一瞬心細かったが頭を下げて、気をとり直してガスに包まれた乾徳山に向かった。歩けば不安は全く無い。次々と現われる花々、思ったより緩やかなスロ−プ、これならやっぱり仲間を誘えば良かったと、前日行くと決めたときからずっと迷った結果、やめたのだった。私一人では花の名前も心許ないが、それでもオダマキ、ヒメウツギ、サワギク、フタリシズカ、コアジサイ、ノアザミ等などお馴染みの花が続く。
オダマキを見つけた時は「あぁ、山に登り始めてからもう一年たったんだ・・」と感慨も一入だったし、フタリシズカがこの時期にまだこんなに群生していると知った時、「またまたこんにちわ!」と再び親しい知己に遭遇したような、妙に嬉しい気持ちだった。モミジイチゴをビデオで撮っていた時、「どうぞ召し上がれ」とばかりにポロンと私の手の中に落ちてきたり、高尾山で先生に教えて戴いたコクサギの枝を偶然足元にみつけたり・・・だから一人で歩いていてもちっとも寂しくなかった。
コアジサイがとっても素敵だった。しっとりと水気を含んで、霞んだバックに浮かび上がってキラキラと輝いていた。
国師ケ原の辺りでは一面アヤメが咲いていて、それはもう素晴らしかった。乾徳山でこんなに見事なアヤメの群落を見るとは思いもしなかった。もっと人工的な場所でしか見られないと思っていたのは私の無知ゆえの偏見だった。アヤメの周りにはヤマオダマキ、ウマノアシガタ、ヤマツツジ(もう終わりかかっていた)、ハコネウツギが咲いていてまるでお花畑のようだった。
これより、まだ花の咲いていないマイヅルソウ、リョウブの木、サラサドウダンなど楽しめたのだが既に高度は1800mを超え、ききしに勝る苦難の道が待っていた。岩また岩、鎖場はまさに圧巻。これほどのロッククライミングを強要されるとは思わなかった。「これのどこが一般コ−スだぁ−」と心の中で叫びつつ、頼る人とていない我が身を自ら奮い立たせて必死によじ登っていった。この孤独な挑戦に安らぎの気持ちを与えてくれたのは、初めて見るヨウラクツツジやベニドウダンの可愛く風に揺れている姿だった。標高1945mを過ぎ、山頂まであと一息というのに、この絶壁のような岩肌はちっとも私の緊張の糸を緩めてはくれなかった。相変わらず寡黙にたちふさがる。
やっと2016mの山頂に立った時、思わずまだ騙されているのではないかとその先を見やった。まさしく山頂と確認した時はほっとしたが、この岩(鎖場こそ無かったが)、尾瀬の至仏山を思い出していた。これでも360度展望可能というその視界が楽しめたらどんなにかこの苦しさも慰められたかもしれない。残念ながらそれは望めなかった。昼食もそこそこに帰路についたが同じ鎖場を下りる気にはなれず、別ル−トから下山。
ところがここで私の勘違いから道を間違えてしまい、曲がらずに通り過ぎてしまった。気がついて戻るまでに40分のロスをしてしまったが、お陰で今迄葉っぱだけだったマイヅルソウの花を見ることが出来た。その上ワチガイソウ、ゴゼンタチバナ、の花まで見る事が出来、ラッキ−だった。黒金山方面へ五分の三程進んでしまったのだが余裕があってそのまま進んだらもっといろいろ出会えたかもしれない。
そういう訳で下山は急いだ。怪我をしないように気を付けながら。それでも途中、美しく咲くヤマツツジを見た時は思わず足を止めてしまった。その辺りは靄がかかってもほんのり明るく、神秘的だった。
再び国師ケ原の近くまで来るとシラカバが美しかった。ここで少し休憩して、後は一目散に同じ道を下山。結局行きも帰りもコ−スを変えてしまった。帰りは時間が足りなくなっていたことと、とにかく喉が乾いて錦晶水・銀晶水の水が魅力だったことが、一度歩いて慣れた道を選ばせた。
それでも所要時間を短縮することは出来ず、バス停には4時着。次の時間まで二時間以上待つことになる。とにかく別ル−トの通るバス停迄行かねばと、とにかく歩きだした。タクシ−など通る筈もなく、運よく通った車に乗せてもらってバスの時間に間に合った時にはほっとした。
かくて乾徳紀行は無事シャンシャン。今回は31,000歩。帰宅pm7時半過ぎ。
|