越後三山;八海山〜中の岳〜駒ヶ岳
(はっかいさん〜なかのだけ〜こまがたけ)

三日間好天に恵まれ最高!しかし久しぶりに厳しい山歩きを体験。
反省と感謝と感慨しきり。おおいに勉強させられた。


 H10年9月12日(土)〜14日(月)前夜発
   Member.2人(夫婦)

【「荒沢岳と日の出」】右
  中の岳より(9/14)



 9月12日(土) 天気;晴
  5:55 八海山神社里宮(大倉口)…
      天気は良好、意気揚々と出発。
  (40分)
  6:35-45 万代松…
        ツリフネソウ、キツリフネがきれい。
  (40分)
  7:25-45 縁結岩…
        八海山神社の駐車場に置いた我が家の車が見える。
  (1時間35分)
  9:20-45 四合半出合…ゴンドラに乗ってきた人と出合で合流。
  (40分)
  10:25-30 女人堂…新しい小屋できれい。無人小屋。
  (5分)
  10:35-45 水場…ここで水を補給。
         しかし予想外の暑さに、二人で4Lでは少なかった。
  (1時間)
  11:45 薬師岳…ピークというよりは通り道にあるといった感じ。
         小屋がすぐ下に見える。
  (10分)
  11:55-13:10 千本桧小屋…ビール700円、ウーロン茶480円。宿泊は?
  (55分)
  14:05-15 大日岳1775m…17mの鎖場をよじ登る。
             上から下を覗き込むと足がすくむ。
  (45分)
  15:00 丸ケ岳…入道岳かと思ったら山頂には丸ケ岳と表示、何故?
  (40分)
  15:40 五竜岳(テント泊)…山頂に、二人用のテントで一張りなら
              丁度よい場所あり。

 今回も又、失敗あり、人の情けに感謝あり、色々と反省することが多かった。収穫も多く、充実感溢れる山行だった。仕事と来客多く、出発が遅れた為駐車場に着いたのは夜中の1時過ぎ。早めに出るのは無理と思い5時起床とした。起きて見れば広い駐車場(50台以上はおける)に車は我が家の一台だけ。

 神社に御参りして登り出せば、登山道はしっかりついている。が、四合半出合までは我ら二人だけ。殆どの人はゴンドラから登るのだろう。やはり、四合半出合からは人が多くなった。デイパックの人が多い。登山道に花は少なくなったがそれでもツリフネソウ、キツリフネ、ジンジソウ、リンドウ、アキノキリンソウが目を楽しませてくれる。

 天気が良くて幸いだったが、予想外に暑く、すぐ水分が欲しくなる。まだ新しい女人堂を過ぎると間もなく水場だ。2Lずつ、二人で4L満タンにする。他に牛乳2パックとテルモスに350mlあるからこれで十分と思っていたがこれが甘かった。残量を気にせず暑さの為テン場に着く迄に二人で2L飲んでしまったのだ。その上、千本桧小屋でビール2缶調達している。

 八海山は鎖場が多いと聞いていたが、今回は縦走という長丁場の為、日の池月の池から登ろうと思っていた。しかしその分岐に人がたくさんいて、ついうっかり通過してしまった。大日岳には戻って登ってきたが、その鎖場を見た時は驚いた。自分で実際登ってみるとそれほどでもなかったが、人が登り下りしているのを見たり、上から下を覗き込んだりした時の方が恐かった。済んでしまえば面白かったと思ってしまうのだから、喉元過ぎれば何とやらである。

 地図上の入道岳が無く、丸ケ岳になっていたのは不思議だ。丸ケ岳を下る途中で逆コースから来る単独行の男性と出会う。暑さでやはりペースがだいぶ落ちたという。互いに情報交換して別れ、五竜岳へ。少し下った五竜の池をテン場と想定していたが、山頂で一張り丁度良い場所があった。夕飯はうな丼と、海草サラダ、吸い物。水はこの段階で残量を意識。無駄無く使う努力をする。



 9月13日(日) 天気;晴
  5:55 五竜岳…朝露がいっぱいおりていた。
        笹の根等、足下が滑りやすい。
  (1時間20分)
  7:15 荒山…休憩時、反対側から来た人に水場の状況を聞く。
       水1L戴く。
  (?分)
  ? オカメノゾキ…この辺りかなと思いつつ、表示がない為確定できず。
  (?)
  ? 出雲先…ピークがいくつもあり不明。
       高度計を持って行かなかったのは失敗。
  (?)
  12:40-45 御月山…やっとはっきりした標識を見る。
          水場のメドがつく。
  (5分)
  12:50-14:30 祓川、水場…駒ヶ岳迄の予定を変更し
             中の岳泊と決めゆっくりする。
  (1時間20分)
  15:50 中の岳避難小屋…既に10人程の人。
            我らは2Fへ荷物を置き、山頂へ。
  (5分)
  ? 中の岳山頂2085.2m…狭いが展望は良好。気持ち良い。
  (5分)
  ? 中の岳避難小屋(泊)…夕食は外で八海山や駒ヶ岳を眺めながら。最高。

 4時半起床。出発は6時位になってしまった。テント泊はやはり時間がかかる。天気は良さそうで安心。まだ体が起きていない感じだ。準備体操を簡単にして出発したが、朝露がいっぱい降りていて笹の根などで足が滑る。そして下りはザレていてとても歩きにくい。斜めっている場所で私が足を滑らせてしまった。2m程滑落。夫の後ろを歩いていた私は思わず「お父さん」と叫んでいた。丁度夫が後ろを振り向いた時らしい。互いにヤバいと思った刹那私の体は右へと揺らぎ、それはスローモーションの様だったという。傾斜のきつい所だったが幸い潅木が多く、とっさにしっかりした枝を掴んでいた。ザック脇の空のボトルと帽子は外れ、偶然私の手許に。見上げた時には夫がザックを背負ったまま私の方に手を伸ばしていた。そして私の背中のザックを掴んだ。互いに20キロ近い荷物だ。私の足下は笹が有るようで、向きを変えようにも滑って思うようになおらない。しかし体は維持できるようなのでひとまず夫に手許の帽子と水筒を渡し、先にザックを下ろしてくるように言った。その間にどうにか登りやすいように向きを変え、すぐ戻ってきた夫にザックの上の方を摘まみ上げてもらうような形で登山道によじ登った。まるで首根っこを掴まれた猫のような格好だ。やれやれ、不覚だった。寝ぼけ眼で、体がまだ目覚めていなかったのだろうか。その後は全身に緊張感が蘇る。

 「『お父さん』と呼ばれたから良いけど別の人の名前を呼んでいたらどうしようかと思っちゃったよ」と笑いながら冗談を言う夫。頼りにしてるよお父さんと思いつつ、体力を使い切ったのか、精神的なダメージが大きかったのか、私はさすがに疲労感は隠せない。これから要注意の登山道(地図上の点線部分)が出てくるというのに、既に全神経を使っている。歩きにくいザレた道、枝払いをしてあるがうっかり枝を掴もうものなら切り取られた枝がすぽっと抜けてくる。アップダウンが多く、注意深く歩く上に、日がどんどん高くなって暑くなってくる。水の残量を気にしつつ歩く私達に遠慮無く咽の乾きが襲う。ペースが落ちるが、沢筋の風の吹き上げてくる涼しい場所で休みながら歩いて行った。

 荒山を過ぎた辺りで休んでいると、中の岳方面から男性が二人やってきた。先頭の男性は草鞋をはいて、いかにも山慣れた感じだ。8月にこの辺りの枝払いをした事など話し、先の状況など説明してくれた。こちらの水が少ないのを察して、手持ちの水を分けてくれた。山で貴重な水が貰えるなんて…すごい驚きだった。しかも1Lだ。同行者も持っているから構わないと言う。祓沢で汲んできた、まだ冷たい手付かずの水だった。祓沢からここまでかなり距離があるのに全く飲んでいないようだった。私達にとってどれだけ助かったか、まるで神様だと思える程感謝感激だった。この時、地図には載っていない駒の小屋下にも水場があるのを教えてもらった。

 途中、千本桧小屋からきた単独行の男性と、年輩の3人のパーティが追い付いてきた。前後しながら行く事になるが、後者の体力とバイタリティーにはこの先ずっと驚かされた。

 中の岳を目指すものの手前のいくつものピークに目標は遮られ、暑い程の天気にも関わらずガスで駒のピークもハッキリ見えなかった。行く手は痩せ尾根と鎖場とヤブコギ。全く試練の山行だ。しかしやればできるもの。やっと御月山に着いた時はほっと一安心。眼前にすっきりと中の岳が姿を現した。水場へは後一息。やっと元気が出て、一気に下る。水の何と冷たく美味しかった事か。この日は駒ヶ岳迄行く予定だったが、中の岳避難小屋泊に変更。この水場でゆっくりする事にした。

 中の岳までゆっくり登り、小屋に荷物を置いてから山頂へ。歩いて5分の山頂は狭かったが素晴らしい展望。昨日の八海山、明日行く駒ヶ岳、そして周りに広がる山並を眺め、次に登る山を見つける。あんなに苦しい思いをして登ってきたのに懲りない私。

 小屋の外で夕食の支度。メニューはちらし寿司、味噌汁、ハンバーグ。食事はしっかり食べる。明朝用にオレンジゼリーとお茶を作って、6時過ぎには眠りにつく。



 9月14日(月) 天気;晴
  5:15 中の岳避難小屋…少し明るくなってから出発。
           途中日の出を眺める。
  (2時間45分)
  8:00 天狗平…ザレ場と笹のヤブコギと檜廊下の絡み合った根を
        通過してようやく着く。
  (1時間25分)
  9:25 分岐…昼食用の荷物だけ持って後は置いて行く。
  (20分)
  9:45-50 駒ヶ岳山頂 2002.7m…猛烈な残暑で思いのほか時間がかかった。
                好展望。
  (10分)
  10:00-11:00 駒の小屋水場(昼食)…水場は小屋から2分下ると有る。
                  美味しい。
  (35分)
  11:35-50 分岐…デポしておいた荷物をまとめ、下りにかかる。
  (30分)
  12:20 グシガハナ山頂…歩いたコースの見納め。
            八海山を正面に見ながら一気に下る。
  (1時間40分)
  14:00 力水…矢印方向に行けば水場があったかどうか?
  (1時間10分)
  15:10-25 雪見の松…ますます傾斜がきつい。足どりは重い。
  (30分)
  15:55 十二平…ようやく沢筋に着。
  (沢にて時間を潰し、工事の人の車で駐車場まで送ってもらう)
  17:25 八海山神社里宮…十二平から歩けば2時間以上の道程だった。

 夜中何度か目を覚ます。4時、誰かの時計が鳴る音で小屋に寝ていた人は皆起きる。ゼリーとお茶と、ココアで明るくなるのを待って出発。途中気持ちの良いご来光を仰ぐ。昨日はガスっていて見えなかったのだ。中の岳の下りはガレ場と笹薮だった。足もとに道はしっかりついているが、見えないのでちょっと大変。

 やがて檜廊下、木の根が絡み合って歩きづらいが樹林の中は涼しい。夏は高山植物が沢山咲きそうだ。このコースなら又歩いてみたいなと思う。稜線に出れば日差しは強く暑いが、昨日とうって代わって周りの景色が見渡せる。時折吹く沢風が心地よい。昨日歩いたコースを眺める。あの痩せ尾根の稜線を良く歩いたと感慨深い。

 駒ヶ岳はすぐ目前と思っていたら、ここもまたいくつかの小さいピークを越えていく。思ったより時間がかかったが、グシガハナとの分岐に荷物をデポし、昼食分と水だけをもって駒ヶ岳 山頂へ。展望は良い。ここ迄来ると人が多い。駒の小屋迄はいくらか下り、登り返しが思い遣られたが、水場にだけは寄っておきたかった。人間は学習するものである。

 真夏のような暑さの中、水場で食べたカレーうどんはミスマッチだったが食欲はそそられ美味しかった。水場で冷やして食べた生のキュウリはこれまた美味しかった。水を4Lも補給して、後は下りだけなのにと小屋の若い管理人に笑われてしまったが、我々の水への執念は凄まじい。ここで大倉口へ下る急坂は三大急登だとおどされる。しかしこれは決して脅しでは無かった。私達が4Lもの水を補給したのも間違いでは無かった。

 グシガハナ山頂で今回の行程を見納めし、そこから一気に下り始めた。八海山を前方に見ながらその下りは聞きしに勝る急降下だった。1時間毎に休憩する度、気持ち良いくらいに水を飲む。下る程に急になると言われた通り、いっこうになだらかな道にはならない。足が疲れ、やや登りの所にくると嬉しく思ったものだ。こんな経験も初めてだった。

 ようやく林道に着いた頃、沢登りの若い男性が二人下ってきた。誰もいないと思っていたのでとても驚いた。暑さと疲れでグシガハナから3時間半かかったが、彼等は1時間で駆け下りて来ると言う。沢で休んでいる時少し話したが、とてもきさくな青年だった。私達も今度沢をやってみようかと夫と話し、その涼し気な歩きを羨んだ。

 ちょうど工事をしていたので軽トラックの荷台(荷台は初めてで嬉しかった)に乗せてもらい、無事八海山神社の駐車場に到着。歩けば2時間以上の林道歩きだったから、有り難い事このうえなかった。今回は人に助けられ、暑かったが天気に恵まれ、滑落したにも関わらず怪我ひとつ無く、無事に素晴らしい山行を楽しむ事が出来た。幸せであった。


反省1 ザックは出来るだけ軽くし、小屋泊まりにした方が良かったかもしれない。私達は何処でも泊まれる気安さを選んだ訳だが。

反省2 小屋泊でも自炊なので、水は充分持つ。

荷物はどこまで必要かは結果論だが、使わなくて幸いだったと思える品が多いのは確かだ。荷物の分担も、再考の余地あり。

この山域には熊が多いそうだが、今回であわなくて幸いだった。

“先に待つ難所の前に滑落の試練を受けし朝露の道”