南ア周辺; 日向山
(ひなたやま)

歩き納めは甲斐駒を眺めて


 H9.12/29(月)前夜発 ; Member.計2名

矢立石8:50〜日向山頂10:15〜雁ヶ原10:20-13:40〜矢立石12:40

 いつもながら暮れは忙しい。それでも必ず夫が予定をあけてくれる。ただ不満はジュニア!なんで連れていくの?と飼い犬ながら犬嫌いの私は夫に噛みつく。私が嫌がっているのに頑固者の夫は黙ったまま黙々と準備をすすめる。いつもこうだ。あ〜ぁ。

 ジュニアはトランクに入れられた。なんて残酷な!ジュニアはどう思っているか知らないが、きっと迷惑だよと夫に訴える。無言…却下だ。あ〜ぁ。

 夫が運転、私が助手席に座って出発。エッ??なに、なに?なんでこんなに静かで優しい運転なの?いつも荷物としか思われていない私だけの乗車の時とは随分違うじゃない。ジュニアは何様だ?あ〜ぁ。

 それでも中央道にのれば私の心はたちまち幸せ気分。山に目が行く。白い富士が見えてもうもう満足。天気は上々だし、いつもより雪が少ない南アルプスの山並みはいやがおうにも私の気持ちを奮い立たせてくれる。今までに登った山がぐーんと迫ってくる。高速をおり、日向山へと向かうがあれあれ、どんどん高度を上げてしまっている。私はこんな所絶対運転したくないと思う細い道が、いつまでも上へ上へと続いていく。このまま山頂についてしまうのではないか?と、ついジョークが出てしまう。そして車が一台、また一台と見えてゲート。行き止まりだ。車を止めて下車。あーと伸びをして、支度をすべくトランクを開けると、ジュニアだ〜。あ〜ぁ。

 ジュニアは予想に反して元気だった。車を降りて紐無しの彼は自由に散策している。この時ばかりは嬉しそうだなと思った。

 身支度をしてゲートをくぐり、登山口に向かうとそこには数台の車が置けるスペースがあった。

 感心というか迷惑というか、ジュニアは私達の前後を行き、遠くへ離れることもせず、いちいち確認しながら進んでいる。それでも自由に動ける歓喜を彼は尻尾にこめて表している。

 天気は良く、気温も温かい。日は射し込み登りの展望はあまりないものの、カラマツの落ち葉を踏みながらの山道はとても気持ちがよい。ここもまた、新緑と紅葉の時期は素晴らしいだろう。山道はときどき雪で凍っていたが、アイゼンを使うほどではなかった。

 山頂の三角点を確認したもののそこは全く視界がきかず狭くて寂しい。すぐ通過して5分ほど先に行けば雁ヶ原(ガンガワラ)だ。きれいな雪原が目の前に現れて先ず感激。一歩一歩足を踏み入れてみると八ヶ岳が見渡せ、振り返ると甲斐駒がそびえている。♪犬は喜び庭駆け回り♪私達も喜んでシャッターをきる。

 かけずりまわって今にも落ちそうな斜面をよじ登ってくるジュニアを見て「落ちたって知らないよ」「ザイル持ってきてないからね」「自分で登っておいで」と無責任な声を掛けながら、見晴らしの良いその広場でお昼の支度。無事危機を乗り越えた彼はそのまわりで匂いを嗅ぎまわりうるさい。食料に鼻が伸びたとき、鍋を持った私の手が飛んだ。ひるんだ彼は夫の影に身をひそめた。賢明だ。

 風があったら、とてもそこにはいられなかっただろう。下には雪があったものの、背中は陽があたってぽかぽかと暖かい。風も全くなくて昼寝が出来そうな位だ。空気はひんやりと冷たいが、澄んで美味しい。展望は良いし、そこにいつまでもいたい程だった。11月に夫と登った甲斐駒は端然とそこにあり、あの寒い日に急登した岩だらけの山頂直下を思い出しながら眺めるのはなんとも心地よかった。

 居心地の良さからその場を離れるのはとても残念だったが、夫に促されて下山にかかる。滝を見ながらぐるりとまわるコースもあったが、林道の距離が長すぎるので、登りと同じ山道を下る。その方が気持ちよい。

 下りは早い。はしゃぎすぎたジュニアはビッコをひいている。筋肉痛か?膝が笑っているのか?

 車に戻ってジュニアは再びトランクへ。ちょっと開けてある隙間から自分の歩いた山に名残を惜しんでいるか?いや、きっと疲れはてて眠り込んでいたかも知れない。今回温泉はパスして一路川崎へ。

”雪山に姿を変えて甲斐駒のその厳しさは美しくあり”
”太陽と冷気交じりし落葉松の林は高く空に伸びおり”
”年の瀬に日向山来て霜月に登りし山を近くに眺めつ”