北海道;大雪山縦走
(標高はコース内に記録)
   北海道、花三昧と自然の雄大さを満喫!
  ( 8/6-12:大雪山縦走 & 8/14:羊蹄山 )

 H12年8月6-12日(日-土)前日発
  天気;下記 :
  Member.2人(夫婦)

【トムラウシ山、北沼より】右

 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

6日(日)一日目 曇りのち時々小雨
上富良野駅駐車場5:20=(タクシー)=原始ヶ原登山口(720m)5:55-6:15〜天使の泉7:00〜広原の滝7:20〜原始ヶ原7:58〜富良野岳(1912.2m)12:15-13:00〜十勝岳温泉分岐13:20〜三峰山(1866m)14:45〜上富良野岳(1893m)〜上ホロカメットク山(1920m)15:50〜上ホロ避難小屋16:00(小屋泊)
(所要時間約9時間45分・・休憩含む)

7日(月)二日目 晴のち曇り
上ホロ避難小屋5:25〜十勝岳(2077m)6:28-45〜美瑛岳(2052.3m)9:00-10〜美瑛富士分岐(1716m)10:05-10〜美瑛富士(1888m)10:30-37〜美瑛富士分岐10:50-55〜石垣山分岐11:55-12:25(この間に山頂ピストン、山頂1822mまで約5分)〜ベベツ岳(1860m)12:55〜オプタテシケ山(2012.7m)〜双子池1404m16:30(幕営)
(所要時間約11時間5分・・休憩含む)

8日(火)三日目 雨のち晴
双子池(1404m)5:50〜コスマヌプリ8:40〜ツリガネ山〜途中ビバーグ12:25(幕営)
(所要時間約6時間35分・・休憩含む)

9日(水)四日目 快晴
ビバーグ地点4:30〜1507m4:40〜三川台5:25-40〜南沼テン場7:50〜トムラウシ山(2141.0m)8:20-9:15〜1995m10:10-20〜天沼11:15〜ヒサゴ沼分岐〜化雲岳(1954.3m)12:45-13:10〜五色岳(1868m)14:25〜小屋分岐15:05〜忠別岳石室15:20(小屋泊)
(所要時間約10時間50分・・休憩含む)

10日(木)五日目 晴のち曇り
忠別岳石室4:45〜分岐5:05〜忠別岳(1962.6m)6:20-45〜忠別沼7:25〜大雪高原温泉分岐9:10-20〜白雲岳避難小屋10:25-11:55(テント設営)〜白雲岳(2229.5m)12:45-55〜赤岳(2078.0m)13:50-14:00〜小泉岳(2158m)14:25〜緑岳(2019.5m)15:00〜白雲岳避難小屋テン場15:35(幕営)
(所要時間約10時間50分・・休憩含む)

11日(金)六日目 雨&強風
荒天のため白雲岳避難小屋テン場停滞(幕営)

12日(土)七日目 曇り&強風のち晴
白雲岳避難小屋テン場4:30〜北海岳(2149m)5:45-6:10〜松田岳(2136m)〜(途中ハイマツの陰で風を避けること30分ほど)〜荒井岳〜間宮岳分岐8:25〜旭岳(2290.3m)9:35-50〜間宮岳分岐10:40〜間宮岳(2185m)10:45〜姿見分岐11:00-15〜中岳(2113m)11:30〜北鎮岳分岐11:45〜北鎮岳12:00-05〜北鎮岳分岐12:15-30〜黒岳石室13:25-40〜黒岳14:00-20〜黒岳七合目リフト乗り場15:05
(所要時間約10時間35分・・休憩含む)

七合目よりリフト、ロープウエーを乗り継いで層雲峡へ下山(宿泊)


 山中五泊六日の予定で計画。それでも今までの中で一番長い縦走期間だった。非常食、予備食を含め水も二人合わせて約10リットル持ったためザックの重量は各24キロ前後。エアリアの地図に加え、地形図は9枚にもなった。曇りあり、雨あり、晴天あり、強風あり、と大雪山の様々な天候と自然の中で、ビバークや停滞も体験し、結局6泊7日。予定より一日多い一週間の長期縦走となり、夫婦ふたりの最長記録となった。 コース、日程、天候が混雑を避けたものか人は少なく、割合静かな山行だった。

 花は終わっているところもあったが、咲いているところも多く残っており、それは素晴らしい花園だった。ガスっていても合間に展望は望めたし、最終日に強風と雨で停滞したものの、それはそれで北海道の厳しい自然の一端を垣間みることができた。快晴の日の大雪山は申し分なく私達の期待に応えてくれた。その伸びやかな雄大さに何回歓声をあげ、溜息をついたかしれない。動物は熊やキタキツネ、ナキウサギに出会うこともなく(熊の糞を見たり、樹林に動物の動いているような気配は感じたが)、シマリスとはあちらこちらでお目にかかった。


【一日目:6日】

 上富良野駅の駐車場に車を置いて(事前に駅に電話で確認済み)、タクシー(\5150、35分)にて原始ヶ原登山口より入山。早朝5時半にタクシーを予約したが、20分頃には来てくれた。車窓から富良野岳、前富良野岳が見える。登山口までの林道は狭いながら整備され、登山口には管理小屋があった。少し雨がパラついたため様子を見ながら合羽を着たり脱いだりして少々タイムロス。しかし張り出した木の枝の朝露や前夜の雨でたちまち濡れてしまうので、合羽は着た方が良かった。登山ノートに記帳し出発。

 登山道のルートははっきりしているが、木や草がうるさいくらい前をふさいでいる。天使の泉と広原の滝の水は安心してそのまま飲めるそうだ(富良野森林管理センター、23-2186)が、エキノコックスを恐れている私達は最早生水を飲もうとせず通過・・・美味しそうだった・・・。沢音と野鳥の囀りが耳に心地よい。この辺りも熊が出るということなので各々鈴をつけ、鳴らしながら行った。ややガスっていたので二人だけで歩いていると、不気味な雰囲気だった。原始ヶ原にはモウセンゴケ、トキソウなど咲いていた。水芭蕉はもちろん終わっていたが、雪解けの頃はさぞきれいだったことだろう。ただし湿原なので足下は泥だらけになってしまう。

 山頂に着くまでの間出会ったのは下山者一人(当日ピストン)だけ。ガスがかかり、涼風の流れで時折のぞく風景と、咲いている花を楽しみながら登っていくという、静かな山だった。(イワブクロ、イワギキョウorチシマギキョウ?、アキノキリンソウ、エゾヒメクワガタ、etc)

 山頂に到着。コーヒーを沸かしていると十勝温泉方向から続々登山者がやってきた。シマリスともここで初めて対面し、このあともいろいろな山で遭遇することになる。山頂は小さな虫も沢山飛んでいてうるさかった。展望はガスでイマイチ。十勝方面へ下山するとその斜面はウサギギク、トカチフウロ、アキノキリンソウなどで一面きれいなお花畑だった。今回ゆっくり観察できなかったので名前の分からないものも多く、間違っているものがあるかもしれない。記述しないものが数多くあるがとにかく花の数は多かった。

 分岐から尾根道へ行くと再び二人だけの静かな歩きになった。三峰山(さんぽうさん)、上富良野岳、上ホロカメットク山を通ったもののガスで展望がなく残念。その上小雨まで降ってきた。

 上ホロ避難小屋は上ホロカメットク山頂から20分ほど下った所にあった。ホッとして中に入ると私達二人を含め、宿泊者は4名。もちろん、充分すぎる広さ。水場へは夫が行ったが、雪渓が少なくきれいではないとのことだった。

【二日目:7日】

 寝過ごして出発が予定より1時間おくれた。天気は良好。気分良く十勝岳へと進む。山頂直下は痩せ尾根になっているので強風の時は怖そうだ。山頂からの展望はさすが百名山。遠望は靄っていたが、トムラウシ山の姿がかすかに望める。しかし火山とはいえあまりに殺風景な山だ。美瑛岳に向け下山すると草木の生えない地の果てといった印象だ。その上自衛隊の演習だろうか、発砲の音が時々轟いてくる。標識は多く、確認しながら進んでいくが、歩きにくいガレた砂礫地を下っていく時、ガスが濃いと迷いやすいかも知れない。荒天の時は要注意。

 美瑛岳に近づくと東斜面に再び今までのようなお花畑があらわれ、きれいだった。バッタもいっぱい飛んでいた。

 切り立った西斜面前方に美瑛岳山頂を望み、ぐるっと回り込む。ここで初めて反対側からやってきた女性5人?パーティが見えた。分岐に荷物を置き、山頂をピストン。ここもガスで遠望はきかなかったが、ここから歩いてきたルートを眺めると感慨深い。流れるガスの中にこれから向かう美瑛富士が見えかくれしている。富士と名が付くだけあって、やはり姿がいい。石が多く、歩きにくい美瑛岳を下りながら登りたい誘惑にかられる。

 予定より時間があったので分岐に荷物を置き、私だけピストンした。咲いているコマクサ一株とイワウメ一株をここで初めて発見。思わず、待っていてくれてありがとう、と思ってしまった。来た甲斐があった。

 分岐に戻り、美瑛富士を捲くと、ここも見事なお花畑だった。ツガザクラ、アオノツガザクラまでお目見え。登山道はしっかりしているが、足下の木がひっかかり、この時アザがいくつかできてしまった。

 美瑛富士避難小屋への分岐を通過し、石垣山への登りにかかる。高度を稼ぐ小気味のいい登りで、この時はこの調子で今日のコースをこなしてしまうだろうと思っていた。石垣山山頂は捲いていたが、休憩したところから登りルートがあったので、ここも荷物を置いて私だけ行ってみた。5分ほどで山頂。広い山頂に岩山があったので登ってみた。バカほど高いところが好きというが、この高いところに立った時は気持ちよかった。ガスでオプタテシケ山方面は見えなかったが、歩いて来た方向がかすかに見えた。直下の美瑛富士避難小屋には既にいくつかテントが立っていた。

 再び歩き出し、緩やかな登りを行く。そろそろベベツ岳かなと注意して行くが標識は気付かなかった。少し外れたところにあるのだろうか。オプタテシケ山へはベベツ岳を一度一気に下る。この頃になるとガスが濃くなり、昼過ぎとは思えないくらい薄暗くなってきた。視界がなくなると疲労感が倍増する感じだ。思わず熊鈴を意識的に鳴らしながら歩く。山頂は見えず、切れ落ちた左側の崖を注意しながらまだかまだかと登っていくオプタテシケ山は遠く感じられた。心和ませてくれたのはゴゼンタチバナや咲き終わりかけているコマクサだった。ゴゼンタチバナは本州より小振りに感じた。

 やっと着いたオプタテシケ山頂。残念ながらここもガスで展望は遮られていたが、実に歩き甲斐のある山だった。夫共々充実感?を味わった山だった。

 ここまで来れば今夜の宿双子池まであと一息と思ったのは甘かった。双子池には先着(前夜上ホロ小屋で一緒だった単独行氏)のテントが一つ見えるのに急傾斜(標高差約600m)の下りは重い荷物を背負っている私達にはなかなか辿り着かなかった。しかし斜面いっぱいのお花畑は素晴らしく、ウサギギク、ウコンウツギ、エゾコザクラ、エゾツガザクラ、アオノツガザクラ、チングルマ、コイワカガミなど、種類がいっぱいで嬉しくなるほど私達の目を楽しませてくれた。その上、沢水も豊富だった。テン場は結局私達二組だけだった。

【三日目:8日】

 夜半から雨だった。熊の出そうな雰囲気の中、予定を遅らせて出発。この日は私達が先行。コースは沼地の上に雨で、背丈以上の笹のブッシュで最悪。せめてルートを見失わずに歩けたのが救いだ。先頭で、熊と鉢合わせをしないかと冷や冷やしながら進んでいく夫はその上、蜂にもまとわりつかれ、かなり神経を使っていたと思う。滑りやすい足下に注意しながら笹をかき分けていくと、そんな中にもイチヤクソウのような花がいくつか咲いていた。高度を160m程稼いだ所でようやくひと休み出来る場所に出た。その辺りから後続の男性と前後しながら進んでいくことになった。笹薮をぬけても枝払いされていない樹林帯が続くので、晴れていても朝露のある時間帯は合羽を着た方が良さそうだ。こんな天気にも関わらず、早くも反対側から単独男性一人と若い女性4、5人のパーティに出会った。

 コスマヌプリを過ぎた辺り(下り)だったろうか、鎖場がある。危険な場所というほどではないが、足下が滑りやすい場所なので要注意。視界が悪かったためツリガネ山の位置をはっきり確認できなかったのだが、この辺りで夫の疲労がピークに達してしまった。ペースが落ち、足下がふらついてきた。休みながら行ったが狭い登山道の途中だったため、広い場所に出るまでゆっくり進んで行った。丁度岩陰で休める場所に出て休憩。そこでビバークする事にした。水場は無かったが水は充分持っていたので心配はなかった。

 テントを張り、中に入った途端ザーッと一雨あり、タイミング良かったとホッとしたが、その後カラリと雨があがった。晴れ間が見えると現金なもので夫は元気を回復。合羽や濡れたものを干したり、山座同定をしたり、写真を写したり、こまめに動き出した。こんな所でダウンしてしまったらどうしようと思っていただけに、安心すると同時に、その元気を明日のために温存しておいて!と注文する私だった。

 改めて晴れた中で位置確認すると、ビバークしている場所はツリガネ山を下り、次の1507mに登る途中だった。そこからはガスの切れ目にこれから行くトムラウシ山方面や、昨日歩いたオプタテシケ山方面が見えた。何とも眺めるに都合の良い場所にビバークしたものだと二人で笑った。

【四日目:9日】

 予報によると天気は期待通り良くなる兆しだった。夜明けと共に出発し、一日の行程は夫の体調によって決めようと流動的に考えていたが、昨日ゆっくりしたお陰で熟睡できたため、共に快調。しかし心配だったので夫の荷物を極力軽くした。

 天気は明け方こそガスっていたが、予想以上の快晴となった。北海道ならではの清々しい空気の中、二人の歩きは順調。ビバーク地からの登りは先ず笹のブッシュ、熊避けの鈴を鳴らしながら行く。でも昨日ほどひどくはなかった。

 三川台(さんせんだい)までの登りはウサギギク、ダイセツトリカブト、イワギキョウorチシマギキョウ、エゾリンドウ、ウメバチソウなど色とりどりのお花でとてもきれいだった。歩いてきた道のりを振り返りながら、昨日のビバーク地を「なかなかいい場所だった」と互いに言いつつ眺めた。歩いている途中にもビバーク出来そうな場所はいくつかあったが、一番良かったように思う。

 三川台の広々とした中でひと休みし、今度は北上から東方面へ向きを変え、左に黄金ヶ原、右に沼や雪渓の残った裾野を眺めながら進んでいった。黄金ヶ原一面にひろがったイワウチワの葉は黄色に染まり、ウラシマツツジの葉は一部真っ赤に変わっていた。早くも秋の気配を漂わせている。段々とガスが晴れ、雄大な北海道の山並みが一望出来るにつれ、二人して感嘆の声が出る。「これだよ、これが見たかったんだよ〜」という夫、「素晴らしいね〜」と私。休憩するとき、その風景を楽しみつつ、空気の冷たさを体感しながら温かいコーンスープを飲む、これも至福の時。

 太陽の光が広がると、特徴ある山容のトムラウシ山が目の前に現れてきた。やはり視界が開けるというのは気持ちがいい。アッという間にきれいな沼に到着。南沼だ。テン場にしては狭いと思っていたら、テン場は一段上の場所だった。 そのまま山頂を目指す。遠い山だと思っていたトムラウシに今登っているという実感を楽しみながら何度も背後を振り返った。カルスト台地のように緑の中に大きな石が散らばって、快晴の中輝いて見えた。

 山頂には先客一人しかいなかったので湯を沸かし、コーヒーをいれて飲みながら、今回初めて雲一つない山頂展望をゆっくり楽しんだ。最終目標の旭岳方面まできれいに見える。昨日予定通りここまで来ていたら、昨日も今朝もこの展望は得られなかっただろう。ビバークしたゆえと、夫に感謝しなければならない。ここでも人慣れしたシマリスが動き回っていた。人でいっぱいになった山頂を後にして下山。その先の北沼も美しく、その沼を目指して下りていたら登山道が枝分かれしていて夫とコースが離れてしまった。慌てて登り返して後を追う。夫は私が遅いので岩に足を取られて怪我でもしたのかと心配していたようだった。岩塊の下りはペンキで印がついているが、ここも天気が悪いときは迷いやすいだろう。離れた位置から振り返ると山頂に向けていくつか踏み跡がついていた。さすがに人気の山だ。

左【旭岳、化雲岳より】

 緩やかなアップダウンの先に目指す化雲岳(かうんだけ)があり、後ろにはトムラウシ山がいつまでも見えた。すっかり気をよくした夫は昨日のダウンが嘘のように元気になっている。日本庭園の花はほぼ終わっていたがその雰囲気はよかった。と思うと岩塊が続いており、雨で濡れていたら歩くのに神経を遣いそうだ。悪天の時はここも迷いやすいかもしれない。しかし沼や湿原、木道とあり、いかに多くの人に歩かれているかが分かる。ヒサゴ沼避難小屋を右に見ながら木道を行くのはどうも北海道らしくないと感じるが、大勢の人が入ってくれば踏み荒らされない措置はどうしても必要になるのだろう。ヒサゴ沼の青さと空の青さが美しく、小屋の周りには色とりどりのテントが張られていたが、そのまま進むことにした。

 ひと頑張りして化雲岳に登ると、そこはトムラウシ山と、旭岳から黒岳方面が見える絶景の場所だった。両百名山を眺める展望台といったところだろうか。むしろここを百名山にしたいくらいだ。化雲岳の特徴ある大岩は右が崖になっており、足がすくみそうで登ることは出来なかった。広々とした化雲平にもまだ少しお花が残っており、トムラウシと共に眺めながら五色岳へ向かった。頭まで隠れるハイマツ帯を通るが、足下は登山道がはっきりしており、朝露や雨で濡れていなければ苦労する場所ではない。五色岳から忠別岳避難小屋は近い。私達は標識のある分岐まで行ってから小屋へ向かったが、途中、近道があるようだった。

 忠別岳避難小屋のテン場にも既に幾張りか張られていた。小屋も混んでいるかと思ったら意外にも一人しかいなかった。今夜は小屋泊りにすることにした。後から来たパーティもテントを張ったため、最終的にはここの小屋も私達二人を含め4名だけだった。雪渓もあり、沢には水がとうとうと流れ、水場は豊富だった。周りにはメアカンキンバイ(たぶん)とエゾコザクラが同時に満開で、他にはヨツバシオガマ、エゾノツガザクラ、アオノツガザクラ、シモツケ?、チングルマ、チシマ?ワレモコウ、など。

【五日目:10日】

 なるべく早く出発するためこの日も3時頃起床。小屋だとまだ寝ている人がいるので気を遣うが、無言でいつも通り準備を進める。この日は朝からガス一つかからないすっきりしたお天気だった。雪渓を渡り、周りのお花の写真を撮りながら分岐まであがり、忠別岳へと向かった。早朝で二人だけのためやはり熊鈴を鳴らしながら進んでいく。ナキウサギもこれでは出てこないだろうなと思いつつ、今まででも周囲を見回しながら歩いているのだが、やはり見られなかった。鳴き声も聞いたことがないので声がしても果たしてナキウサギなのかどうか分からない。先を歩いている夫は見たようだがすぐに低木の塊の中に入ってしまったそうだ。鼠のように見えたというが、見られなくて残念。終わりかかってはいたが、コマクサがまだ沢山咲いていた。イワブクロも多かった。

 誰もいない忠別岳山頂は展望が良かった。しかし下る頃になって、旭岳やトムラウシの山頂付近にガスがかかってきた。空気はひんやりと冷たい。下りで熊の糞らしきものがあった。本に出ていたのと似ている。思わず周りを見回し、熊鈴を鳴らしながら行く。白雲岳方面から来る人達と出会うようになり、挨拶してすれ違うが、短パンの人が多かった。この辺りの花は少なく、ポツポツ咲いていたのはウスユキトウヒレンだろうか?忠別沼ではワタスゲ、エゾキスゲが揺れていた。

 高根ヶ原のあたりは右側が一部崖になっているが、下方に沼が沢山見える。その大雪高原温泉にいたる三笠新道といわれる登山道は熊出没のため通行止めと書かれ、ロープが張られてあった。強風でそちら側に転がり落ちたら大変だ!

 ぐんぐんと白雲岳が近づき、高台に建っている白雲岳避難小屋が目に入るとほっとする。そして、右に見える緑岳のきれいな山並みが気になってくる。小屋の周りもお花畑できれいだった。小屋の側に咲いていたトウヤクリンドウと思っていたのはここではクモイリンドウと呼ばれているらしい。ちょうど満開で見頃だった。

 小屋にはまだだれも到着していなかったが翌日も早立ちの予定だったし、小屋が混んだ場合を考慮して、この日はテント泊にすることにした(しかしこれが失敗だった、小屋泊にすれば良かった。小屋一人600円、テン場一人200円)。管理人がいなかったが、とりあえずテントを設営。休憩してから荷を軽くして、周囲の山へ行こうとしたら管理人の若い男性がやってきた。キタキツネが出るので荷物はしっかり中に入れてとか、水場の注意とか丁寧な説明をしてもらい、少し話してから白雲岳、赤岳、小泉岳、緑岳と回った。緑岳へ行く途中ガスが出て、風も冷たくなったが、白雲岳、赤岳からの展望は良かった。

 ここまで来れば今回の縦走は成功と聞いていたし、明日は下山だと気持ちが楽になっていたが、これはとんでもないことだった。その日の夜から雨と強風・・・

【六日目:11日】

 夜からの雨と強風で、夜中に何回か目を覚ました。予報によると午後にはあがるというので、とりあえず早朝出発は取りやめ、明るくなるまでシュラフにくるまっていた。テン場には7、8のテントがあったと思うが、その内の一つ、高知大のパーティはこの荒天の中、出発したようだった。いくつかのテントは小屋の中に移動し、そのまま残ったのは私達と単独男性の二つだった。他にこの吹き荒れた風と雨の中、進んだ人がいたか分からない。小屋泊だった人の中には、銀泉台に下山した人もいたようだし、午後には忠別方面から歩いてきて銀泉台に下った人もいたようだった。が、ほとんどの人は予報を期待して小屋の中で待機していたようだった。

 私達は昼頃までに出発できなければ、停滞と決めた。結局その日は回復せずそのまま停滞となった。予報では翌日は北海道全土を高気圧が被うということだった。

【七日目:12日】

 夜中も強風と雨がおさまらず、テントの音で一睡も出来なかった。顔がむくんでいるのが自分でも分かる。雨は止んでいたので出発の準備を進めるが、風は相変わらず強い。コースは予定通りならば旭岳を回って黒岳だが、状況によってはそのまま黒岳、あるいは旭岳温泉の方へ下りようかと考えていた。しかし、ほとんど木のない稜線を、この強風のまま進めるかが心配だった。

 準備を終えて、4時半出発。他にだれも歩いていなかった。北海岳までは問題なく歩けた。山頂の手前でひと休みし、北海岳山頂に立ったとたん、轟音とともに吹き飛ばされそうで、思わず山頂標識にしがみついた。ザックの重さが無かったら、飛ばされてしまいそうだった。夫は体を斜めにして旭岳方面へ、面白そうに歩いて行ってしまう。私も耐風姿勢をとりながらついていくが、何度も立ち止まったり四つん這いになったりするので遅々としてなかなか進まない。

 荒井岳の登りが危険に思えたので、手前の一段下がったハイマツの茂みで風がおさまるのを待つことにした。じっとしていると寒くて、長袖シャツにフリースと合羽も着ているにも関わらず更にもう一枚長袖シャツを出して着た。それでも震え、軍手をはめている手もかじかむので銀マットを膝に巻いた。レーションを食べながら20-30分くらいそこに居ただろうか。ばたばたという音がしたので上を覗いてみると、歩いている人の合羽が風にあおられている音だった。誰もいなかった山に2パーティが歩いているのを見て、いくらか風もおさまり、歩けそうだと判断、進むことにした。

 間宮岳分岐から旭岳へ。この分岐で荷物をおき、空身で旭岳ピストンのつもりだったが、強風で飛ばされそうなのと、コースを変更する可能性もあるためそのまま背負っていった。途中の裏旭キャンプ場はまだ雪渓が残っており、水は豊富でテン場も良さそうだった。旭岳への登りは砂礫で歩きにくい上に風で思うように進めなかった。山頂に近づくと下りてくる人が急に増えた。山頂は大勢人がいて、旭岳温泉方向から更にツアーらしき団体が次から次へとやってきた。ここで予定通り黒岳へ回ることにし、早々に同じ道をもどった。その頃になると一気に登山者が増え、賑やかになった。風も徐々に静かになり、歩きやすくなってきた。

 天気も青空が広がってきた。周囲の山を見渡せるようになり、前方に北鎮岳が形の良い姿を見せていた。歩いてきた北海岳からの稜線を見ると、そちらも風がおさまったようで数人が普通に歩いていた。あの風は何だったんだ〜!疲れは出ていたが、最早北鎮岳、黒岳は目と鼻の先だ。これで今日下山できる、どこか宿をとって泊まろうと決めたら元気も出ようというもの。ペースはあがらなかったがゆっくり北鎮岳を目指し、山頂から展望を楽しんだ。これから行く黒岳や手前の石室も見える。分岐に戻ってひと休みしたあと、凌雲岳やお鉢平を眺めながら先へと進んだ。また別の機会に愛山渓のルートの方も歩いてみたい。

左【黒岳で、万歳】

 黒岳石室では情報通りビールもジュースも売られていた。でも気温は涼しかったし、たとえ暑くても今飲んだらダウンしそうで飲まなかっただろう。1缶買って最後の黒岳山頂で乾杯もよかったが、やはり下山後ゆっくり乾杯としよう。黒岳山頂で万歳をして夫と握手。山頂にいた奥さんと話していた時、「なぜそんな辛いことをするんですか?」とまじめな顔で聞かれた。う〜ん、辛いことばかりではないですけどね・・・という言葉は言わず、ただ笑顔を返す(それなりの感動があるんですよね・・・)。この辺りでは小さい子を連れ、大きいザックを背負った若い夫婦連れが数組いた。将来のアルピニスト?がんばれ!若いお父さん、お母さんもがんばれ!そのあと黒岳七合目まで下っていったが、意外と距離があり、若い家族を陰ながら思わず応援してしまった次第。

 リフト、ロープウェーを乗り継いで層雲峡までおりた。当初は歩く予定だったが、この日は宿をとりたかったし、ゆっくりもしたかった。近くの旅行案内所で温泉付きのきれいなペンション(Milky House 1人8500円)を紹介してもらい、温泉と食事が済むとドタンキューだった。

 翌日は上富良野駅の駐車場に車回収と次の山への移動日にあてた。予定ではニセイカウシュッペ山や夕張山地の芦別岳、夕張岳を登りたかったのだが、ビバークと停滞、下山後の温泉&移動で行動日は残り1日となったため、急遽8/14:羊蹄山に変更した。