上越・荒沢山(あらさわやま1302.7m)

 低山なれど侮れない山
 厳しくそして360度展望の素晴らしい山
 のんびり雪山歩きと雪洞を楽しんだ!

 H16年3月20-21日(土日)
  天気;両日晴れ
  Member.4人(斉木夫妻、石原夫婦)

右写真【荒沢山山頂で】


 【コ ー ス 】(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(3/20)
登山口近くに駐車して出発8:35〜林道分岐8:40〜早稲田大学の山荘9:00〜標高1000m弱11:30(昼食後、雪洞掘り3時間くらい)雪洞内泊
(登り所要時間約3時間・・休憩含む)

二日目(3/21)
雪洞7:46〜荒沢山山頂9:10-42〜雪洞10:32-11:45〜早稲田大学の山荘12:32-47〜林道分岐12:57〜車13:00
(登り1時間25分、下り50分+1時間15分:所要時間約5時間14分・・休憩含む)


一日目(3/20)
 2年前に歩いたタカマタギでも一緒だった斉木夫妻と、対面の荒沢山へ行くことになった。タカマタギ山頂からの雄大な谷川の展望で次に登りたい山として、この時既に荒沢山はリストアップされていたのだった。1300m程の山でありながら目的の雪洞掘りと想像以上のスリル、期待以上の感動を全て味わえた、深く記憶に残る山行となった。

 前夜発で登山口に着いたのは夜中の2時過ぎ。関越に入るまでの環状八号線の工事渋滞で予定よりかなり遅い到着となった。車を置けそうな場所にテントを張って2時半に就寝。しかし貨物の高架下ですさまじい轟音に一同びっくりするやらがっかりするやら思わず笑ってしまった。それでももう動くわけには行かず子守歌代わりに寝る事とするzzzz・・・(夜中でも数回通過するのでこれから行く人は場所選びを慎重にして下さいね^-^;)

左【路上のテント】

 荒沢山は充分日帰りの出来る山ではあるが、今回は雪山をゆっくり歩き、夫の希望で雪洞堀を楽しむのが目的だった。だから慌てて起きることもなく7時に起きて、食事と支度を済ませ出発したのは8時半過ぎ。道路でのテントは登山キャリアの豊富な斉木さんが一番慣れている?はずなのに何故か眠れなかったという。そんな神経を持っていたのだとはじめの内は茶化していたが、骨折後のリハビリ中でもあり、とにかくゆっくり行こうと言いつつ、内心は皆ホッとしていたりして。実は彼にはこれくらいのハンデがないと、私達には付いていくのが大変なのだ!

左【出発】

 斉木奥さんも久しぶりの山歩き、そして私達も一泊登山は久しぶりだった。日帰り登山さえ数少なくなった昨今、シュラフと食料などを担いでの登山は一泊と言えども実のところ憂鬱ではあった。あ〜、食事と布団付きの小屋泊まりがしたい!と心から思うのである。しかし最近は私のお株をとって山となると夫が仕切る。聞く耳持たぬ夫の用意周到な段取りにただただおとなしく黙ってついていく近頃は夫唱婦随の愚妻・・・。しかし出発してしまえばペースメーカーと言うよりはゆっくりマイペースの夫の後を、荷物が重いと嘆きつつ黙々と妻は歩き出す。毎度の夫婦珍山行に、若いながら登山経験豊富な斉木夫妻が加わって今回は楽しみ、楽しみ!

左【お猿さん、わかるかな?】

 右手に荒沢山とその尾根を眺めながら裾野の魚野川右岸を行く。二年前より積雪は少ないようだと異口同音に話しつつ。下から見ると荒沢山から足拍子岳へも足を伸ばしてみたいと思えてしまう。それが簡単でないことは、山頂へ近づくほどに分かってくるのであるが。その足拍子岳と荒沢山の水を集めた南カドナミ沢はお猿さんのパラダイスだった。真っ白な雪の上に点々と、とってもきれいな毛並みの親子が何匹もいて可愛らしかった。しばらく立ち止まって眺めていた。

左【右上に山荘が見えてくる】

 林道はラッセルすることもなく、締まって歩きやすかった。まもなく早稲田大学の山荘という建物があり、そこからカドナミ尾根へ行ける。荒沢尾根にしようか迷ったが、リーダー(斉木さん)判断でひとまずルートが確認出来たカドナミ尾根へ行くことになった。雪洞という目的があったのでテントをやめてツエルトにしたため、両方の尾根を見比べて、その少ない積雪状況に雪洞堀の不安を覚えつつ。

左【ゆっくり登っていく】

 かすかに残されていた踏み跡はいつのものか?初めから急で所々雪が滑り落ち、土や笹が表れて登りにくい。それも数カ所で無くなり、やがて雪を踏みしめていくが急登は続いている。この日は最後までアイゼン無しで行った。この時期枯れ木のような雑木林は見通しがよい。関越道が見え騒音がいつまでも鳴り響いてきて、交通が便利な反面、魅力半減の思いもする。しかし高度がどんどん上がるたびに二年前に歩いた棒立山など、その周りに広がる山並みを振り返る楽しさが増す。登っている目線にはマンサクの花が気持ちを和ませてくれる。急ぐ日程ではないので何回も休憩しながらのんびりと登っていった。と言いつつ、本音は展望を口実に休みたい!(^o^)のであった。登っているときは苦しかった筈なのに、こうして書いていると、なぜか苦しいことより楽しいことばかり思い出されるのが不思議だ。みんなの笑顔や汗の噴き出した顔を思い出すと、辛かったことなど無かったかのように思える。

左【テン場に良さそう、山頂は目前?】

 トップを交代しながらゆっくり登っていくと標高1000m近い所で平らな広い場所があった。目の前は荒沢山のピークか?あと30分もあれば登れそうだと思われた(が、実際はそうではなかった)。展望も良く、タカマタギの白い姿が木々に遮られることなく眺められる場所だった。風があれば大変だがテン場には丁度良さそうだ。そこで雪洞が掘れるか様子を見、斉木さんの見立てた場所に掘ることになった。夫と斉木奥さんは初めてで、私とて二回目だ。登っている間は曇っていたが、雪洞を作っていると雪が降ってきていた。ムードは益々盛り上がり、交代しながら皆で面白がって掘り進んだ。

左【雪洞を掘る1】

 持っていった用具はショベル二つ。そして極めつけは二つのスノーソー!驚く無かれ、このスノーソーは100円ショップで購入したもの。山道具屋さんでは少なくとも2500円以上はする。高いものはさらに倍近い価格だ。めったに使わないものだからと私の知らぬ間に夫が買い求め、雪のブロック切り出し用にわざわざ目を粗く加工していたのだった。これがすごく役立った。奥に掘り進むほどに雪は固くなり、ショベルだけでは歯が立たなかった。それが面白いほど大きなブロック切り出しができる。上手くいってみんなの喝采を浴び、夫は大満足であった。雪洞堀りの功労賞である。

左【雪洞を掘る2】

   斉木奥さんの頑張りも驚くばかり。おかげでかなり立派な仕上がりになった。突き出た木の小枝はインテリアのようだと斉木奥さんが笑う。積雪量の限界で屋根は高く出来なかったが、ろうそく立ての場所も作り、出口から斜面を滑り落ちないよう、掘り出した雪のブロックを積み上げて要塞のような衝立まで作った。雪洞でなくイグルーという案もあったが、これはまだ経験がない。ブロックを積み上げながら、これもまた面白そうだと思ったが難しいのだろう。途中昼食をとりながらも斉木さんの予測通り、3時間近くかかって四人の宿は完成。バンザーイ!

左【雪洞を掘る3】

 いざというときの為に雪洞体験をしたいという夫の希望だったのだが、思ったより雪が少なそうで、念のためツエルトでなくテントにしようかと登る前に迷ったのだった。しかしテントを持ち上げていたらおそらく雪洞は作らなかったかもしれない。作らざるを得ない状況に追い込んで、そんな中一生懸命作る大人四人はそれぞれにちょっぴり無邪気な子供心をもっていた。とても楽しかった。

 山頂まではたいしたこと無かろうと高を括っていた私達は15時頃、山頂へ行ってみようと話していた。しかし山頂方向にガスがかかってきたため取りやめ、翌朝に登ることにした。しかし翌日の予報は良くなかったのだった。

 早々に夕餉の用意。具だくさんの味噌煮込み鍋。体が温まった。乾杯の冷たいビールも美味しく戴いた。疲れていたので四人並んで18時半には就寝。足も伸ばせて快適だった。

二日目(3/21)
 夜中ちょこちょこ目が覚めたが比較的快眠。「良い天気だよ」という斉木さんの声で皆起きたのは5時半。予定より30分寝坊だ。良い天気と聞いて嬉しかった。外に出るとなるほど気持の良い空だった。

左【山頂へ】

 食後荷物をまとめ、ザックは4人で二つ。必要なものだけ持ち、残りは雪洞の中に残して山頂へと出発した。今回初めてアイゼンを着け、トップは斉木奥さん。雪質はまだ締まっていたので歩きやすく大きな雪庇では無かったが、慎重に歩を進めていった。ウサギの足跡がしっかり続いており、私達はなおもその内側を歩いていった。

左【急斜面を登り、下りもここを通る・・】  

 徐々に高度を上げていったが、30分で山頂に着くほど甘くはなかった。滑ったらはるか下まで滑落しそうな場所はいくらでもあったし、急斜面やヤセ尾根、更には両脇が切り立った岩場など、同ルートを下るのは恐怖と思える場所ばかりの連続であった。アイゼンとピッケルなしではとても登れない。しかし振り返ればタカマタギから平標山に続く白銀の山並みが広がって、とっても素晴らしい。

左【最後のヤセ尾根】

 やっと山頂かと思ったら足拍子岳から荒沢山へ続く尾根だった。しかしその場に立った時の感動は山頂と変わらない。目の前に今まで見えなかった東側の展望が一気に目に飛び込んできたのだから。しばらく呆然と見とれていた。足拍子岳への尾根は登ってくる途中から見ているとちょっと足を伸ばしたく思えたが、そんな生やさしいルートでは無かった。それなりの技術を持っていないと難しそうだ。足拍子岳に背を向けて、そのまた高みへと足を乗せると更にその先に丸い小さな頂がある。そこへ行くには2〜3mほどだが、それこそ細いヤセ尾根を通らねばならない。気を引き締めて慎重に通過。

左【山頂からの展望:棒立山、タカマタギ方面】

 山頂には荒沢山と書かれた小さな標識があった。やっと着いた。それにしても見事な360度の大展望だ。二年前のタカマタギの時と同様、素晴らしい天気に恵まれ、ラッキー!巻機山も大源太も目の前にある。この山に来て良かったと心底思い、眺望を満喫した。下山を考えると長居もしていられないのだが、下りるのがもったいなかった。この日タカマタギに登っている仲間に携帯をかけてみたが、先方は繋がらなかった。昨夜もかけて見たが駄目だったので、電源を切っているか圏外だったのかもしれない。間もなく話し声にびっくりして見ると、同じコースから4人の男性がやってきた。互いに写真を撮り合い、私達は先に下山した。

左【難所を過ぎてゆっくり下る】

 下山を始めればすぐ西側の風景しか眺められなくなる。それでも時々立ち止まっては眺めを楽しんだ。下りでは7,8人の登山者にも遭遇し、足拍子岳方面から荒沢山に向かう人も途中から見えた。昨日の静かな山は一瞬賑やかな雰囲気だった。登るとき締まっていた雪面は大勢の登山者に踏まれ、気温が上がっていたこともあって、ザラメ状にザクザクしていた。下りは緊張するだろうと思った場所はいくつかあったが、思ったほど恐怖心はなかった。一箇所心配だったところでザイルを使って下りたが、当然安心感はある。

左【テン場に戻ってホッとひと息】

 緊張しながら時間をかけて登ったルートも下りは早い。雪洞を作った場所に戻ってホッと一安心。温かい飲み物を作って昼食を済ませ、話ながらのんびりしたあと下山の用意をした。一生懸命作った雪洞と離れがたく皆それぞれに眺めて名残を惜しんだ。山頂から下りてくる人はだれもいなかった。荒沢尾根の方から下っていったのかも知れないと思いながら私達は同ルートを下山。気温が上がって雪がグズグズになり、何回もズボッとはまった。前日に比べかなり歩きにくくなっていたが、再びマンサクの花を愛でながら、休むことなく下りていった。

 早稲田大学の山荘まで来てアイゼンを外しながら一休み。昨日出会った猿たちには会えなかったが、小さな手形がいっぱい残されていた。林道も雪が腐って歩きにくいことこの上ない。除雪された車道に戻ってようやくスタスタと歩けるのだった。車の所に戻りやっと「お疲れ様でした」「ありがとうございました」とみんなで握手。

 温泉は湯沢ICに向かう途中にある、近くの「岩の湯」(025-787-2787)
 大人300円、子供140円。毎週水曜定休。7:00-21:00
 シャンプーリンス、ボディシャンプーあり。ドライヤーあり。
 (以前はシャンプー等なかったのでびっくり。蛇口が増え内装もきれいになっていた)